日曜の夜、寝ようと思ったら、サッカーU23のオリンピック前哨戦、トゥーロン国際のエジプト戦が始まった。
この前のオランダ戦に勝った試合を観ていたので、『まあ、エジプトなら勝てるだろう。寝なくては』と、観るつもりは無かったが、テレビを消す前に試合が始まった。
5分ほど見ていると、『ありゃ、エジプト強いぞ!』と、思わずテレビに釘付け。しかも、前半は「0-2」の絶体絶命で終了した。
とても、寝ているような場合では無い!
後半が始まった途端。宇佐見の2ゴールで、同点。
『何だ、本気を出せばできるじゃないか』と、安心したが、どうも雲行きが怪しい。結局、「2-3」で負けてしまった。時計を見たら3時だ。
『何のこっちゃ』 どっと疲れた。
負けて不愉快ではあったが、ある意味、面白かった。
エジプトもやっぱり中東だ。これが本戦なら煮えくりかえっているかも知れない。モロッコの審判とエジプト選手の、息の合った「妙技」には、思わず笑ってしまった。
日本のファールを取る審判のテクは、一見、エジプトのファールとバランスを取っているようで、ここ一番のポイントが違う。エジプトの選手の「転がり」テクも、さすが、駆け引きの本場。中東だ。
後半、日本が勢いづき始めた途端に、転がった選手は、そのまま起きてこない。ワールドカップクラスの審判なら、いい加減に起きろと指示するのだが、駆け寄って、担架を持ってこさせる。
ここで大きく流れが切れた。
中東の常識は「本気のウソ演技」だ。世界中に「駆け引き」というものはあるが、中東ほどウソを本気でやる文化は少ないだろう。見え見えのウソは、アランビアンナイトの大ボラ話のような文化であり、欧米式の騎士道精神からすれば、卑怯千万な文化だ。
中東で買い物をした人達が話す笑い話で、
ひどい吹っ掛けがしてあるから、こちらも1/10ぐらいで値切り始める。すると、店のオヤジは、カンカンになって怒り出し「話にならん、帰れ!」と、怒鳴る。
「それじゃあ」と、帰ろうとすると、間口に足が掛かったとたん、
「ちょっと待て、いくらなら買うんだ?」と声が掛かる。
しばらく押し問答をして、何度か間口まで行ったり来たりしながら、値段が決まる。
間口に足のかかる、声掛けの絶妙のタイミングが、面白いところだ。
日本でも関西などの値段交渉は買い物の楽しみだが、中東は遥かに芝居がかっていて、見え見えのウソを、互いに解った上で暮らしている。
「勝負事をすれば人がわかる」と言うように、スポーツの国際試合の面白さは、その国の文化が見えるところだ。
今回、予選最下位のエジプトは日本に勝てば、トーナメントの可能性が残っていた。それに対し、引き分けても可能性が残っていた日本は、オランダに勝って、楽勝ムードもあったのかも知れない。
しかし、エジプトの試合ぶりを見ていて、19年前のドーハを思い出した。日本はあと一勝でワールドカップ出場が決まる試合を、ロスタイムで失点して出場を逸した。
出場の可能性が全くないイラクが、予想外にも、死力を尽くして戦かった。今回のエジプト同様、試合中に、2人も3人も倒れたまま起き上がらない選手を、あきれて笑って観ていたが、最後の最後に失点した。
ドーハの悲劇と呼ぶのは日本の甘えであって、あれがサッカーであると気づいた日本は、その後、強くなった。
エジプト戦も、若いチームには良い教訓になったのではなかろうか。
外交音痴の日本が教訓とすべきは、サッカーだけではあるまい。