転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



10時半から、ヤマハ広島センター7階スタジオで、
ザラフィアンツの公開レッスンがあったので、行った。
私は偶然、友人某氏からこういう催しがあることを教えて貰い、
早い時期に自分からファクスを送って申し込みをしてあったのだが、
どうもきょう聴講に来られていた方々は、大半が、
ピアニストやピアノの先生方のようだった。だから受付で、
「転妻よしこ先生ですねっ」
と呼ばれ、名簿をチェックされた。
そのまま返事だけして、参加費を払って通ったが、
すみません、先生じゃないどころか、実は近所の主婦です(爆)。

スクリャービンのエチュードとノクターンのレッスンがある、
ということは事前にチラシを見て知っていたのだが、
『公開レッスン&演奏』というタイトルの『演奏』のほうが、
予想以上の豪華版で、一時間を超える事実上のリサイタルだった。
曲目は、ザラフィアンツが現在取り組んでいるシューマンが中心で、
『子供のためのアルバム』から8曲、『幻想曲』、
それにショパンのマズルカが数曲あった。

ザラフィアンツの音楽は、とにかく懐が深い。
聴く人により、彼の演奏のどこが心に響くかは結構違うかもしれない。
それくらい、彼の音楽には多くのものが内包されていると思うのだ。
それと、彼は特定の○○弾きではなくて、
非常に幅広い時代と形式の音楽を、これまでに取り上げているのだが、
それだけにザラフィアンツの演奏からは、その作曲家の特徴とか、
その曲の時代背景や様式感などが、実に鮮やかに伝わって来る。
過去に私は彼の実演としては、リサイタルと、マスタークラスを聴き、
それ以外には接点はCDしか無かったのだが、
とてもアカデミックで、しかも繊細な感覚を持ったピアニストだと
今日も間近で演奏を聴きながらしみじみと思った。

リサイタル形式の『演奏』のあと、30分の公開レッスンがあり、
課題曲は予定通りスクリャービン2曲だった。
受講されるのもピアノの先生で、専門家の方だったので、
レッスンとは言え、模範授業という趣の、高度な実技内容だった。
ザラフィアンツはかなり日本語がうまく、
レッスンも直接に日本語で行い、
しかも音の柔らかさを言うのに『うどんのように』とか
巧まざる可笑しさがあって、良かった(爆)。

スクリャービンのノクターン作品9-2は、ザラフィアンツによれば、
スクリャービンらしくない作品で、それゆえに、
途中に見える、数少ないスクリャービンらしさのある箇所
(和音やバスの進行など)は意識的に際立たせて弾くのが良い、
とのことだった。
また、サロンのスタイルを忘れないように、という指摘もあった。

エチュード作品45-2のほうは、円熟したスクリャービンの様式で、
しかもショパンの影響が強く感じられる、ということだった。
エチュードなので技術的な安定感は必要だが、
音楽としては、次々と先を急ぐ展開になっており、
転びそうになるぎりぎりのところで走り続ける感じ、だそうだ。
『コンクールのためには、スクリャービンにはゴメンナサイだが
左手をまずきちんと弾かないといけない。
だが演奏会では、右手のほうを中心に考えて……』
というユーモラスで実際的な(笑)アドバイスもあった。

ザラフィアンツには次の機会には広島市内でもリサイタルをして頂きたい。
今回は福山公演だけだったようなので、近いうちに是非とも!と思った。
また30分という短いものでなく、公開レッスンやマスタークラスも、
もっとまとまった時間が取れれば、なお興味深いものになると思うので、
併せて検討して頂けたらと思った。
参加なさった方々も、先生方だけあってマナーが洗練されており、
不用意な拍手が出ないどころか、曲と曲の間も咳払いひとつ無い集中で、
本当に弾き手も聴き手も素晴らしいひとときだった。

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