転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



ORFでポゴレリチのウィーン公演が放送される!?
という話を書いたが、予想通り、予定は変更になった。
実は同じものが数日前にRTVEでも一旦、予定されていて、
しかしそれはキタエンコ指揮のチャイコフスキーの交響曲5番に
差し替えられて、結局放送されなかったので、
ORFでも、これは、やらないだろうとわかった。
案の定だった。

公演そのものはキャンセルも何らの変更もなく、
現地で予定通りに行われ、その演奏はこれまた大方の予想通り、
ポゴレリチ流の、全く別の曲にしか聞こえないモノであったようだ。
ウィーン放送交響楽団 + コルネリウス・マイスター
(たまにはオーストリアちっく パート3)

今回のラジオ放送の中止自体は、
別段、ポゴレリチの気まぐれのせいではない。
むしろ番組表に掲載されてしまったことのほうが、
なんらかの事故だったと私は思っている。
ポゴレリチは、80年代後半、二十代であった頃から、
自分のコンサートでの演奏がラジオやテレビで放送されることを
全く許可していないのだ。

『私は、実際の演奏会のライブ収録というものが大嫌いだ。
聞くに堪えないものだと思っている。
私自身は決してそういうことはしないし、
今後も、私の演奏会の収録を許可するつもりは全くない』
『マイクロフォンに向かってするのに適した演奏と、
千人単位の聴衆を相手にする演奏とが、同じものである筈がない。
その両者を同時にうまく満たすことなど、できるわけがない』
("Great Contemporary Pianists Speak for Themselves 2",
p.240, Elyse Mach, 1988)
と、ポゴレリチは今から二十年以上前に言っていて、
その言葉通り、彼の演奏会はこの時期からあと、
ラジオでもテレビでも放送されたことがないのだ。

思えば83年の来日公演がNHKによって放映されたのは、
彼がまだそうした発言をし始める前の、貴重な時期のことだった。
80年代初期には、独奏会にしても協奏曲にしても、ポゴレリチの演奏が、
FMラジオで放送されたことがヨーロッパでは結構あったが、
世界じゅう探してみても、テレビ番組で、ポゴレリチの演奏会を
最初から最後まで収録した公式映像は、多分ほとんど存在しないだろう。
私自身は、NHKの芸術劇場以外には、未だに一本も観たことがないし、
あるという話もこれまでのところ聞いたことがない。

既に十年以上、スタジオでの録音活動も全く行っていない彼は、
今やグールドとは真逆の、「生」でしか聴けない演奏家になりつつある。

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