まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

飯田線小和田駅ウォーキング・4

2013年07月17日 | 旅行記C・関東甲信越

Dscn1516夕方、雨の小和田駅に降り立った秘境駅ウォーク一行。参加者22人と、添乗員、そして地元ガイドの合計24人である。

駅自体も秘境駅ということでさまざまに記念写真を撮りたいところではあるが、朝の渋滞から始まって時間もかなり押しており、「写真は後でも撮れますから、遅れないようにガイドさんについて行ってください」という添乗員の声に、木造駅舎を後に歩き出す。

Dscn1463石段を下ると「愛」の文字が背もたれに大きく書かれた木製ベンチに出会う。ご存知の方もいらっしゃるだろうが、皇太子と雅子様のご成婚の折には、旧姓が読みは違うが「小和田」ということでこの駅も人気になり、お二人にあやかろうとブームになったところである。「恋成就駅 小和田」という木の看板もホームにあった。ただどうだろうか、小和田駅は秘境駅と化しているし、皇太子ご夫妻も健康問題やら秋篠宮家との確執やらで週刊誌のネタにされているくらいである。本当に大丈夫か、心配なところである。

Dscn1464それを下ると廃屋がある。かつての製茶工場ということで、小和田駅を訪問した人のサイトでは中の様子を撮影した画像も紹介されているが、この雨では中をうかがうことはできない。以前に秘境駅号のツアーで訪問した時にはここで係員が立っていて先に進めないようにしていたが、今回はその先を目指す。順調であれば斜面の上に立つ塩沢集落まで1時間の道のりを歩くところだが、この展開ではそこまで行けない。

Dscn1466そぼ降る雨の中、先頭にガイドのYさん、最後尾に添乗員がついて淡々と歩く一行。道幅も狭く、他の人と並んで歩くということができず、自ずと列が縦に伸びる。駅前からもう山道、完全なハイキングコースである。

Dscn149520分ほど歩くと道が上下に分かれる。下の道を行くと中井侍駅方面に通じる高瀬橋という吊橋があったそうだが、老朽化で崩壊してしまっているとか。

Dscn1478また上の道を行くと古びた民家が見えてくる。現在も住んでいるそうで中から灯りらしきものも見えるが、一行の口々から「こんなところで何をやって暮らしているんやろうか」という声があがる。外との交通手段といえば飯田線しかない。確かに、駅から徒歩20分というのは「徒歩圏内」であるが・・・。

Dscn1491一応は「舗装道路」ではあるが完全ではなく、途中からは斜面の途中に設けられた金網の歩道である。私くらいの身体の持ち主でも安定して通ることができるのでまあ安心だが、所々金網が凹んでいたりめくれていたりして、足元をよく見ないと不安である。

Dscn1481そして吊橋に出る。こちらは金網で出来ており安定はしているようだが、揺れるので一度に2~3人しか渡ることができない。Yさんが橋のたもとに立って、一人ずつ合図を出して渡す。渡った人はしばらく対岸で歩を停めて休憩である。

Dscn1485吊橋を渡ると塩沢集落に向けて急な坂が続く。雨の斜面である。滑らないように慎重に歩を進める。すると後ろから添乗員が「Yさ~ん、時間もあまりないんでそろそろ引き返しましょ~!」と声をかける。これ以上進んでも集落に出るまで時間はまだまだかかりそうだし、行きの上り坂より帰りの下り坂のほうが転倒の危険も高く、慎重に歩くとその分時間がかかるということの判断である。ここで一行は向きを変え、先に上っていたYさんが再び先頭になって引率する。一度通ったからか、帰りのほうが皆さんの歩くペースも早くなったように思う。今回は途中で引き返すことになったが、地図もいただいたことだし、今度は天候のいい時に、個人でも塩沢集落を目指すこともできるのではないだろうか。

Dscn1503結局往復1時間あまりの歩きで駅に戻ってきた。雨は降ったりやんだりである。コースの全部は歩けなかったが、参加者一同も仕方ないなといった表情で汗や雨を落とす。するとそこへ「コースの反対側に『小和田池之神社』というのがありますが、行きたい方はご一緒にどうぞ」ということで、添乗員とYさん、そして何人かの参加者が再び坂を下りて行った。私はといえば体も汗と雨で濡れており、正直これ以上動きたくない感じもあって「もういいか」と、そのまま駅に残る。

Dscn146015分くらい経ってからだろうか、残念そうな顔をして引き返してきた一行。何でも神社と思われるところに大きな土砂崩れが発生しており、様子からして神社は流されたのではないかということである。神社といってもコースの写真では小さな祠である。大雨で流されてもおかしくはない。うーん、それならその様子をこの目で見てもよかったかなと、少し後悔する。秘境駅が本当の「秘境」になりゆく姿というのかな。高瀬橋が朽ちて通行不能となったり、神社が流されたり。それでも駅はまだまだ残っている。駅の生命力は強い。そんなことも含めて、駅の中で参加者同士談笑する光景が見られる。とりあえずイベントは終了。

Dscn1517後は17時51分発の列車で大嵐に向かうだけだが、往路で聴いた「落石警戒の警報で・・・」というのが気になる。少し嫌な予感がして携帯端末で鉄道情報を呼び出す。すると「門島駅~天竜峡駅間の上下線で、落石を知らせる装置が作動した影響により運転を見合わせ」という文字が。思わず「えっ」となったが、続きを読むと、先ほど運転を再開、ただし上下線の列車に遅れありという情報だった。これはいけないと、携帯端末をガイドさんと添乗員に見せる。「えっ、どうしましょう。情報を集めないと、天竜峡駅に電話すればいいですかね?」と、添乗員も慌てた様子で天竜峡駅の電話番号を探そうとするが見つからない。「何だか列車が遅れそうですよ」というのが参加者に伝わり、ちょっとざわめく。

Dscn1511すると駅の柱にとりつけられた小さなスピーカーから、「お客様に列車の遅れについてお知らせします」とあった。小さな声だったしおばちゃんのしゃべり声のほうが大きかったので集中して聞くと、大嵐方面は8分遅れで来るとのこと。どうやら私たちが歩いている間の時間帯は一時運休していたが、無事が確認されたとのことで順次運転を再開したそうである。添乗員と「8分ですね?」と確認すると、参加者の皆さんに案内をしていた。一時は「一晩ここに閉じ込められるのでは」と心配した人もほっとした様子である。

Dscn1456ただこれがもし、8分の遅れで済まずに「終日運転取りやめ」となったらどうするか。駅でとどまるといっても、水道もなければトイレも閉鎖されている。野宿するわけにもいかず歩くことになるだろう。幸い地元ガイドがいるので、団体で動けば道に迷うことはないだろう。その時は塩沢集落まで歩き、その上には狭いながらも外につながる林道があるという。ただバスは入れないので、バスの入れそうなところまでひたすら歩くことになるか。それを思えば結構リスキーな、ただそれでこそ秘境駅なんだよなという風情をイヤというほど味わうことになっただろう。

Dscn1518まあ、列車の遅れはツアーの笑い話ということでやってきた列車に乗り込み、大嵐駅に戻る。

まずバスに戻り、最後部で他の女性客がまだ戻らないのをいいことに着替える。前の席の男性客も同じように着替えており、「男はこういうのがパッとできるからまだいいですな」などと言い合う。女性客も駅のトイレで着替えを済ませた人もいるようだ。まずはここで人心地つき、大嵐を後にする。時刻は18時30分。まずはここから天竜峡駅まで戻るというところ。夕闇迫る中、また狭い道を走る。さすがに皆さんぐったりした様子だ。

この「たびぱる」が主催する秘境駅ウォークも全4回ということで、この小和田駅で全日程が終了。本来なら全てに参加した人に完歩の証明書を贈呈することになっていたそうだが、当初見込んでいた人数よりも少なかったのか、「本日初めての方も含めて、ご希望の方全員に差し上げます」ということになった。まあ、こういうのを余らせても次に使うところがないし・・・。

Dscn1522日が暮れると何も見えなくなる天竜川沿いの道を抜け、天竜峡駅に戻る。ここでガイドのYさんとはお別れ。これから高速道路で戻るわけだがトイレ休憩。「いつもやったら駅前のこのスーパーでビール買うんやけどな、さすがに閉まってしもうたか」とぼやく親父さんがいる(私ではありません)。歩いた後の一杯というのはよろしいのだが・・・・(かと思えば、クーラーボックスを持参していて、発車後に中から缶ビールを取り出してささやかに乾杯していたグループもあった)。

結局天竜峡駅を出発したのが20時、復路は高速道路も順調だったが、「夕食タイムにしてください」と言われた養老SAで22時、桂PAのトイレ休憩は23時、そして高槻到着は24時近くなった。「私も何年も添乗員やってますが、ここまで遅くなったのは初めてです」というが、ここからさらに来た道を戻る。そう、高槻から河内の国の縦断である・・・。

日付は回っているが沿道のレストランなどは若者を中心に多くの客がいて、おそらくそのまま完徹するのだろうか、世の中は24時間で動いているなと感心したり、あるいはウトウトしながら進む。結局藤井寺に戻ったのは1時半。私はいいとして、バスの運転手、そして添乗員はここからさらに移動するわけだから、ほぼ24時間連続勤務ということになる。

一日お世話になったお礼を言おうとバスを降りたが、添乗員の姿が見えない。駅のロータリーのほうを駆け回っていた。様子では、近鉄八尾から乗ってきた女性2人組が、帰りの足がなくなったということでタクシーの段取りを添乗員にお願いしていたようで(それは添乗員も案内していた)、藤井寺からの乗車で予約していたようなのだが姿が見えないということである。バスが着いたのは駅の北口で、タクシーはひょっとしたら南口にいるのかもしれないが、部外者の私が余計なことを言ってもいけないだろう。仕事の邪魔をしてもいけないなと思い、運転手さんにだけ挨拶して家路に着く。

ウォーキングバスツアー、これはこれでなかなか面白いものかなと思った。また秋口には何やらイベントを企画しているとのことで、また行ってもいいかな。それにしても添乗員、ハードな仕事だなと改めて思ったことである・・・・。

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