転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



市川猿之助、任意聴取開始/これまでの経緯(日刊スポーツ [2023年5月25日8時20分])
『歌舞伎俳優市川猿之助(47)が18日に東京・目黒区の自宅で両親とともに倒れ、両親が亡くなったことについて24日、警視庁が都内の警察施設で猿之助から再び事情を聴いていることが捜査関係者への取材で分かった。この日から正式な任意聴取が始まったという。』

5月18日の昼前、家族のLINEで主人とやりとりしていたら、
突然に娘が登場し、
『市川猿之助と両親が家で意識不明のところを発見されたんと』
と言うので、まさに青天の霹靂、最初は私は、
『市川猿之助両親が』の間違いではないかと思った。
四代目段四郎がもう長い間病気で、老夫婦の介護生活だろうということは
私のような単なる歌舞伎ファンにも想像ができていたからだ。

しかし第一報は誤りではなく、3人全員が救急搬送とのことで、娘も
『詳細は不明と。ガス漏れとかかね(汗)』
と言い、私も、家族全員ならその線だろうと思い直し、
就寝中に自宅でなんらかのトラブルが起きて皆が意識不明になり、
楽屋入りの時間になっても猿之助と連絡がつかないから
マネジャーが家に行って発見したのだろう、
……等々と、想像していた。

その後にわかっていることは、段四郎と夫人が亡くなったことと、
一命を取り留めた猿之助の供述として報道されていることが、
今のところすべてだ、と言うべきだろう。
猿之助の供述自体も、厳密に正確に報道されているのかどうか、
私には判断のしようがないし、更にその他の周辺の事情についてはもう、
全く憶測の域を出るものではないと思う。

公演中だった明治座の『猿之助奮闘歌舞伎公演』は、代役で続行されており、
昼の部の市川團子、夜の部の中村隼人、ともに文字通りの大奮闘で、
相手役や共演の役者さんも含めて、既に高い評価を得ている。
六月歌舞伎座も配役変更と発表され、
中村壱太郎が猿之助の役を務めることになった。
ピンチはチャンスで、彼らにはこれを大きな飛躍の機会として
一段階も二段階も登り、新たなスターとなって貰いたいと心から願っている。

私は、前から書いている通り、基本的に舞台のことしか眼中にない。
それを演っている人の素行とか品行とか、人格などは
自分にとって好ましければ嬉しいが、そうでなくても構わない。
観客として座っているときには、私は、その部分は一切観ていない。
私の思う、良い舞台かどうか、がすべてだ。
歌舞伎ファンは役者に甘い、
という非難があったが、客としての私は甘くないぞ(^_^;。
仮に、いかに人間として真面目で品行方正で真摯であったとしても、
オモロない、と私が思う役者さんの舞台には、お金は出さない。
実際、幾度か観て、私の中で「アカンな」という評価が定着し、
観る気が失せた役者さんもいる。いちいち書かないけど(^_^;。
(私が観ない、というだけだ。好きな人は観たら良いのだ、勿論)

四代目猿之助は、私にとって本当に大切な役者だった。
芝居も踊りも卓越したものがあり、
エンターテイナーとしての陽の魅力が大きく、
頭の回転も速く声も良く、何より、人を惹きつける舞台の華があった。
今、私が最も強く思っているのは「彼を失いたくない」ということだ。
私は、また彼の歌舞伎が観たい。それも出来るだけ早くに!
彼だけが生き残ったのは、まだ為さねばならないことがあると、
舞台の神さまがお思いになったからではないのか。

社会的には、それはなかなか許されないことかもしれないし、
御本人もまた、二度と舞台に戻りたくない、のかもしれない。
だからこれは、歌舞伎を観る者としての私のエゴだと承知しているのだが、
観客としての私は、こんなことで四代目に終わって貰いたくないのだ。
事情聴取に応じ、事実を供述し、非のあるところは非として認め、
裁判になるのであれば判決に従って必要な年月を過ごしたのち、
心身を養い、時間がかかっても、市川猿之助には復活して頂きたいのだ。
まさに今月、明治座で演じていたのは「不死鳥の男」だった。
私は彼の蘇りの日を、待っていたいと、心から強く思っている。


追記(6月10日):文芸春秋2023年7月号において、
歌舞伎研究・劇評家の渡辺 保氏が、
『嫌疑が晴れたあかつきには猿之助に早く復帰してもらいたい。私自身は「猿之助を励ます会」の発起人になってもいい、それくらいの思いを持っています。』
と書かれている。
私も観客のひとりとして、強い共感を覚える。
市川猿之助は、歌舞伎役者として、それほどまでに重要な存在なのだ。
『早く』は困難かと思うが、『必ず』復帰して頂きたい。
そうでなければ、歌舞伎の失うものが、あまりにも、大き過ぎる。

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