ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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旅客船沈没事故が韓国・朴政権を揺るがす

2014-04-30 09:30:14 | 国際関係
 4月16日韓国全羅南道の珍島沖合で、旅客船「セウォル号」が事故により沈没した。事故の犠牲者は死者・行方不明者合わせて300名以上となった。事故発生より2週間が経過するなか、懸命な捜索が続けられている。犠牲になった方々及び遺族の方々に、お悔やみを申し上げるとともに、行方不明者の一日も早い救出をお祈りする。
 この旅客船沈没事故で、韓国の警察・検察の合同捜査本部は、これまでにイ・ジュンソク船長や事故当時に操船していた3等女性航海士、船の航行に直接かかわる乗組員11人を逮捕した。彼らは、乗客を見捨てて、自分は沈みゆく船から逃げ出したというから、あきれるほかはない。乗客救助という職業的な義務の意識がないだけでなく、極めて利己的な行動をとったものであり、私はその背景に現在の韓国社会の病理の存在を感じる。
 なかでも、経歴の浅い3等航海士に操縦業務を任せ、いち早く沈没現場から逃げたイ船長の無責任さには、非難が集まっている。救助の際、船長は自ら船長であることを名乗っていなかったという。検察は、最高刑が無期懲役の特定犯罪加重処罰法(船舶事故逃走罪)を適用した。
 イ船長の10年前の発言が、波紋を広げている。それは、2004年元旦付の韓国・済州島の新聞のインタビュー記事である。その中でイ船長は「初めて乗った船が沖縄近海で転覆し、自衛隊がヘリコプターで救助してくれた。あの時、救助されなかったら、今の私はなかった」と語った。そのうえ、先のインタビューでは、台風など危険な時について、「人とはずる賢い。だが、危機を乗り越えればそんな思いは消える。それで私は今日まで船に乗っている」と語っていたという。遺族の怒りは収らないだろう。
 沈没原因については、第1に、高速航行中の急な針路変更にあることが挙げられる。セウォル号は沈没直前に、ほぼ全速の19ノット(時速約35キロ)で、右に90度急旋回しているという。 第2に、現場は韓国でも有数の潮流の速い海域だが、その難所を経験1年余りという3等航海士が操船していた。未熟な操船技術が急旋回に至ったと見られる。
 第3に、船会社は日本から中古の船を購入した後、収容人員を増やすために5階部分を追加する形で改造していた。貨物や旅客が高層階に収容されることで航行中の船体の重心が変わり、航行が不安定になっ模様である。
 これらに加えて、救助訓練をしていなかったこと、規定の3倍もの過積載だったこと、コンテナをチェーンでなくロ-プで縛っていたこと、操舵装置に異常があったこと等が報じられている。これらいくつもの複合的な要因によって、韓国史上最悪の沈没事故が引き起こされた可能性が高い。
 事故発生後、わが国は、すみやかに韓国政府に捜索支援を申し出た。海上自衛隊の掃海艇やダイバーなどを派遣する準備を進めていた。だが、韓国政府はこの申し出を拒否したと伝えられる。朴槿恵(パク・クネ)大統領が先頭に立って反日的な言動をエスカレートさせている今の韓国では、たとえ多数の国民の生命が危険にさらされている状況であっても、日本の手は借りたくないということだろうか。 
 今回の旅客船沈没事故は、社会の安全重視を掲げている朴政権に打撃を与えていると伝えられる。事故に関する韓国政府関係者の不適切な言動や事故状況の把握をめぐる不手際、発表内容の相次ぐ訂正等も、国民の不信を買っている。
 韓国各紙は「韓国は『三流国家』だった」「国民が不信の烙印(らくいん)を押した“じたばた政府”」などの見出しを掲げた記事を相次いで掲載し、政権の対応を批判している。朝鮮日報は、「国民は政府関係者の事故対応能力がいかに低レベルかを改めて知った」と書き、朴政権が日本の総務省に近い役割とされる「行政安全省」を国民の安全が最優先との方針から「安全行政省」に変更したにもかかわらず、「このざまだ」と批判したと伝えられる。
 最も驚くべきことは、事故が起こって船が沈没しつつあるときに、「全員が救助された」という報道が複数のテレビ局のニュースで流れたことである。そのため、救助の現場は混乱し、救助に重大な支障が出た。激しく傷ついたのは、遭難者の家族だった。全員救助と伝えられて歓喜し、安どしていたところに、実際は全く違っていたのだから、衝撃のほどは計り知れない。
 韓国史上最大の海難事故で、これまで反日政策で6割台を維持してきた朴政権の支持率が急落している。27日韓国ナンバー2の鄭●(=火へんに共)原首相が、緊急記者会見し、事故への政府の対応に問題があったとして、責任を取って辞職する意向を表明した。朴大統領は慰留している。大統領は事故後、約2週間たって初めて謝罪の意を表した。だが、国民の多くは納得していない。今後、朴政権が政権への信頼を回復できるのか、政権がさらに大きく揺らぐことになるのかは、国家最高責任者である朴大統領自身の対応によるだろう。
 韓国に必要なことは、他の国の過去の事柄をあげつらって責めたてることではなく、自国の実態を謙虚に見つめ、国民の道徳心を立て直し、基本的な順法精神を養うことだろう。

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