An Education - Carey Mulligan - International Movie Trailer
17歳の肖像/ロネ・シェルフィグ監督
出会いから見事である。雨にぬれる女高生を気遣い彼女の持っているチェロが濡れてはいけないと声を掛け車に積み込む。彼女もすくには車に乗らず並走して歩きながら会話を交わす。純潔な女高生であることが見事に描かれているわけだ。そのことをきっかけに彼女の演奏会の折に花を贈り、後にプロのコンサートに誘い出す。しかしながら彼女の家庭も年頃の娘をそう易々と外出させるわけにはいかない。そうではあるが一歩もひるまず、魔法のように家族ともども口説き落としていくのである。この謎のリッチな青年とのめくるめくひとときが楽しくない訳がない。観ている方は危うく危険な匂いを嗅いでいるが、彼女にその嗅覚が無くて咎められるものではなかろう。事実彼女は人生の幸せの絶頂なのだから。
元題はan educationである。教育というとかえって謎めいているようだが、実は確かにそれは教育の姿を描いた映画であることが良く分かる。物語は実は教育の勝利を描いている訳だが、それは観てのお楽しみである。すべてを失った若い女性が、未来のすべてを教育によって勝ち取るのである。それはもう一つの教師の敗北と復活の物語でもある。強烈に苦い恋愛の経験が、教育によって再生されるというのは、まさに教師にとって必見の映画なのではなかろうか。もちろん子を持つ親にとっても。
観終わるまで楽しい、そして洗練された恋愛映画のような流れに翻弄されてしまう訳だが(実際そういう映画だし)、最後にはいつの間にか爆発的に啓蒙されてしまうのである。まったく実に見事だ。そして、ああ、僕らは若い時に勉強しなければならなかったのだと気付く。これは子供の教育のために見せておくことも必要なのかもしれない。
若くてリッチなことは世界を征服する上で実にその通りなのかもしれないとは思う。そして、その経験ほど楽しく素晴らしいものはないだろう。しかし、本当に自分自身で世界を手に入れる方法は、教育によってしかありえないのだ。教師はその為に子供に教育を施している。親もその為に子供が勉強をすることを強要する。しかし当の本人に勉強の将来的な意義などということは理解できようはずもない。大人も明確に説明する言葉を持たない。彼女は幸福にも(しかしそれは実際には地獄だろうが)目覚める機会を与えられたのだ。
この映画を観て、そのようなメッセージを受ける人はあんがい少ないのかもしれないが(だから邦題がこうなってしまったのだろう)、この映画の原題の意味は、つまりそういうことだと僕は思う。図らずも悪い男(しかし彼も素直に恋に落ちたのだろうが)からその真髄を悟らされてしまう。人生でこのような体験を誰もがするわけにはいかないのだが、誰もがうまく説明できなかったつらい勉強の意味が、これほど見事に描かれている映画というものを僕はこれまで知らなかった。いまさら大学に行きなおそうとは思わないまでも、自分の自由のために勉学に励むのは、今からでも遅くはないのかもしれない。
17歳の肖像/ロネ・シェルフィグ監督
出会いから見事である。雨にぬれる女高生を気遣い彼女の持っているチェロが濡れてはいけないと声を掛け車に積み込む。彼女もすくには車に乗らず並走して歩きながら会話を交わす。純潔な女高生であることが見事に描かれているわけだ。そのことをきっかけに彼女の演奏会の折に花を贈り、後にプロのコンサートに誘い出す。しかしながら彼女の家庭も年頃の娘をそう易々と外出させるわけにはいかない。そうではあるが一歩もひるまず、魔法のように家族ともども口説き落としていくのである。この謎のリッチな青年とのめくるめくひとときが楽しくない訳がない。観ている方は危うく危険な匂いを嗅いでいるが、彼女にその嗅覚が無くて咎められるものではなかろう。事実彼女は人生の幸せの絶頂なのだから。
元題はan educationである。教育というとかえって謎めいているようだが、実は確かにそれは教育の姿を描いた映画であることが良く分かる。物語は実は教育の勝利を描いている訳だが、それは観てのお楽しみである。すべてを失った若い女性が、未来のすべてを教育によって勝ち取るのである。それはもう一つの教師の敗北と復活の物語でもある。強烈に苦い恋愛の経験が、教育によって再生されるというのは、まさに教師にとって必見の映画なのではなかろうか。もちろん子を持つ親にとっても。
観終わるまで楽しい、そして洗練された恋愛映画のような流れに翻弄されてしまう訳だが(実際そういう映画だし)、最後にはいつの間にか爆発的に啓蒙されてしまうのである。まったく実に見事だ。そして、ああ、僕らは若い時に勉強しなければならなかったのだと気付く。これは子供の教育のために見せておくことも必要なのかもしれない。
若くてリッチなことは世界を征服する上で実にその通りなのかもしれないとは思う。そして、その経験ほど楽しく素晴らしいものはないだろう。しかし、本当に自分自身で世界を手に入れる方法は、教育によってしかありえないのだ。教師はその為に子供に教育を施している。親もその為に子供が勉強をすることを強要する。しかし当の本人に勉強の将来的な意義などということは理解できようはずもない。大人も明確に説明する言葉を持たない。彼女は幸福にも(しかしそれは実際には地獄だろうが)目覚める機会を与えられたのだ。
この映画を観て、そのようなメッセージを受ける人はあんがい少ないのかもしれないが(だから邦題がこうなってしまったのだろう)、この映画の原題の意味は、つまりそういうことだと僕は思う。図らずも悪い男(しかし彼も素直に恋に落ちたのだろうが)からその真髄を悟らされてしまう。人生でこのような体験を誰もがするわけにはいかないのだが、誰もがうまく説明できなかったつらい勉強の意味が、これほど見事に描かれている映画というものを僕はこれまで知らなかった。いまさら大学に行きなおそうとは思わないまでも、自分の自由のために勉学に励むのは、今からでも遅くはないのかもしれない。