新たな札所めぐりの目的地に選んだ中国観音霊場めぐり。岡山から瀬戸内側を下関まで行き、後は日本海側を回って鳥取に至る巡拝ルート。多様な気候の変化を持つとともに古くからの歴史文化を有する中国地方を楽しむことができる。合計37の札所をさまざまに楽しむつもりである。
その第1番札所があるのは、岡山の西大寺。鉄道でのアクセスなら赤穂線に西大寺駅がある。第1番から第3番までは赤穂線を東に進むルートとなっており、第2番の餘慶寺は隣の大富駅、第3番の正楽寺はさらに東の伊里駅が最寄りである。まずは備前の国・赤穂線シリーズということだ。
大阪を朝早くに出れば鈍行利用でも西大寺から順に東に向かうコースを取れば、1日で3ヶ所を回ることはできる。ただその中で伊里駅から正楽寺へは結構歩く距離が長いのと、朝は多少ゆっくりしたくて遅い時間の出発になったこと、さらに、同じ赤穂線でも岡山市・瀬戸内市のエリアと、東の備前市のエリアに分けて回ればよいのではないかということで、第1回は西大寺と餘慶寺の2ヶ所を日帰りで回ることにした。ちなみに両札所間を結ぶバスなどはないが、地図を見れば赤穂線に1駅乗らずとも徒歩で40~50分もあればたどり着けそうに思う。
訪ねたのは6月16日の日曜日。出発を日曜日にしたのは理由があり、後ほど触れることにする。15日~16日は天候の移り変わりが激しく、強い雨が降る時間帯もあった。16日は回復傾向とはいうもののどんよりした雲に覆われている。大阪を新快速で出発し、姫路で11時06分発の播州赤穂行きに乗り継ぐ。この列車は相生から赤穂線に入り、終点の播州赤穂からすぐに連絡の岡山行きに乗れば西大寺には12時42分に着く。一方、相生では相生始発の岡山行きが連絡しており、こちらに乗ると途中東岡山で赤穂線に乗り換えて、同じく12時42分に西大寺に着く。本線と赤穂線のスピードの差である。相生では2本の列車が同時刻に出発し、それぞれ2方向に離れる。
相変わらず雲が広がり、時に小雨もぱらつく中で播州赤穂に到着。ホーム向かいの岡山行きに乗り継ぐ。115系の2両編成・ワンマン改造車両で、岡山方面の車両の先頭部がスパッとカットされた平面顔をしているのが特徴だ。
ワンマン運転ではあるが全ての駅でドアは2両とも開く。赤穂線の全駅でICカードを使用することができるのもその理由の一つだろう。昔ながらのセミクロスシートのボックス席に陣取って西に進む。
播州赤穂から2駅目の備前福河に着く。さあいよいよ岡山、中国観音霊場が始まるぞと気持ちを新たにしたが、駅舎の看板を見てあれれ?となる。実は「備前」といいながらここはまだ兵庫県だった。但し書きによると、1955年に赤穂線の播州赤穂~日生間が開業した当時は、駅のある場所は岡山県福河村だった。しかし地元からは兵庫県への編入の要望が強く、1963年に兵庫県赤穂市に編入されたという歴史がある。駅名だけは開業当時の名残で「備前」がついている。「住民の長年の要望」とわざわざ書かれているのは赤穂との経済的な結びつきが強かったということもあるが、見方によっては「中国地方よりも関西のほうがいい」という憧れの結果とも取れる。ネットには、そうした「越境合併」をした町ということで、駅の周辺を巡った記事もいろいろと載っている。
ということで、現在の岡山県最初の駅は一つ先の寒河駅である。駅名標もそれまでの青帯のものから赤ベースのものに変わった。岡山管内のJR線は大阪近郊区間と同様に路線ごとにカラー分けをしているが、ここが赤ベースというのはやはり「赤穂」線だからか。
日生から伊里を通る。今回は訪ねないが第3番の正楽寺へは伊里駅下車で徒歩30分とも50分とも言われている。歩くのは別に構わないとして、駅の周辺には少しの住宅と学校、田畑が広がるくらいでコンビニやスーパーなどがないのは気になるところだ。飲食物は事前に仕入れておかなければ。
どんよりした雲も時間が経つに連れて少しずつ明るくなってきた。さすがは「晴れの国岡山」だと勝手に感心する。
伊部、長船というところを過ぎる。伊部では備前焼、長船には(駅から離れているが)刀剣博物館がある。こうした伝統産業に触れるのも興味あるが、いくらぼちぼちの巡拝といっても何でもかんでも立ち寄りしたら少ししんどいかな・・・。
大富を過ぎて川幅の広い吉井川の橋梁を渡る。川の先は岡山市。時刻はすっかり昼を回ってしまったが、12時42分に西大寺着。「はだか祭り」で知られる西大寺会陽が国の重要無形民俗文化財に指定(2016年)されたことを祝う横断幕がホームに掲げられている。
ここまでICカード(Pitapa)1枚で来ることができたが、自動改札では残高不足でエラーとなり、チャージすることになった。確かJR区間でもポストペイだったはずではと思うが、後で確認したところではそのサービスは大阪近郊エリアのみで、赤穂線なら播州赤穂までだった。
駅から西大寺までは徒歩で10分ほど。さてこれから巡拝の始まりである・・・。