因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

最終回『ちりとてちん』

2008-03-29 | テレビドラマ
 とうとう今日で最終回になってしまった。半年間欠かさずみた朝ドラは、たぶん『ふたりっ子』以来であろう(1,2,3,4,5,6,7)。
 10月から今日までとても楽しんだのだが、残念なことに不完全燃焼感が残った。悲願の常打ち小屋オープンから喜代美の出産までがあまりに駆け足だったこと、喜代美が落語家として事実上引退し、家族と一門の母親役に徹することを決意したのはさておき、その先どんな生き方をしたかが描かれず、無事出産したところで終わってしまっていることである。さらに魚屋食堂の双子ちゃんの将来や、A子と小草若(四代目草若!)のいい感じなどの相当年数にわたる大量情報が上沼恵美子によって滔々と語られる。なのに今日生まれた子供が男の子か女の子かも明かされない。これは続きがある、続編が『ちりとてちん2』がありますよという含みなのだろうか?

 いろいろなことを考え、書きたいこともたくさんあった。ドラマ評を継続して書くのがひとつの目標だったが、充分にできなかったことが残念である。覚え書きとして以下少し。機会があれば、またドラマ連続批評に挑戦いたします。

1,『ちりとてちん』の登場人物の中で底抜けに!大当たりだったのが徒然亭草若師匠の渡瀬恒彦であった。この人の優しい言葉や表情にどれだけ慰められたことだろう。師匠に褒められたい、喜んでもらいたいと精進する弟子たちの気持ちがよくわかる。こんな人が職場や学校や町内にいてくれたら。
2,「ようこそのお運びで、厚く御礼申し上げます」毎週月曜日の冒頭、上沼恵美子の語りを聞くたびに「ああ、これから一週間、新しい『ちりとてちん』が始まるんだ」と嬉しくなったものだ。始まる前は「きっとコテコテの語りになるのでは」と懸念したが、控えめで温かな口調が大好きになった。ヒロインが自分のことを回想する構成になっており、失敗ばかりしている喜代美が、分別のある落ち着いた女性に成長したことを思わせる。物語に寄り添いすぎず、視聴者にもべたべたしない、どちらにもほどよい距離をもった語り。お見事であった。
3,ヒロイン喜代美を演じる貫地谷しほりには、いささか複雑な思いがある。びっくりするところ、緊張してガチガチに固まってしまうところなどが達者すぎるというか、かえって鼻につくことがあって、どうしてかなぁ惜しいなぁと思うのである。その一方で嫉妬するとき、僻んでしまうとき、自己嫌悪にまみれるとき、貫地谷しほりはぞくぞくするほど魅力的な表情をみせる。たとえば彼女が遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』の森田ミツを、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』のソーニャを演じたら、と想像するのである。ちょっと可愛すぎるかしら。

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