若者向けの典型的な青春ストーリかなぁ。
それにしてもなんだか回りくどい言い回しを使っていて
読み進めるの、何だか面倒くせぇなぁ、と初めは思っていた。
・・・が、その「回りくどい言い回し」が
実は綿密に計算されたものであって
物語が後半に進んでいくにつれて文体そのものも変わってくる。
これは単なる青春ラブストーリーではなく
人間の存在意義を問うテーマとなっていることに気づいた時には
すでに(齢60近くでありながら)高校生たちの物語に
いつか入り込んでしまっていた。
「生きるってのはね」
「・・・・・・・・・・」
「きっと誰かと心を通わせること。
そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」
「私の心があるのは、皆がいるから、
私の体があるのは、皆が触ってくれるから。
そうして形成された私は、今、生きてる」
でも人が生きるということは、結局ひとり。
自分というものを長い時間かけて会得していく。
(この歳だから言うけど、本当に長い時間がかかる)
周囲にどんなに親しい人たちがいるとしても
生まれるのも、死んでいくのもひとりだ。
「周りがいて自分が存在」し、「でも自分は結局ひとり」
個人と社会という、古今東西哲学者たちに考えられてきた概念を
この1冊の青春物語は内包している。
住野さんのこの作品は(自分的には)
よくある「泣ける小説」ではなく「考える小説」だと思った。
「君の膵臓をたべたい」住野よる:著 双葉社文庫