あれは去年の今頃だったろうか。
近所の掲示板に汚い字で貼り紙がしてあるのを見つけた。
“Y山Y美について
この女はある男性をだまして500万円の金を巻き上げた上
自殺に追いやった恐ろしい女。
この町から出て行け!”
一緒に見つけた隣の若妻と二人
「ドラマではよくあるが、実際にこんなものを見ようとは…」
と狂喜乱舞。
Y美さん…近所に住む、セクシーな年増である。
自慢の足を惜しげもなく出して
長い髪をなびかせ、スナックへご出勤あそばされるお姿は…
とっても後ろべっぴん。
あまり話したことはないが、会えばいつもにっこりと挨拶する
気さくな人だ。
彼女からはいつも香ぐわしいコロンの香りが漂い
私はいつもうっとりと
鼻の穴をいっぱい広げてクンクンしてしまう。
「派手だとは思ったけど、そんなに怖い人だったなんて…」
若妻はつぶやく。
私は叫ぶ。
「何を言う!ちょろっとだまして500万!
すばらしい!ぜひ弟子入りさせていただきたいっ!」
後ろだろうが前だろうが、わたしゃ美しいものには寛大なんじゃ。
弟子入り志願しようにも、それ以来ぱったり姿を見かけなくなった。
そしてこの春…自治会の掃除の日に知った
会費持ち逃げ事件へと続くのであった。
Y美さんは、貼り紙がされる少し前から
いけないお薬にハマッていたというのが、もっぱらの噂である。
家の郵便受けにタバコの空き箱を入れる自由業の男性の姿が
何度も目撃されている。
家に閉じこもることが多くなり
急激に痩せて、うつろになったのも噂になっていた。
支払いが滞ったので、貼り紙で嫌がらせをされたらしい。
そういえば深夜、ご主人が家の前で
自由業の男性に強い口調で何か言われていたのを見たことがある。
すれ違った時、甘酸っぱいような
動物の体臭のような複雑なニオイがして
「コロンをワイルドなやつに変えたのかな?」
と思ったこともある。
あれが、いけないお薬のニオイだったのかも?
とにかく、Y山夫妻は姿を消した。
先日ご主人の姿を見たので、無事でいることは確かだ。
少なくともご主人は…。
会費は持ち逃げしたんじゃない…人聞きの悪い…
集金したまま通帳に入れずに引っ越しただけ…。
美しいものに甘い私は、よその金なので
痛くもかゆくもないゆえ、そう思うことにする。
さてさて、前回のSじじい一味の伝言。
「総会を開け。Sを自治会長にしろ」
2~3日のうちに返事をする…言いたいことがあれば直接来い…
という内容だけ、月番夫人に託したまではお話しした。
月番夫人、私の返答をSじじいの子分、Cに伝えたところ
「そんなことを聞いてるんじゃない!」
とわめき、もう一回行って来いと言われた…と再びやってきた。
「何か答えを持って行かないと、どうも納得しないみたいで…」
なるほど…と私は彼女に二つだけ覚えて伝えるように…と言った。
我々一味で出した結論である。
総会は開かない、自治会長は順番、これを変えるつもりは無い。
異存があれば、必ずみりこん宅へ来るように。
「いいんですか?そんなことを伝えたら…大変なことになるんじゃ…」
奴らが正当に自治会のためを思っており
やましい考えが無いなら、総会を開く効用を説明しに来るはずである。
私が直接Cのところへ出向いて伝えてもいいようなもんだが
「こちらから行った」と「来られた」では
万一もめた時に大きな差が出てくる。
ことをうまく転がすには「怒鳴り込んだ」より
「怒鳴り込まれた」のほうが、人聞きが悪くて都合が良いものだ。
私の伝言を再度伝えに帰った月番夫人が
それきり来ないところをみると、今度こそ伝書鳩から解放されたようだ。
しかしである!
SじじいやCが何か言ってくるのを
手ぐすね引いて待っているのに!
夜遅くまで化粧も落とさず待っているのに!
いっこうに来ないではないか!
あ~あ、とても残念だ。
近所の掲示板に汚い字で貼り紙がしてあるのを見つけた。
“Y山Y美について
この女はある男性をだまして500万円の金を巻き上げた上
自殺に追いやった恐ろしい女。
この町から出て行け!”
一緒に見つけた隣の若妻と二人
「ドラマではよくあるが、実際にこんなものを見ようとは…」
と狂喜乱舞。
Y美さん…近所に住む、セクシーな年増である。
自慢の足を惜しげもなく出して
長い髪をなびかせ、スナックへご出勤あそばされるお姿は…
とっても後ろべっぴん。
あまり話したことはないが、会えばいつもにっこりと挨拶する
気さくな人だ。
彼女からはいつも香ぐわしいコロンの香りが漂い
私はいつもうっとりと
鼻の穴をいっぱい広げてクンクンしてしまう。
「派手だとは思ったけど、そんなに怖い人だったなんて…」
若妻はつぶやく。
私は叫ぶ。
「何を言う!ちょろっとだまして500万!
すばらしい!ぜひ弟子入りさせていただきたいっ!」
後ろだろうが前だろうが、わたしゃ美しいものには寛大なんじゃ。
弟子入り志願しようにも、それ以来ぱったり姿を見かけなくなった。
そしてこの春…自治会の掃除の日に知った
会費持ち逃げ事件へと続くのであった。
Y美さんは、貼り紙がされる少し前から
いけないお薬にハマッていたというのが、もっぱらの噂である。
家の郵便受けにタバコの空き箱を入れる自由業の男性の姿が
何度も目撃されている。
家に閉じこもることが多くなり
急激に痩せて、うつろになったのも噂になっていた。
支払いが滞ったので、貼り紙で嫌がらせをされたらしい。
そういえば深夜、ご主人が家の前で
自由業の男性に強い口調で何か言われていたのを見たことがある。
すれ違った時、甘酸っぱいような
動物の体臭のような複雑なニオイがして
「コロンをワイルドなやつに変えたのかな?」
と思ったこともある。
あれが、いけないお薬のニオイだったのかも?
とにかく、Y山夫妻は姿を消した。
先日ご主人の姿を見たので、無事でいることは確かだ。
少なくともご主人は…。
会費は持ち逃げしたんじゃない…人聞きの悪い…
集金したまま通帳に入れずに引っ越しただけ…。
美しいものに甘い私は、よその金なので
痛くもかゆくもないゆえ、そう思うことにする。
さてさて、前回のSじじい一味の伝言。
「総会を開け。Sを自治会長にしろ」
2~3日のうちに返事をする…言いたいことがあれば直接来い…
という内容だけ、月番夫人に託したまではお話しした。
月番夫人、私の返答をSじじいの子分、Cに伝えたところ
「そんなことを聞いてるんじゃない!」
とわめき、もう一回行って来いと言われた…と再びやってきた。
「何か答えを持って行かないと、どうも納得しないみたいで…」
なるほど…と私は彼女に二つだけ覚えて伝えるように…と言った。
我々一味で出した結論である。
総会は開かない、自治会長は順番、これを変えるつもりは無い。
異存があれば、必ずみりこん宅へ来るように。
「いいんですか?そんなことを伝えたら…大変なことになるんじゃ…」
奴らが正当に自治会のためを思っており
やましい考えが無いなら、総会を開く効用を説明しに来るはずである。
私が直接Cのところへ出向いて伝えてもいいようなもんだが
「こちらから行った」と「来られた」では
万一もめた時に大きな差が出てくる。
ことをうまく転がすには「怒鳴り込んだ」より
「怒鳴り込まれた」のほうが、人聞きが悪くて都合が良いものだ。
私の伝言を再度伝えに帰った月番夫人が
それきり来ないところをみると、今度こそ伝書鳩から解放されたようだ。
しかしである!
SじじいやCが何か言ってくるのを
手ぐすね引いて待っているのに!
夜遅くまで化粧も落とさず待っているのに!
いっこうに来ないではないか!
あ~あ、とても残念だ。