主人のくつろぎのスタイルは、
テレビのある部屋に布団を敷いてゴロ寝して、
「少年サンデー」を読みながら、
世界美術館紀行みたいな(よく知らない)番組のDVDを、
BGM代わりに流しっぱなしにして観る、というのが定番だ。
今夜も彼はそうやって機嫌良く過ごしていた。
DVDの、この回は、ボッティチェリとメディチ家の話らしかった。
私は絵のほうは全くわからないのだが、
『メディチ家の人びと』という評伝は私の愛読書のひとつなので、
ちょっと面白そうだなと思い、なんとなく一緒に観ることにした。
ボッティチェリはメディチ家のために絵を描いた画家のひとりで、
『東方三博士の礼拝』では、メディチ家の歴代支配者であった、
コジモ、ピエロ、ロレンツォの三名を画面に登場させていること、
が説明されたあと、有名な『春(ラ・プリマヴェーラ)』が映った。
この絵は、ごく最近になって、特殊な復元作業が施され、
見事な植物が描かれていたことが次々と明らかになったそうで、
ナレーターが、この絵の内容とともに、
植物の描かれ方について解説していた。
『絵の右側の青い肌をしたのが西風の神ゼフュロスです。
そして、彼が求愛している女性が、大地の精クロリスです。
クロリスはゼフュロスの愛を受け入れたことにより、
このあと、女神フローラに変身します』
クロリスがフローラになる、ということは、
彼女の足下に描かれている、なんとかいう名前の花によって、
暗示されているのだそうだ。
『この花は、処女を愛の神秘へと導く花、と言われていました』。
夫「処女を愛の神秘に導く花ぁ?どういう花や、それ!」
私「(^_^;)」
夫「昔の人いうんは、いろんなこと、考えたもんじゃのぅ」
確かに、私なんか道ばたの花を見ても、名前もぴんと来ないし、
ましてや、その花が処女に何かをする・・・・、
などという空想が広がっていくようなことは、まず、ない。
一体全体、何を根拠に、花のどこを見たら、
そういうことがわかるものなのだろうか(^_^;)。
が、それはともかく、主人の言葉遣いを聴いていると、私は、
主人に、なんだか「じーちゃん」が憑依しているような、
不思議な錯覚に囚われた。
『クロリスの口から零れ出た葉が、愛の勝利を示す花々となり、
後の彼女自身の姿である、隣のフローラのドレスを彩っています』
主人「くくくっ。葉が鼻から出なくて幸いだったと言うべきであろう」
そういえば、今更な疑問なのだけれども、
かねてから、主人は絵画鑑賞が趣味だと言っているのだが、
この男は、一体、絵画の何を鑑賞しているのだろうか。
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