カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

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青酸カリを携帯する人生   ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺計画

2019-01-23 | 映画

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺計画/ショーン・エリス監督

 ナチス占領下のチェコスロバキアのプラハで、統治していたハイドリヒ暗殺にかかわる史実を再現した映画。英国に亡命していた若者が、再度チェコに落下傘で侵入後、地元のレジスタンスらと協力し、暗殺計画を実行しようとしている。様々な障壁がある中、地元の女性とも付き合いながら、決死の覚悟で計画を実行し、ナチスから激しい迫害を受ける一連を描いている。つかまって拷問を受けて仲間を売ることを避けるために、常時青酸カリを携帯しながらプラハの街に潜入し、レジスタンス活動を展開する。祖国を取り戻すという信念のためだけに、生への執着がありながら戦う若者たちを壮絶に描き出した作品になっている。結果的には、ナチスの報復で多くの犠牲者を増やすことにもなってしまう展開で、いろいろ考えさせられる内容になっている。答えのある問題ではないが、チェコの英雄たちを描くだけでなく、やはり戦争を考える題材にはなるのではなかろうか。
 ただし、やはりナチスは絶対悪で、カタルシスのためなのか多くのナチスも殺してしまうが、そのあたりはチャンバラ劇である。史実なので結果は分かっているわけだが、そういうことも含めて、娯楽作になっているということなのかもしれない。今となっては、戦争がナチスを作っているわけで、悪をたたくだけのお話というのはバランスが悪いとは思われる。戦勝国やナチス側でない国々が作る映画にはそのあたりの思考停止があるわけで、あの時代になぜ戦争が起こったのかを考える必要があるだろうと思う。このままでは今でも普通に戦争は起こりうることを、考えない人を生んでしまうようにも感じる。正義のために戦うことは、戦争をある意味では肯定しているに過ぎないのである。
 まあそういうこともあるけれど、死に対しての壮絶さは、なかなかうまく描けている。暗殺の緊張感や、その後の教会籠城の壮絶な戦いも、映画として見どころの多い作品になっている。内容は極めて悲しい限りなのだが…。先ほど単純さのあることも書いたけれど、時代の中で生と死が隣り合わせになりながら生きなければならなかった人たちへの焦点としては、やはりかなりの面でよくできた作品なのではなかろうか。それは潜入し決死隊として活躍した若者だけの問題ではなく、おそらくだが、市井の人々にまで及んだ、共通の緊張感だったのであろう。
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