カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

映画作るのは面白い?   キツツキと雨

2022-02-01 | 映画

キツツキと雨/沖田修一監督

 山村にゾンビ映画を作るために撮影隊がやって来ている。ひょんなことからかかわりを持った林業の男が、これに興味をもって映画作りの裏方のようなお手伝いをするようになり、新人でまだ自信のない映画監督を助けることにより、いろいろと映画作りそのものに化学反応が起こり、現場が変わっていくことになるのだった。
 これじゃあ分からんよな、という映画クルーの常識と、村の人々の懸け橋になる男の情熱のようなものの行き過ぎる感じが、なんとなくのおかしみを醸し出している。この映画はコメディなのだと思うのだが、そういう都会人と田舎の人々のすれ違いギャップを基本的には楽しむものなのかもしれない。科白などの説明は過多にならず、それなりにうまい見せ方をしている。ただし都会人の常識らしきものは、何かやはり自分本位すぎる感じがあって、別段田舎の人間でなくとも、理解できないのではないか、と思ったりした。自分が田舎者すぎるので、こんな田舎の人なんていないよ、という思いもあるのかもしれない。さらに山の中の集落なのに、それなりに衣食住満ち足りていているように見えて、本当にさびれている田舎というものにあんまり見えない。しかし会社関係であるとかご近所の組織の問題であるとか後継者の問題なんかは、面白く描けてはいたが。
 確かに説明してしまうと、面白くはないのである。その場面において困ったことが起こるのだが、それを言葉でなく乗り切ることになる。勘違いしていたりされていたりすることも、どうも説明すると長くなるし面倒なのでやめておく。そのまま話が進んで、誤解のままだから成り立つ話もあるのだ。誤解は解けるが、しかしその立場がそんなに変わるものでは無かったりする。そういうところがもっとも面白いところなのかもしれない。
 そうして映画はちょっとした奇蹟的なものに恵まれる。本当の映画の現場がどんなものかは知らないが、ひょっとすると本当の撮影においても、このようなことが起こったりするのが、映画自体の面白さを支えているのではあるまいか。そうして作る側は、映画にとりつかれていくのではあるまいか。
 そういうことをつい考えてしまうような、映画好きのための映画かもしれない。
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