カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

行先は良く選んで移動しよう   あなたになら言える秘密のこと

2017-08-02 | 映画

あなたになら言える秘密のこと/イザベル・コイシェ監督

 工場で働くハンナは、友人も無く孤独だ。耳が不自由なようで、うるさい工場でも耳栓がいらない。補聴器のスイッチを入れると、他人の話は聞き取れるようだが、時折そのスイッチを自ら切ってしまう。そのようにして工場で働いていたわけだが、何故か同僚から苦情があったようで、上司から長期休暇を取るように言われる。仕方なく休んで旅に出るが、石油の掘削工場で事故があり、現場で看護婦を必要とされているという話を聞いて、その仕事に休み中は就くことにする。彼女は元看護士だったのだ。仕事としては事故で大やけどを負った患者の看病。掘削現場は遠洋の基地のようなところで、ヘリコプターでしか移送が出来ない。大きな病院に移すまでの間、清拭をしたり薬を塗り替えたりする人が必要だったようだ。患者は事故の為目が見えず、饒舌でハンナのことをいろいろと知りたがる。しかしながら何か心にも傷を負っているようす。対するハンナも何か心の傷を抱えている。人里から隔離された海洋の掘削現場で、二人の過去が徐々に明かされることになっていく。
 ヌードがあるからという理由では無く、この映画では年齢制限が設けられたという。スペイン映画ながら米国の俳優が主で、全編英語だ。後半凄まじい告白がなされるが、なるほど、ヨーロッパの問題だったのか、とも感じる。戦争というのは現代でもあって、その傷は、若い人でさえ抱えている問題なのだ。
 静かな映画で、黙っている人が多いのだが、言葉が非常に重要な気もする。語らないのには訳があって、しかし人はいずれこのことを語らずにいられない。そうしてその言葉は、やはり通じる人に向けられなければならない。
 負傷の男の問題については、問題は問題にせよ、もう少し考えてもいいように思った。それに比べてハンナの問題は重たすぎる。若くて一生が完全に変わってしまう体験をしてしまうことに、恐れを覚えた。それでも自分で生きて行く逞しさもあって、不幸だが、楽しくも無いが、何かとても強いものを感じた。しかし何かに語らずにいられなくて、それでもまた悲しいのだった。生きて行くには注意が必要だ。若いころにはそれが分からない。本人に何の過失があった訳でもないが、戦争の残酷さとは、そういうものなのだ。
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