ブルックリン/ジョン・クローリー監督
50年代、アイルランドの片田舎でろくな仕事も無く辛抱しながら暮らしている女性が、姉の援助を受けてニューヨークへ旅立つ。しかしながら慣れない暮らしにホームシックになり苦しむ。心配した神父さんが学費を出してくれて、夜学で簿記を習う。同時期にイタリア移民の男性と知り合い恋に落ちる。新たなしあわせを掴んだと思われたところに、遠い故郷で姉が急死してしまったという知らせを受けるのだった。
どうもブルックリンはアイルランド人移民の多い街らしく、そのようなコミュニティを頼って移住する一定の人々がいるようだ。そういう中でのアイルランド女性の、真のしあわせというものを考える映画なのかもしれない。大変に優れた映画であるとまず思うし、観ていてものすごく楽しい(悲しいもあるが)。若い人の恋愛って、観ているだけで本当に楽しいのである。さらにまじめでおとなしい女性が、恋に落ちて楽しくなるのを見て、楽しくならないわけが無い。
主演のシアーシャ・ローナンの魅力も素晴らしい。僕は西洋の女優さんにはあんまり興味ない方だと思うが(日本人の方が断然きれいだと思うし、僕が日本人だから当然身近な東洋人の方が魅力的だ)、この人の可憐で美しい感じは、ちょっと特殊な感覚があった。おとなしいが芯も強く、賢そうなのだ。まったく顔立ちは日本人とは違うが、日本的な美的センスではなかろうか。
しかしながら、これはたいへんに考えさせられる映画でもあると思う。このストーリーで本当にいいのだろうか? いや、そういう話があってダメだというわけではない。この映画は基本的に、女性が自分のしあわせの為に、男性を二股かけて選択する物語なのだ。そうして実は、どちらとも本当に好きであることには変わりなく、その恋の強さよりも、自分にとっての環境を優先させた結果が、人生を決めるというものなのだ。
この結末の方が僕は好きだが、賛否があろうと思う。倫理観としてはどうなのか。また、本当に賢い選択なのかどうかも、背景からは疑問も漏れそうだ。しかしながら、女としては(女としてだけではないですね、すいません)一人の人と結婚するよりないのだから、ものすごい決意の表れでもあるのだけれど。
まあ、面白いので観て考えてみてください。おそらく僕は男だから(さらに個人的な経験値もあるかもしれない)、このような感想になってしまったけれど、女の人には必然的な映画かもしれないです。そういうところが、男が女性を恐れる最大のところだとは思いますけどね。