殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

はるちゃん

2009年05月06日 20時19分22秒 | みりこんぐらし
病院の厨房で働いていた時の同僚、はるちゃん。

入って来た時、なんて派手な人だろうと思った。

コーディネートがすごいのだ。




年も近く、そのうち親しくなったので聞いてみた。

「原色が好きなの?」


はるちゃん、服は基本的に買わない主義だと言う。

もらい物ばかりなので、組み合わせとか

似合う似合わないを考えていたら着られないそうだ。


人からもらう服というのは、たいてい派手で

着回しが困難なものと相場が決まっている。

それに合わせてアクセサリーをつけ

バランスをとるのが、はるちゃん流の「おしゃれ」なのだそうだ。


そして、元気に言う。

「大丈夫です!車に乗れば、首から上しか見えません」




はるちゃんの生き甲斐はママさんバレー。

遅番の時は、そのままユニフォームに着替えて直行だ。

ふと足元を見ると、ソックスから指先とカカトが丸出し。


      「どうしたの?」

「破れました。もう4年くらいこれ一足なので」

     「ソ…ソックスの役割りは…?」


はるちゃん、こともなげに言う。

「大丈夫です!靴をはいたら見えません」


はるちゃんの趣味は貯金。

自分のパート代で家族の生活費をまかない

ご主人の給料は全額貯金すると言う。

厨房いち、リッチなのだ。





厨房のメンバーで食事に行き、その日は私が立て替えたので

翌日みんながそれぞれ割り勘の分をくれる。

はるちゃん、重そうなきんちゃくを抱えて出勤してきた。

う…悪い予感…。


きんちゃくをドサリと置き

「はい、これ、昨日の分です!」

     「ええっ?」

中には硬貨がいっぱい。

     「いやだよ~!こんなの!」


はるちゃん、厳しく言う。

「あら、お金はお金でしょ?」

お札は農協へ、硬貨はこういう時のために家で貯めていると言う。


はるちゃんの家は兼業農家だ。

ケチなはるちゃんが

いつになく段ボール箱いっぱいのじゃがいもを持って来た。

「うちにあったものですけど、皆さんで分けてください」


はるちゃんにしては珍しいので、みんなで中をのぞいた。

そこには、シワシワにひからびた

元じゃがいもさんたちがコンニチハ。

 
    「はるちゃん…これ…」

「芽が伸びてましたけど、私が全部むしりました」

     「食べられないじゃん…」

家でいらなくなったのを持って来たのだ。


はるちゃん、涼しい顔で

「あら、イモはイモでしょ?」




しばらく、そんなはるちゃんが嫌いだった。

やがて、年に一度の草刈りデーがやってきた。

各部署から一人ずつ出て、病院の裏庭の草を刈らなければならない。

例年は押しつけ合いだが、今回ははるちゃんが名乗り出てくれた。


当日はるちゃんは、野良着姿もいさましく

愛車の軽トラをかっとばしてやって来た。

愛用の草刈り機の音もかろやかに、慣れた手つきで草を刈る。

めちゃ、かっこえ~!


一同の賞賛に、はるちゃんはさらりと答える。

「プロですから」

その日から、私ははるちゃんを尊敬するようになった。


コメント (12)
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