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金正恩(キム・ジョンウン)委員長は「核兵器の小型・軽量化、そして戦術兵器化をより発展させ、現代戦において作戦任務の目的と打撃対象に沿って互いに異なる手段として用いることのできる戦術核兵器を開発せよ」

2021-03-28 | 核兵器禁止条約を世界の規範に!

[コラム]「核の共有」はありえない

登録:2021-03-22 01:41 修正:2021-03-22 07:34
 
米国が提供する核拡張抑止に対する信頼を基盤として韓米連合の通常戦力を強化するとともに、外交交渉を通じて非核化の機会を作っていくことこそ、より賢明な選択だ。米国の核の傘に対する韓国の不信が大きくなればなるほど、北朝鮮に対する核抑止力は弱まるという逆説も念頭に置く必要があるだろう。

 2017年9月の6度目の核実験と11月の火星-15型大陸間弾道弾(ICBM)の発射試験以降、北朝鮮はしばらく核兵器についての発言を控えていた。しかし、今年1月8日の労働党第8回大会をきっかけとして「国家核武力建設の大業の完成」を強調し、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は「核兵器の小型・軽量化、そして戦術兵器化をより発展させ、現代戦において作戦任務の目的と打撃対象に沿って互いに異なる手段として用いることのできる戦術核兵器を開発せよ」と指示した。「核先制打撃論」の表現もあちこちに登場する。

 北朝鮮の核の教理は中国式の「最小抑制(minimal nuclear deterrence)」に沿っていくと考えていた人にとって、これは少なからぬ衝撃だろう。戦術核は実戦での使用を、特に従来の交戦状況における核の先制使用を前提とする。抑止のための報復・脅し用ではなく、韓国と日本に対して先制的に核を使用しうるということだ。一部からは、金正恩委員長の戦術核発言を「ゲームチェンジャー」と判断し、独自の核兵器開発、米国の戦術核再配備、NATO式の核共有を通じた「恐怖の均衡」の構築などの、様々な代案が提示されている。「NATO式の核共有政策が導入されれば、北朝鮮の核は制御され、韓国は北朝鮮の核の奴隷から解放される」としたホン・ジュンピョ議員の発言が代表的な例だ。

 しかし、北朝鮮の戦術核の動きは目新しいものではない。核技術の権威であるシーグフリード・ヘッカー博士は、北朝鮮が2013年2月の3回目の核実験で高濃縮ウラン弾を実験したことで戦術核保有の敷居が下がり、2016年9月の5回目の核実験を契機として弾頭の小型化がかなり実現したと語る。5回目の核実験の6カ月前、金正恩委員長は核の兵器化事業の指導を通じて「精密化、小型化された核兵器とその運搬手段の開発」を指示し「核による先制打撃権は決して米国の独占物ではない」と述べている。今年の党大会での発言は、このようなこれまでの流れを公式化する手順に近い。

 より重要なポイントは、米国が北朝鮮の行動に対応する核抑止力を着実に向上させてきたことだ。周知のように、米軍の潜水艦発射弾道弾(SLBM)や大陸間弾道弾は20~25分で北朝鮮全域に打撃を与えることができる。さらに、2018年の核態勢報告書を通じて導入が公式化された核重力爆弾「B61-12」、SLBM「トライデント2」、核巡航ミサイル「トマホーク」などの低威力核兵器によって、北朝鮮の戦術核使用シナリオに対応している。北朝鮮がいかなるケースであれ、米国の報復打撃を避けられないようにするということだ。

 平壌(ピョンヤン)が戦術核弾頭を実戦配備するとしても、限界は依然としてある。KN-23(イスカンデル)のような短距離ミサイルやロケット砲システムは、韓米連合戦力の優先先制攻撃の対象だ。韓国空軍の強大な制空権のため、戦闘機による重力弾投下を考えることすら難しいだろう。有用なのは核地雷程度だが、防御的な兵器だ。このような理由から、米軍の戦術核の朝鮮半島への再配備は合理的な代案とは考えられない。これはむしろ北朝鮮側に最優先の標的を提供し、核抑止力を強化するというよりも「ガラス瓶の中のサソリ」(bottled scorpions)のような核の拡大の危険性を増幅させることになるだけだ。

 多くの人々が代案として挙げるNATO式の核共有も、実状は異なる。冷戦期間中、米国と欧州のNATO加盟国は核情報を共有し、相互協議を通じて共同の核計画を樹立・履行してきた。米軍の戦術核兵器が配備された5カ国は、自国の戦闘機を用いて米軍の重力弾を投下する役割も担ってきた。しかし正確に言えば、核は「共有されない」。核兵器を使用するかどうかを決定する権限を持つのは米大統領のみで、ワシントンで暗号を入力しなければ欧州の戦術核兵器は作動しない。

 さらに、NATO式の核政策の調整のためには、1958年改正原子エネルギー法(マクマホン法)に則り、米上院が「核協力計画(program of cooperation)」を批准せねばならない。しかし、上院が韓国を対象としてこれを批准する可能性はゼロに近い。ノーチラス研究所のピーター・ヘイズ博士によると、ドイツなどの米軍の戦術核が配備された一部の欧州諸国は、むしろ韓米同盟と日米同盟がとっている拡張抑制原理の共有と宣言に基づき、米本土や域外の戦略核で核抑止力を構築する方法を好む。

 従って、北朝鮮の戦術核の追求に米軍の戦術核再配備やNATO式の核共有で対応することは、望ましい代案ではない。米国が提供する核拡張抑止に対する信頼を基盤として韓米連合の通常戦力を強化するとともに、外交交渉を通じて非核化の機会を作っていくことこそ、より賢明な選択だ。米国の核の傘に対する韓国の不信が大きくなればなるほど、北朝鮮に対する核抑止力は弱まるという逆説も念頭に置く必要があるだろう。

 
//ハンギョレ新聞社

ムン・ジョンイン|世宗研究所理事長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )



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