カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

銭湯の思い出(その2)

2018-12-19 | 感涙記

 中学生の時に、寝台列車に乗って大阪に居た兄のところに遊びに行ったことがある。寒い思い出があるので正月休みだったのかどうか。とにかく一週間ばかり泊まりに行った。
 その時はいろいろあったのだけど、最初に驚いたのは、兄の住んでいるアパートが共同トイレに風呂なしだったことだ。そうして隣との壁が薄いので、会話が丸漏れだった。お隣の夫婦らしき住人は、夜寝る頃になるとケンカをし出す。兄が壁を蹴るとしばらくはおとなしくなる。その間に寝てしまうと気にならないが、寝られないと結構いつまでもケンカをしていた。
 兄が仕事から帰ってくると、まず銭湯に行こうという事になる。歩いて10分くらいのところに小さな銭湯があった。労働者風のおじさんたちが入れ代わり立ち代わり入っていく。なかなかの盛況という風で、ちょっと怖い感じだった。
 ここでまた驚いたことに、シャンプー代が別だったことだ。兄はちゃんとシャンプーと石鹸を持ってきていて、それで歩く時にカタカタと音がしていた。まるで流行歌の神田川だが、そういう事だったのか、と驚いたわけだ。それにしても大阪というところはセコイものだな、と思ったし、シャンプー代を払わなくても、一人300円近い値段だったように思う。当然兄が料金を払うのだが、なんとなく散財させているような気分になって、申し訳なかった。ふだんはそんなにゆっくり風呂などつからないが、もったいないので出来るだけゆっくりしようとも思った。しかし怖いおじさんや兄さんたちがザブザブ入ってくるので、気分的には怯えていた。風呂の中ではあまり会話をする人は無くて、黙々と風呂を使っているという感じだった。脱衣場には刺青お断りと書いてあったのに、刺青をしているお兄さんもいた。恐ろしい世界だなあ、と思った。
 脱衣場も狭いもので、着替えるとすぐにでなければならないという雰囲気だった。コーヒー牛乳は売っていたと思うが、そういうのをごくごくする気分にはなれなかった。兄が着替え終わっていることに気づいて、ちょっと慌てて服を着て外に出る。外に出るとずいぶんホッとしたものだ。
 駅の側のハンバーガーでも食おうかといわれてさらに歩いて、確かドムドムという店でハンバーガーを食べた。その間ずっと銭湯でのことを話していたように思う。たぶん兄もそんな銭湯を見せたかったのではなかったかと思う。怖い体験だったけれど、その怖い体験を話すのがものすごく盛り上がるのだった。
 翌日も行くことになるのだが、怖くて行きたくないような、また怖いもの見たさの楽しさがあるような、不思議な毎日の銭湯体験だった。おそらく今はもう無いだろうあの銭湯だけど、やっぱりもう一度行ってみたいものである。
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