まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

秩父鉄道桜紀行・1

2006年04月09日 | 旅行記C・関東甲信越

20064_009 快晴に恵まれた日曜日。桜は昨夜も見たが、東京都内はそろそろ散り際の桜が多い。

そこへ来ると、内陸部の埼玉県ならまだ桜も見られるのではないかと思う。桜見物と鉄道旅行・・・そういえば埼玉県を横断する秩父鉄道にはまだ乗ったことがなかったな。特に予備知識があるわけではないが、桜の有名なところもあるだろう。というわけで、東武伊勢崎線で羽生駅に着く。

秩父鉄道のホームに停まっていたのは、元都営地下鉄の車両だったというやつ。今は秩父鉄道の主力車両といえる。

窓口で、秩父鉄道の一日フリーきっぷを購入。1400円。単純に終点の三峰口に行って帰るだけでも充分元が取れるという品物。羽生駅にはハイキング姿のグループ客などが結構いたのだが、改札の係員が「フリーきっぷのほうがお得ですから買ってください」と案内していた。

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羽生から進路を西に取り、熊谷を目指す。沿線には今がちょうど見ごろの桜があちこちに目立つ。小川の堤に沿って並木ができていたり、寺の境内や民家の軒先にも美しい桜色が広がる。車内広告でも桜のスポットの紹介がされており、これはこの先期待ができそうである。乗客も桜見物とおぼしき家族連れやグループが多い。

熊谷を過ぎ、大麻生にさしかかる。進行左手の土手には桜並木が続き、その下には三脚を立てた鉄道ファンの姿が結構見える。ひょっとしてこれは「SL」を狙っているのかな・・・? 秩父鉄道のSL「パレオエクスプレス」は、首都圏から最も身近に触れることのできるSLという。SLと桜の取り合わせ・・・いいじゃない。20064_016

列車は速度を落とし、大麻生駅に着く。ここなら先ほどの三脚の連中とも近い。別に予定のある旅でもなく、またフリーきっぷを持っていることもあり、ここで最初の途中下車とする。

土手を歩いて先ほどの「撮影隊」のいた辺りに向かう。ちなみに土手の反対側はゴルフコース。

さて土手があって桜並木、そして直線コースというポイント。なるほどここなら撮影ポイントになりそうだ。私も混ぜさせてもらう。ほとんどが三脚に望遠レンズ、撮影用の銀箱といういでたちなのに引き換え、私はリュックにデジカメ一台(しかも望遠のほとんど利かないやつ)という身軽さ。SLの通過にはまだ少し時間があるそうで、それまでは土手の桜の花見としゃれこむ。ちょうど今が満開といってもいいだろう。

20064_013_2 10時20分を回る。遠くで汽笛が聞こえる。そろそろ来るか。それまで雑談に興じていた「撮影隊」が一斉に自分のポジションに戻って、通過の一瞬に狙いを定める。

そして、「さくら」のヘッドマークをつけた「C58363」が通過。桜の車窓を楽しむ乗客の笑顔が見られた。20064_014_1

SLの撮影も終わり、桜並木から一斉に人とクルマが立ち去る。次の列車まで時間があるので、クラシックな雰囲気の大麻生駅のベンチで時間をつぶす。この秩父鉄道、車両も昔の国鉄や私鉄のものを改装して走らせていたり、駅も「汽車駅」と呼びたくなるような、昔ながらの風情を残すものも多い。その辺りで根強いファンを持つ路線である。

後続の列車に揺られる。これまで関東平野の北西部を走っていたのが、周りも少しずつ山がちになってきた。その山の中にも時折満開の桜を見つける。

寄居を過ぎ、荒川の姿も見えるようになったところで、長瀞着。ここで2回目の途中下車とする。ホームに「天下の勝地 ながとろ」という看板が見える。駅の周りも桜並木だ。

20064_020_1 するとここで、先に走っていたはずのSLの姿を見つけた。この駅で小休止していたのだろう。改札に出るにはホームの先頭部分から線路を渡るのだが、改札に向かおうとする客と、SLを見て写真を撮ろうという客がごった返しており身動きが取れない。その中を押し分けて、ようやくSLの先頭部に出る。

やはりこうして見ると、他の電車と違って車両に「表情」があるように見える。それもゴツゴツとした表情。それが汽笛一声、ゴトンと動き出した。普段鉄道にはさほど興味がなさそうな人たちもこのときばかりはSLに向けて憧れのまなざしで見つめていた。

長瀞駅に来たのだから長瀞に向かう。駅から河原へと続く土産物店も軒並み大入り。恐らく今日が1年で最も人出があるんじゃないかという声が聞こえる。20064_042

20064_045 河原に出た。こちら側にはギザギザした、浸食の産物である石畳が並ぶ。適度な平地や窪地を見つけて弁当を広げる家族連れが多い。私も岩の上にどっかり腰を下ろして、ビールを呷る。目の前には荒川の静かな流れ。少し下では「長瀞ライン下り」の観光船が次々に出て行く。また、上流からも時折カヌーのパーティが下ってくる。残念ながら石畳の周りには満開の桜はなかったが、奇勝の岩肌と深い緑の川の流れも名勝にふさわしい。

20064_036 その桜だが、長瀞駅からは川とは逆に宝登山のほうに上る参道が並木となっている。さらに脇にそれると「通り抜け」という散策路がある。先ほどの石畳の雑踏とは違い静かな雰囲気である。桜の木の下で二人の時間を過ごしたり、スケッチに興じたり(こういう花の場合は、カメラよりスケッチのほうが似合うと感じることがある)、それぞれの楽しみ方で昼の一時を過ごしていた。

一回りし、秩父鉄道の桜紀行、さらに終着駅の三峰口目指しての乗車を続ける・・・。(続く)20064_035

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