羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

日経新聞「私の履歴書」を読みながら、お思い出した記者さんのこと

2019年06月06日 13時07分36秒 | Weblog

電話が鳴った。

「今、慶応病院から電話しています」

「えッ、どうなさったのですが、こんな時間に・・・・」

「胃がんなんです。明日、手術です」

「それは、なんと申し上げていいのやら」

「あのー、必ず生きて、また、お宅を尋ねます。待っていてください」

急な知らせであった。

 

それからかなりの時間がすぎていった。

待てど暮らせど、来訪の兆しは見えない。

意を決して、ご自宅に電話を入れた。

「はい、家内でございます。主人は、亡くなりました。スキル胃がんでした」

一瞬、目の前が真っ白になって、どんなお悔やみの言葉を発したのか、まったく覚えていない。

ただ、まだ幼いお嬢さんを残して、無念の死であった、と伺った。

享年、48歳。

 

彼が私のもとを訪ねてきたのは、日経新聞朝刊「私の履歴書」に、野口三千三を登場させる可能性を探るためであった。

話すうちに、彼の気持ちが固まった。

社内の企画会議で提案をスムーズに通すために、手助けをして欲しい。

依頼を受けて、お偉い方々を説得するための方策を練る、その手伝いを始めていた。

情報交換し、資料を準備し始めた矢先のことだった。

野口先生には内緒で動き始めていたのだ。

彼は、「日本人の脳」右脳左脳の研究者・角田氏を世に出した新聞記者だという。

まだ、知られていない人を、どのように世の中に出してくのか、切々と語ってくれたことを思い出した。

 

今朝、私は「私の履歴書」群馬県出身の石原信雄を読んでいた時のこと。

第6話 占領下の地方制度改革の話で、教育行政についての記述が非常に参考になる、と思って切り抜きをしていると、その記者さんの顔がふと浮かんできたのだった。

あれから25、26年は過ぎているだろうか。

・・・・・幼くして父親をなくされたお嬢さんも、結婚されているだろう・・・・・

なんとも言葉にならない思いが胸に迫った。

 

つくづく、野口先生を通して、私は、いろいろな方に巡り会ってきたのだ、と。

繋がらなかった縁も、それはそれで貴重だ。

こうして、かけがいのない出会いがあり別れがあって、今の自分がしていることがある。

野口先生の足跡を追っているこの2年間を思いかえすと、その記者さんが話してくれたことが、通奏低音として鳴っているのだと気づいた。

「三千三伝」 最終章までの道のりは、まだまだ遠い。

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坐禅 ふたたび 二十六日目・・・野口三千三曰く「豊かさとは・・・・」

2019年06月06日 09時22分28秒 | Weblog

昨日は、授業のため早朝からお弁当作り。2限と3限を終えて夕方帰宅。

夜になって坐禅を、と思ったが疲れていて形だけ行ってもいけないと、断念。

今朝は、昨日の授業のテーマ「呼吸」を反芻。

特に集中したこと。

例えば、歌う場合の発声の初期では、吸気(息を吸う)の時に使われる筋肉を、しばらくの間保ちながら発声する。横隔膜式(腹式)呼吸では、横隔膜を下げた状態、下世話に言えば腹が出ている状態を保つことになる。その時、意識としては、腹をさらに膨らませて保息状態で歌い始める。腹筋を使って吐ききるのは、相当に後になってから、ということになる。

昨日の授業でそのことを「呼吸」取り上げたたこともあって、本日の二十六日目の坐禅で、再度、意識的に確かめてみた。

正直にいうと、横隔膜を緊張させてグッと下げた状態を保ったまま息を吐く・呼気を続けるのは、熟練がいる。

歌うときのように感情を伴うことなく、それを行うのは私にとって至難の技のようだ。

諦めずに、坐禅で試してみて気づいたことがある。

それは、吐く息は驚くほど細く・極細で息を吐き続けることをしないと、腹筋を使う時間が早まってしまうことであった。

息を吐くというより、悟られないくらいに、密かに微かに僅かにか細く細やかに吐き続けることを求められるようだ。

ここに集中していると、何も考えられなくなる。ひたすら息を殺すかのように吐き続けることになる。

こうした息のあり方が、うまくいくかどうかは、止息と保息といった「間」の取り方にかかってくる。

それが難しい。意識すればするほど、難度が上がる。

 

かくして野口三千三の言葉に還った私であった。

『豊かさとは、ちょっと・すこし・わずか・かすか・ほのか・ささやか・こまやか・・・・、このようなことをさやかに感ずることのできることである』

ウゥーむ、そうなんだ!

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