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転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



尾上菊五郎が体調不良で歌舞伎座休演 今後は未定(日刊スポーツ)
『歌舞伎俳優で人間国宝の尾上菊五郎(73)が3日、体調不良のため東京・歌舞伎座で行われている舞台を休演することになった。同日、歌舞伎座が発表した。』『歌舞伎座では3日初日(27日千秋楽)で、「中村芝雀改め五代目中村雀右衛門襲名披露 三月大歌舞伎」が行われる予定で、尾上菊五郎は昼の部「鎌倉三代記」と、夜の部の「口上」での出演を予定していたが、体調不良で休演するという。鎌倉三代記の三浦之助義村役(みうらのすけよしむら)は、尾上菊之助が代役となる。』『今後の出演については現在のところ未定、としている。』

音羽屋の病気休演なんて、私は久しく聞いたことがなかった。
気管支炎とか声帯ポリープとかが、
過去には、あることはあったが……(汗)。
今回は、2月の歌舞伎座で大活躍だったのだが、
出ずっぱりの舞台はやはり大変な負担だったのでは……。

スポーツ報知によれば、「胃潰瘍」とのことだ。
菊五郎、体調不良で歌舞伎座3月公演休演 代役は息子・菊之助(スポーツ報知)
『歌舞伎の人間国宝、尾上菊五郎(73)が3日初日の東京・歌舞伎座3月公演「五代目中村雀右衛門襲名披露」を体調不良のため休演することになった。』『関係者は「胃潰瘍と聞いています」と説明している。菊五郎は今年に入って国立劇場、歌舞伎座と休みなく出演していたため、相当な過労もあったと思われる。』『なお菊五郎が出演予定だった「鎌倉三代記」の三浦之助義村は、息子の尾上菊之助(38)が代役をつとめる。』


追記:時事通信は、ごく短期間の休演予定というニュアンスで伝えている。
病状が軽いものであることを祈っているが、無理はされませんように…。
尾上菊五郎さん胃潰瘍で休演(時事通信)
『歌舞伎俳優で人間国宝の尾上菊五郎さん(73)が3日から東京・歌舞伎座で始まった中村雀右衛門さんの襲名披露興行を休演すると同日、松竹が発表した。所属事務所によると、胃潰瘍のため数日間静養する見通しで、体調が回復次第、舞台に復帰するという。』『菊五郎さんは雀右衛門さんの襲名披露口上などに出演する予定だった。』(2016/03/03-10:39)

追記2:菊之助の話。本日時点ではこれは「三日御定法」の作法を踏まえた挨拶と思うべきだろう。
父・菊五郎の休演に菊之助「疲れが出た」(日テレNEWS24)
『菊之助はこの日、「三月大歌舞伎」の終了後、取材に応じ、「先月(公演)の疲れが出たんだと思うんですけども、ちょっと体調を崩しまして…」と父の様子を報告。復帰に関しては「とりあえず、きょうから3日間は私が務めさせていただいて、体調が戻り次第(公演に)戻ると思います」と答えた。』(2016年3月3日 20:36)

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菊之助の長男・和史くん、「歌舞伎よりアンパンマン」(YouTube)

冒頭、フラッシュを浴びながらパパ菊之助に支えられて、
クシっっ!とクシャミをしているのが可愛い。
ちっちゃいときは眩しいだけでもクシャミが出るのよね~。

お目々ぱっちりで綺麗な子だが、菊五郎や菊之助とはまた違って、
むしろ、播磨屋(吉右衛門)似なのではないだろうか。
吉右衛門が小さい萬之助くんだった頃、こんなお顔をしていたのでは、
と、つい楽しく妄想(笑)してしまった。
両じぃちゃんたちは、可愛くて愛おしくて仕方ないことだろう。

ミニミニ音羽屋は報道陣に囲まれても機嫌良くしていたようだが、
やはり恥ずかしそうで、お名前は言わず、
お歳は、小さい小さいお声で「にさい、です……」。
好きな食べ物は?と訊かれると、「ブロッコリーとカボチャです
と、ここだけ大変具体的であった(笑)。

5月の初お目見得の時点でもまだやっと2歳5か月だそうで、
去年の勸玄くんの2歳8か月より、更に幼い。
2歳では月齢ごとの差がまだかなりあるものだし、
和史くんだと、舞台上でお名前を言うのも、
結構難しいのではないだろうか。
うちの娘が2歳5か月のときと言ったら、
……ヤマハの2歳児クラス「おとのゆうえんち」で、
おうたもお遊戯も黙殺して、しゃがんでいた頃だよな(爆)。
第一、娘は言葉が遅かったので、二語文も言ってたかどうか…(汗)。


菊之助が語る「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎美人)
『5月2日(月)から始まる、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で、尾上菊之助の長男、寺嶋和史(てらじまかずふみ)が、初お目見得することが発表されました。』『和史は歌舞伎座の舞台は、先日の「節分祭」ですでに体験済み。祖父の吉右衛門に手を引かれて舞台に登場し、豆まきをしました。「着物を着るのが好きなようなので、助かっています。岳父にはいつもかわいがってもらってありがたいです」。着物を着ると舞台に出ると思っているようだとのこと。将来なりたいのは「とと」と、父の菊之助を手本に、初めの一歩を踏み出します。』『菊之助は昼の部の『寺子屋』では、我が子を犠牲にする松王丸の女房、千代を勤めます。息子と初めて公演を共にする今回は、いつにも増して親としての実感がこもった舞台になりそうです。「どんな千代ができるのか、舞台に立って気持ちを感じたい」と、菊之助自身も楽しみにしているようでした。』『その『寺子屋』と夜の部『三人吉三 大川端庚申塚の場』では、久しぶりに松緑、菊之助、海老蔵の三人がそろいます。「三人で初めての『大川端の場』は、今考えると…。今回をご覧になって、何回も見たいと思っていただけるようにしたい」。ほかに『十六夜清心』『男女道成寺』に出演、「責任を持たせていただいたからには、全力で応えていかないといけません。世代の変わり目だと思われているようではだめで、内容で、芸の中身で納得していただける舞台を勤めたい」と、意気込みました。』

尾上菊之助さん長男、初お目見えへ 両祖父含め三代共演(朝日新聞)
『歌舞伎俳優の尾上菊之助さんの長男、寺嶋和史(てらじまかずふみ)さん(2)が、5月2日に東京・歌舞伎座で開幕する恒例「団菊祭五月大歌舞伎」で初お目見えすることになった。2日、東京都内のホテルであった取材会に親子で登場した。』『菊之助さんは、尾上菊五郎さんの長男で、妻は中村吉右衛門さんの四女。菊五郎さん、吉右衛門さんともに人間国宝だ。和史さんの初お目見えは夜の部の「勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)」で、菊五郎さん、吉右衛門さんの両祖父、菊之助さんらも出演、三代共演となる。』『取材会には、2人そろって紋付きはかま姿で現れ、菊之助さんが「大きくなったら何になりたい?」と聞くと、和史さんは小さな声で「トト(お父さん)」と答えた。和史さんはふだんは歌舞伎の弁天小僧のまねをするなど活発で、菊五郎さんを「ひいま」、吉右衛門さんを「じいたん」と呼んで慕っているという。』『菊之助さんは「せがれはまだ2歳3カ月。舞台上でどのようなことができるのか探っていますが、菊五郎と吉右衛門の両祖父と一緒に初お目見えをさせて頂くことになりました。本人は着物を着ることや舞台に出ることが好きなようです」と笑顔で話した。』『将来について「音羽屋の家に生まれたからには先輩たちの築かれてきたものを継承するのが一番。それから自分のやりたいこと、やらなくてはいけないことを選択してやっていくんじゃないでしょうか」と話した。』『5月26日まで。予約は4月12日午前10時から。0570・000・489(チケットホン松竹)。(山根由起子)』

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(写真は、本文とは関係ないのだが、2月15日に参拝した広島東照宮
仕事で近くまで行ったので寄ってみた。
以前から「東照宮は、あのへん」という認識はあったが、このたび初めて行った。)

久しぶりに仕事も何もなく、風邪でもあったのできょうは家にいて、
歌舞伎公式サイト『歌舞伎美人』など見に行ってみたら、素晴らしいものを発見した。
松竹大歌舞伎 中央コース(平成28年6月30日(木)~7月24日(日))

なんと、あらしちゃん(松緑)の『鳴神』で、広島公演がある。
梅枝が雲の絶間姫というのも夢のような組み合わせだ。
亀寿と萬太郎も来るし、座頭は時蔵!
なんとまあ、最高の顔合わせではないか。

一、歌舞伎の見方
解説:坂東 亀寿・中村 萬太郎

二、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)
鳴神上人:尾上 松緑
雲の絶間姫:中村 梅枝
黒雲坊:中村 萬太郎
白雲坊:坂東 亀寿

三、文売り(ふみうり)
  三社祭(さんじゃまつり)
〈文売り〉文売り:中村 時蔵
〈三社祭〉悪玉:坂東 亀寿 善玉:中村 萬太郎

広島公演は廿日市さくらぴあで、7月20日(水)昼12:30 夜17:00。
チケットに関してはまだ何も情報が出ていないようだが、
よもや去年の菊之助のようなことは、あるまい(^_^;。
仮にそうでも、今回のは倉敷公演もあるから、なんとかなるだろう。

昨今、私が以前にもまして歌舞伎を熱心に観るようになった理由は、
松緑の存在によるところが大きい。
勿論、もともと音羽屋贔屓ではあって、ずっと歌舞伎は観て来たのだが、
ここ数年の松緑の面白さは私にとって大変に大きな吸引力となっている。
その松緑が広島に来るとは。しかも鳴神!!
いや~、今から夏が楽しみだ(^^)!

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一度では記憶できないほど、急にあれこれと予定が入ってきた。
仕事ではない、道楽の、だ。
備忘録も兼ねて、書き出しておく(^_^;。

広島交響楽団第358回定期演奏会(PDF):3月11日(金)18:45 広島文化学園HBGホール
宝塚歌劇団星組『こうもり』:3月18日(金)~ 4月25日(月)宝塚大劇場
明治座 四月花形歌舞伎(菊之助・勘九郎・七之助):4月2日(土)~26日(火)
「旅に出る二人」仲井戸麗市 with 早川岳晴:4月19日(火)19:00 広島Live Juke
ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」2016:5月3日(火・祝)~5日(木・祝)
團菊祭 五月大歌舞伎:5月~ 歌舞伎座(多分)
宝塚歌劇団星組『こうもり』:5月13日(金)~ 6月19日(日)東京宝塚劇場
三浦文彰&田村響:5月22日(日)13:30 福岡FFGホール
ユンディ・リ ピアノリサイタル:6月9日(木)19:00 広島文化学園HBGホール
T.M.R. LIVE REVOLUTION '16:6月19日(日) 広島・上野学園ホール

こうして、ジャンル問わず公演予定がドっと出揃うことが、時々ある。
そうすると、スケジュールのやりくりも大変だが、
私にとってもっと困るのは、チケットの発売日をそれぞれ把握せねばならないことだ。
全席自由席とか、残席を十分あてにできる公演なら焦ることはないが、
完売しそうなものや、出遅れたら特等席しか残っていないような公演の場合は、
作戦なしには到底、行けない。
よけいな出費をせずに確実に観たい・聴きたいと思うなら、万事、先手必勝なのだ。
更に、公演地や公演日によっては宿泊を先に押さえておかなくてはならない。
遠征した晩に寝る場所がないとなっては、モトもコもないからだ。

3月は、みちこ(北翔海莉)さん主演の星組が大劇場で公演するのだが、
今年は南座の花形歌舞伎は無いのだろうか。
若手を存分に堪能できる花形歌舞伎、特に南座の企画を、
私は近年、大変気に入っているのだが、
2月の今も予定が出ていないところを見ると、今年は違うのか……。
追記:南座の公演予定が出なかったのは、これが理由だったようだ。
2016.02.05 京都四條南座 休館に関するお知らせ(松竹株式会社))

また、この星組公演が東京に移るときには、
例年通りならちょうど、歌舞伎座で團菊祭をやっている筈なので、
両者を同時に観られるようにしたいと考えている。
今年の團菊祭は、誰かの初お目見えがあるのではないだろうか…?
追記2:前々から噂が出ていたので、この時点でこのように書いたのだが、
やはり、大きな初お目見得のある團菊祭になることが、後日わかった。)

5月のLFJ金沢は2012年以来の参戦で、先日早速、
会員先行チケット抽選にいくつかエントリーした。
連休の金沢で、ひとり気ままに、朝から夜まで
いろいろな演奏家による音楽会を楽しみたいと思っている。
メインは5日の、エル=バシャのベートーヴェン・リサイタルと、
エル=バシャ+オーケストラアンサンブル金沢メンバーズによる
シューベルトのピアノ五重奏『ます』、というつもりなのだが、
ほかにもアンヌ・ケフェレックや栗コーダーカルテットなど
私にとって楽しみな参加者が多く、選ぶのに今から苦労している。

6月のユンディ・リ広島公演は、つい先日、テレビCMで知ったばかりだ。
最近、ユンディに関しては否定的な噂ばかりが耳に入って来るので、
私はかえって、聴いてみたいと思うようになった。
評判の良い演奏家については、私は、次の機会でも良いかなと思うのだが、
あまりにも皆が怒ると、これは逃してはならないという気分になる(^_^;。
せっかく広島公演があるのだから、聴けるものなら聴いてみたい。
オール・ショパン、というプログラムは
私が最も鬱陶しいと感じる類いのものだが、
本当に演奏がアレだったら、難行苦行のようになるだろうか。

ほかに、どこかでなんとかしたいと思っているのは、
3月の雀右衛門襲名披露@歌舞伎座と、
4月の鴈治郎襲名披露@こんぴら歌舞伎だ。
それと、5月6日に予定されているギャリック・オールソン福岡公演に
私は以前から注目しており、とても聴きたいと思っていたのだが、
連休はエル=バシャを聴きにLFJ金沢に行くことにしたので、
その直後では、さすがに福岡遠征は無理だ。
しかも金曜日(汗)。翌日が出勤日だし、これは決行したらシぬ。

ちなみに上記予定は上半期に関するものだけだが、
下半期に関しては、10/5(水)にVPO広島公演があることを先日、知った。
ソリストは、ピアノのルドルフ・ブッフビンダー。
これは要チェックではないか!
12月のポゴレリチまで十分に間が空いているのも、理想的だ。


……それにしても、いつも思うことなんだが、
仕事に関してもこれほど細かくアンテナを張り、
手際よく抜け目なく、経済的損失を最小限にした段取りをつけ、
フットワーク良く日帰り遠征さえ厭わぬ行動力を発揮できていたなら、
私は、何かもうちょっと別なモノになれていたことだらうね(^_^;。

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旗日の歌舞伎座・門松つき。新春公演から大入りで、喜ばしい。

……のだが、私はきょうは観劇予定は無い(-_-;)。
最終日にして初めて家族三人が合流し、
新橋のホテルで昼食を一緒にする予定なので。
いや食事は本当に嬉しいのだがね。

松緑の『茨木』、観たかったよ(T_T)。

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国立劇場のあとは、歌舞伎座夜の部。

松緑が数日前に高熱を出したとご本人のブログで読んだが、
夜の部の『猩々』の酒売りに関する限り、舞台姿は危なげなく、
確かに声は多少割れてはいたけれども、
踊りそのものは華やかで覇気があり、良かったと思った。
昼の部の『茨木』がどうだったかは、観ていないだけに、
心配は残ったが、今回の日程では私はどうしようもなかった。

『二条城の清正』は、幸四郎が孫の金太郎と共演しており、
二十年でも三十年でも、いつまでも長生きしてくれと、
清正を慕う秀頼(もはや子役ではない。台詞明晰でお見事!)と、
万感の思いでそれに応える清正とのやりとりは、実に感動的だったが、
それと同時に、高麗屋が、こんな、おじーさんになってしまった、
……ということを私はまざまざと感じてしまい、かなり、こたえた。
あのドン・キホーテの染五郎様が、今や名実ともに本物の「じぃ」に(爆)。

がんじろはんの『廓文章』は、襲名披露に続いて短期間に二度目。
要するに伊左衛門は、普通の人でないところが魅力なのだな、
と観る側としての私に納得感が出来上がってきたのを感じた。
世間並みのところでマトモと見なされる人間とは別世界の、
ぼんぼん育ちならではの感性や振る舞いが、
伊左衛門の一番良いところであり、究極の二枚目ということなのだ、と。
一方、私にとって、玉三郎が演じたものの中で夕霧は屈指の傑作なのだが、
今回も強く、その思いを新たにした。
あの艶やかさと貫禄、圧倒的な存在感、
まさに、伝説の遊女・夕霧太夫ではないか……!
溜息もの。いや~~、美しかった!これに尽きる。

『直侍』、絵になる直次郎で、顔を隠す素振りひとつまで粋だったし、
崩れた男という魅力があり、染五郎は格好良かった。
芝雀の三千歳も、匂い立つような女ぶりで、味わいがあった。
…が、『廓文章』の続きで観ると、なんだか同じような設定??と
私は少々、変な気分になった。
わけあって訪れの途絶えた男と、
それを案じるあまり患ってしまった廓の女、
ようやっと逢瀬が叶い、積もる話は、恨み言から事情説明へと……、
って、うぅむ、その展開って今さっきどっかで……(^_^;。
ちなみに直次郎のお仲間・河内山の話は11月に海老蔵で観たが、
次は『天衣紛上野初花』として通しで楽しみたいものだな、と思った。

ともあれ、そういうわけで、
舞踊あり、新歌舞伎あり、上方の和事に江戸の世話物と、
色とりどりの初春大歌舞伎夜の部、素晴らしい、眼福の一日だった。

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大変楽しゅうございました♪
愉快、痛快、爽快!
新春に相応しい、実に気持ちの良い舞台だった。

こんな心躍るような菊五郎劇団が観劇初めだなんて、
今年もいいことがありそうだわぁ(^^)(^^)。


初春歌舞伎公演「通し狂言 小春穏沖津白浪―小狐礼三―」(国立劇場)

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抽選に外れまくり、道楽の神様に見限られたかと諦めていたのだが、
なんと、直前にチケットを譲って下さる方があり、私は18日(水)に、
『第33回ANAチャリティー大歌舞伎 広島特別公演』@上野学園ホール
に行くことができた。
菊之助の『魚屋宗五郎』を、私の地元広島で観ることが叶ったのだ。
それもあって本日の長門公演には行かず、チケットは「お布施」となった(^_^;。
菊之助の宗五郎は再度観たかったが、この半月近く休みがなかったために、
きょうは私の心身が限界で、切実に休養が必要だったのだ。
結果的に、何もかも巧く行ったと感謝している。
お声をおかけ下さった某氏にも、そして、道楽の神様の配剤にも。
ありがとうございました<(_ _)>。

それにつけても、巡業とはいえ、
菊之助の初役の宗五郎を観ることができたのは、
音羽屋ファンの私にとって本当に素晴らしいことだった。
何しろ私は、菊五郎が初役で務めた宗五郎も知っているのだ。
昨今は、私自身の年齢が上がってきたために、
歌舞伎を長く見続けることの幸せを実感する機会が増えたと思う。

目下、菊之助の容貌は菊五郎の若いときに瓜二つだ。
横顔など、はっとするほど似ていることがある。
声や滑舌が涼やかで美しいのも、まさに父譲り。
菊五郎は実に立派な息子を育ててくれたと思うと、大変感慨深い。
その菊之助がこのたび演じて見せたものは、
瑞々しく若々しく、そして、例えようもないほど美しい宗五郎だった。
殿様に見初められてお屋敷に上がったほどの「お蔦」の兄なのだから、
宗五郎自身もまだ若く、また恐らく大変な男前であっただろう、
ということが、菊之助の宗五郎からはごく自然に伝わって来た。

酔うところは、まだ少し、演技的な計算が見え隠れしていたかもしれない。
酔って言うんじゃ、ございませんが
からの、笑い上戸の宗五郎の言葉も、
私にとっては、菊五郎で聴くような切なさは無かった。
でも、それはそれで良いと思うし、現段階の菊之助ならではの、
若く正しく行儀の良い舞台を観ることができたのだから、
私は全く不満になど思っていない。
菊五郎から習った通りに、主役として立派に務めていたし、
それができたのは、菊之助の充実した力量があればこそだった。
ただ、菊之助の課題があるとすれば(ただのオバさんが厚かましいのだが)、
次は、江戸の庶民である「魚屋」になりきることかな、と観ながら思った。
綺麗すぎて、……そこが最大の魅力でもあったのだが、やはり美しすぎて、
今回のは、天秤をかついだり魚をさばいたりする姿が想像できなかった。
歌舞伎だから、別にリアルに魚屋である必要はないのだが、
そうかと言って、音羽屋のプリンスの顔が見えては、やはり違うだろう。

同じように綺麗過ぎても、梅枝のほうはちゃんと女房おはまになっていた。
赤姫が抜群に似合う梅枝に、こんな庶民のおかみさんが出来るとは、
実際に観るまで私は想像できていなかった。
行き届いた、実に良い女房ぶりだったと思った。
ほか、萬太郎の三吉も宗五郎とのバランスが良かったし、
おなぎの右近も、限られた台詞ながら実に真心がこもっていて、
宗五郎一家とお蔦をつなぐ重要な役割を、見事に果たしていた。
何より、若い人ばかりで奮闘したこの舞台に團蔵がいてくれたことは
本当に大きな意味があっただろうと想像できた。
この芝居はもともと、主役の宗五郎で成り立つのではなくて、
周囲のひとたちが「受ける」呼吸のほうが大切なのだが、
その要となっていたのが、團蔵扮する宗五郎父・太兵衛だった。
團蔵の力で、『魚屋宗五郎』の舞台の空気が無理なく維持されていた、
という面もかなりあったのではないかと私は思っている。

磯部邸の家老・浦戸十左衛門は亀三郎。
声が素晴らしいので聞き惚れてしまったが、
亀三郎の実際の年齢や立ち位置からすると、
実際には、御家老様を演じるのは荷が重かったかもしれない。
しかし重厚さも良かったし、誠実さも控えめながら確実に演じられていて、
安心して観ていられた浦戸十左衛門だった。
松也扮する殿様の磯部主計之助も良かった。
この人も台詞が綺麗なので心地よく聴けて、
主計之助が酒乱で失敗したことや、今は心から悔いていること、
お蔦を陥れた者たちを責任を持って処罰する気持ちであること等々、
言葉のひとつひとつが響き、聴く者によく染み通ったと感じた。

菊之助が未来の菊五郎となるであろうことを考えると、
『魚屋宗五郎』は今後も繰り返し、巡ってくる演目なのではないかと思うが、
「兼ネル」役者である菊之助(菊五郎)であればこそ、
私はいつか、通しで『新皿屋舗月雨暈』としてこれを観たいと願っている。
菊之助が、前半ではお蔦を演り、後半では宗五郎を演るのだ。
これは、父の菊五郎でさえ、やっていない挑戦だ。
お蔦→宗五郎の通しには、美しい菊之助こそ相応しいに違いないと思う。
歌舞伎座でも国立劇場でもいい、通し上演される日を、
私は自分勝手に夢に見て、菊之助に期待しつつ、待っていたいと思っている。

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今回は、高校の同級生で三十数年来の友人と一緒に行った。
彼女とは、去年の猿之助・福山公演も観たのだが、
彼女のほうは歌舞伎好きとはいえ、私ほど酔狂ではないので、
最後に歌舞伎座まで出向いたのは25年ほど前のことであり、
そのとき観たのは『曽我対面』、現・松緑が辰之助を襲名した舞台だった。
その後、彼女は菊五郎劇団の面々を観る機会は全くなく、
菊之助など、自分の中で未だに丑之助時代で止まっていると言った。

「カズくん何歳になったんだっけ?」
と彼女が訊くので、
「三十代の終わり、……38歳だったか?」
と私が答えたら、仰け反っていた。
菊之助が結婚したのは、ワイドショーで観てなんとなく知っていたが、
感覚的に、まだ二十歳ちょっとだと思っていたそうだ。
んなワケないだろう、私らが五十過ぎなんだからよ(^_^;。
あんとき高校生だった辰っちゃんだって既に四十で、今や息子が左近だぞ?

ちなみに、これは平成の初め頃の話なのだが、
私の歌舞伎仲間のそのまた友人が、数十年ぶりに歌舞伎を観て、
「梅枝って、あんなに小さかったっけ!?」
と真顔で言った、というエピソードがある。
このとき出演していたのは、初舞台を踏んだばかりの現・梅枝だったが、
発言者の頭の中にあった「梅枝」は、その親の、当代・時蔵の少年時代であった(^_^;。
歌舞伎ファンの認識というのは、この程度にタイムスリップし得るものなのだ。

……というような具合で、今回の配役を見ても、
友人の馴染みは團蔵さんしかなく、観劇後に私が、
「おはまが時蔵の長男、三吉が時蔵の次男、
おなぎさんは六代目の曾孫で清元延寿太夫の次男、
御家老様が彦三郎の長男で、お殿様が松助の長男」
と説明したら、もうほとんど口パクパク状態になった(笑)。
なんと見事な、どこの息子もどれだけ達者なのか、さすがだ、
と、浦島さん状態の彼女は感激した。

「いやー、こりゃ久々、歌舞伎熱に火がついたね。やっぱり生はイイわ!
大阪・京都か博多くらいまでなら、ちょっと行こうかね」
と彼女は言った。望むところだ。案内するぞ(笑)。
「4月になったら、こんぴら歌舞伎もあるよ。日帰りできるよ」
と提案したら、彼女は笑って、
「やだ!!金丸座まで行ったら、泊まる!」
とも言った。よっしゃ、その意気だ。

こうなると、この友人に、近いうちに何かの機会を捉えて、
是非とも海老蔵を見せなくてはならないだろう(笑)。
海老蔵はもはや、彼女の頭の中にいる新之助とは全く違う。
きっと驚くぞ。観んでどうする。

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勸玄くん初お目見得が終わったあとの夜の部は、
『仙石屋敷』『勧進帳』『河内山』。
なんとも盛りだくさんで豪華な顔見世だった
(お蔭で、まとまった幕間は『仙石屋敷』のあとの一回のみ。
『勧進帳』と『河内山』の間は10分しかなく、忙しかった)。

『仙石屋敷』は仁左衛門の大石内蔵助が圧巻だった。
動きとして見れば実は大変に地味な芝居だったと思うのだが、
観ている間はそれどころか、内蔵助の話に刻々と引き入れられた。
内匠頭の無念を晴らしたい一念での討ち入りであったという、
家臣としての、熱い情のこもった言葉のひとつひとつが強く響いた。
内匠頭は良い家臣を持ったと、伯耆守の梅玉が言うのだが、
それも単に忠義な者たちが筋を通した行為のことを言っているのではなく、
彼らの真心のありようを指していることがわかり、感動的だった。
仁左衛門の孫の千之助演じる主税も、若々しく才気煥発で、とても良かった。

その次が、ある意味で私の今回の最大のお目当てであった『勧進帳』。
なぜこれが観たかったかというと、松緑が、…あのワイルドあらしちゃんが、
なんと義経を演ることになっていたからだ(汗)。
弁慶でも富樫でも全く驚かないが、よもや義経が来るとは(大汗)。
と思っていたが、まず花道に登場した義経、これが存外、綺麗だったのだ(殴)。
白く塗った顔に、薄紅の唇は愛らしくも艶があり、
ほんのりとした目元などお人形さんのようで、なんとも若く美しい義経、
更に、その洗練された所作がまた、さすがに藤間流六世家元。
なるほど「静の松緑」とはこういうものであったかと私は唸った。
……のだが!声が…(笑)!喋ったら、あらしちゃんだった(爆)!!
「いかに弁慶…」
の台詞が始まったとき、私は、すみません、ちょっと、
噴き…、いえ、笑いそうに、なりました(逃!!!)。
台詞まわしそのものは美しく、結構だったのだが、
ハスキーで、カマす直前で踏みとどまり続けるような台詞声に私は悶絶した。
その声で喋りつつ、威力120パーセントのビジュアルで押して来る義経。
弁慶・富樫と並んだ「天地人の見得」など、指先までも優雅で、
藤間勘右衞門の面目躍如!どうやって耐えたらいいんですかこれ!!
観ていてすっかりこちらの息が上がってしまった『勧進帳』だった。

幸四郎の弁慶は、押しも押されもせぬ高麗屋の貫禄、といった風情だった。
弁慶が十分に年配に見え、かつ、姿も大変立派なので、
命がけで義経を守り通す大きさが、存分に発揮されており、
お蔭で、義経の側にも「守られる」魅力が自然に出ていたと思った。
ただ幸四郎は体力的に、弁慶はそろそろつらいのではないかな、
と客席で観ていて感じた箇所もあった。
特に、引っ込みの六方のところなど、最後まで勢いが持つのかなと、
やや、心配になった。
弁慶を演じて苦しくならない役者は居ないだろうし、
ましてや幸四郎の年齢であれば、こうした役のときは特に、
まさに一期一会の覚悟で、体を張って務める舞台なのだろうなと思った。

一方、染五郎の富樫は、私は予想以上に気に入った。
単に好みの話なのだが、私は染五郎の声の低音域にはあまり惹かれず、
むしろやや高めの、声が冴え渡るようなところが好きなので、
富樫の台詞回しは実に美しいと感じ、心地よかった。
演技的にも余裕が見え、品格の高い富樫で、素晴らしかった。
染五郎はおそらく将来の弁慶役者のひとりとなるであろうから、
若いこの時期に彼の富樫の名演を観ることができたのは、大変良かった。

そして、その次が、海老蔵初役の『河内山』。
『若き日の信長』のほうは、無条件に「格好良いだろうな~(^^)」と
楽しみにしていたのだが、『河内山』については私は、
二枚目で男盛りの海老蔵に果たして似合うのだろうかと、少々危ぶんでいた。
しかし案に相違して、登場時から目を見張るほどの華があり、かつ、愉快だった(笑)。
高僧をカタる場面では文句なしに品格があり、さすがに美しい海老蔵ならでは。
更に、皆がいなくなったところで金子をあらためようとした途端、
背後の時計が鳴り出して、びっくりして手を引っ込めるところは、
最高にチャーミングな河内山(笑)!
追い詰められて正体がばれ、本性を現す件は一転して凄みがあり、
その直後、形勢逆転したと見るや、
再び高僧の仮面をかぶりなおすところも鮮やかで、
海老蔵の魅力を次々に見せて貰った、見どころ満載の一幕だった。
私にとっては、これまで見た海老蔵の中でも、
この河内山は五指に入る目覚ましさだったと思う。


十一代目・團十郎の五十年祭に相応しい、華やかで贅沢な顔見世を、
豪華な配役と演目、大入りの歌舞伎座で、たっぷりと堪能させて貰った。
本当ならこの場に当主として居るべきだったなつおちゃん(團十郎)を思い、
惜しまれてならなかったが、しかしその命はしっかりと受け継がれ、
海老蔵と、そして勸玄くんがいてくれることを、とても嬉しく、頼もしく思った。
筋書を買ったら、掲載されている十一代目の写真の何点かに
海老蔵はまさに生き写しで、改めて驚かされた。

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未来の團十郎の、初お目見得を、私は観た!
菊五郎の先導で、海老蔵に手を引かれて花道に出て来た、
小さな小さな「ミニ成田屋」。まだ二歳八ヶ月。
藤十郎、仁左衛門、梅玉、染五郎、松緑らが迎える舞台に着くと、
正面にきちんと座って、お扇子を置いて、
「ほりこし、かんげん、に、ござりますぅぅ」
と大きなお声でご挨拶ができた。
満員の歌舞伎座の、万雷の拍手。
なんと豪華な、なんとお目出度い、初お目見得だったことだろう。

将来、彼が大活躍する姿を観ることは、私には叶わない。
けれどかわりに、彼の初めての歌舞伎座に、私は立ち会うことができたのだ。
成田屋当主として、父親としての、見事な海老蔵の姿を見たら
なつおちゃん(團十郎)の大らかな笑顔が重なって見え、泣けた。
「小さい孫が、お扇子持って、お稽古に通ってきたら、たまらないでしょうね」
と、かつて目を細めるようにして語っていた團十郎。
ああ、なつおちゃんが生きていたら、
このいたいけな孫息子を、それこそ目に入れても痛くないほど
深い深い愛情で包んで、慈しんだことだろう!

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