転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



10月20日は、日本では皇后陛下の御誕生日なのだが、
実はイーヴォ・ポゴレリチの誕生日でもあって、
彼がそれを知ったら、光栄な巡り合わせだと申し上げるのではないか
と私は勝手に想像しているのだが(^_^;、
ともあれ、新聞やテレビで皇后陛下の御言葉が報道される日が、
我らがマエストロにとっての記念日でもあるのだ。

数えてみると、ポゴレリチは今年で満58歳だ。
ショパンコンクールの風雲児、と呼ばれた彼が、もはや還暦も間近。
80年代には、ポゴレリチは「個性的だが巧いピアニスト」という評価が
ほぼ固まっていたので、今後もなんとなく存在価値を認められつつ、
歳をとるにつれて、ある種の別格巨匠みたいになるのだろう、
と私は考えていたのだが、良い意味でその予想は裏切られたと思う。
21世紀になってから彼は一旦、世間からもファンからもほぼ全否定され、
そこから再出発をすることになったのだから。

私はポゴレリチのお蔭で、ひとりの演奏家を聴き続ける妙味を
体験を通して知ることができたと思っている。
ポゴレリチほど、最初から「個性的」という評価がはっきりしていた演奏家でも、
数十年をかけて聴き続けていると、その音楽家人生には紆余曲折も変遷もあり、
演奏も解釈も、決して固定的なものでないことがわかったからだ。
私はそれを、後追いでなくリアルタイムで、
しかも幾度も生の演奏を通して、感じることができた。
これは聴き手として大変幸福なことであったと思っている。

ポゴレリチがこれからどこへ行くのか、まだわからない。
この年末にも来日公演が予定されており、
私は東京での協奏曲と愛知でのリサイタルのチケットを買っているので、
そこに行けば、何かが改めて確認できるかもしれないし、
またもしかしたら、これまで知らなかった彼の音楽を
思いがけず聴くことになるのかもしれない。
二十数年以上を聴き手として共有してきたうえに、
更に現在進行形でポゴレリチを聴けるという幸せがあろうとは
1982年に高校生だったときの私には、全く思いも寄らないことだった。
年齢を重ねるというのは、なんと素晴らしいことなのだろう!

I hope today is the beginning of another great year for you!
Happy Birthday, Maestro Pogorelich!!

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