因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

aki nagatani & danscapes『俺にもセックスを』

2009-03-15 | 舞台
*永谷亜紀構成・振付・演出 公式サイトはこちら こまばアゴラ劇場 8日で終了
 ものすごいタイトルなので、いささか構えて劇場に向かう。いつもの向きとは違って、入って右側に舞台があり、左側に細長く客席がある形だ。舞台下手に白く大きなドアのようなものがあり、下手にはこれも白い階段がある。当日リーフレットには小さな文字で「日々の中に紛れている微かな温もりを、すべて、セックスとよびたい」と書かれており、4人の登場人物について短く記されているのみで、まるで詩を読んでいるような印象だ。静まり返って開演を待つ客席。これから何が始まるのか。
 これはいわゆる台詞劇ではなく、かといってダンスでもない。4人の登場人物にはごくシンプルな背景や役割があるが、特に物語性があるわけではなく、喪服を着た男が等身大のフィギュアを買い、自宅でそれと戯れる様子、喪服男とホームレス男が絡む箇所、火葬の途中でやり残したことが気になって、こちら側へ戻って来た白襦袢の女それぞれが、息を呑むほど柔軟で研ぎすまされた身体の動きをひたすらに続ける。これがどう続くのか、いつ終わるのか、まったく読めない。茫然とみつめるだけだったが、いつのまにか陶酔すら覚えるようになっていく。割れるような拍手喝采というわけではないが、カーテンコールの拍手が少々長く続き、俳優はもう一度舞台に登場した。みたことをすべて理解できなかったのに、なぜか拍手がやめられなかった。

 自分の好きな分野がある一方で、どうしても無理なものもある。ダンスパフォーマンス系は特に苦手分野なのに、不思議な夢のような時間が過ごせた。あの吸い寄せられるような感覚は何だろう?自分はどんなものが好きなのか、時々わからなくなる。こまばアゴラではそういう不安定な体験をする機会が多く、確かな手応えを求める気持ちの一方で、今夜のように説明のつかない曖昧な心持ちを大事にしておきたいと思う。
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