ザ・ハント/グレイグ・ゾベル監督
何か金持ちの娯楽として、生身の人間を狩の対象として殺すゲームがあるという設定である。いろいろと罠があって、多くのターゲットは、無残に狩られて殺される運命にある。ところがこの獲物の中に、特に優れた戦闘能力を持つ女性が紛れていた。彼女は疑い深く、罠にはハマらない。サバイバルし続けて、ついにはこのハンディングの首謀者まで上り詰めて、対決するに至るのである。
という設定のあらすじはあるものの、そのシンプルな筋道だけでない様々仕掛けがあるわけで、なかなかの娯楽アクションになっている。だいたいのタネが分かるようになっても、その先にある伏線なのかミステリなのか、そういうものが地雷のように眠っている。主人公はだから、まるで名探偵さながらに、そういった謎も解いていきながら、サバイバルしていくのである。いくら何でも、という気分はないではないが、なかなか凄いので面白さに引っ張られて、それでいいような気分にはなる。でもまあそうでないと、これらの設定は収斂されないので、これでいいのである。
基本は金持ちの道楽には、命のかかったサスペンスのある狩の本能がある、ということなのかもしれない。現代社会では、それは野蛮すぎて表に出すことはできない。しかしそういう要望に応える、ビジネスが存在するとしたらどうか。どのみち社会の外れものを選択して、始末するだけのことである。相手にも武器を与え、うまく逃げおうせたら、自由を手にすることができるかもしれない。いや、実際のところそんなことになると問題なので、絶対的に有利な条件のもとで、狩は行われる訳であるが……。逆に言うと、そういう絶対的に不利な条件であろうとも、ちゃんとした戦闘能力と、賢い頭の持ち主であるならば、状況は打開することができる。それは一種のアメリカン・サクセスの姿でもあるのかもしれない。
まあ、そんな深読みなど必要のないアクション娯楽作である。何にも考えずに、人殺しショーを楽しめばいいのである。