因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

あひるなんちゃら『フェブリー』

2009-02-10 | 舞台
*関村俊介脚本・演出 公式サイトはこちら サンモールスタジオ 11日まで
 帰省あるいは上京の新幹線で、隣の席の人となぜか話が弾んで打ち解けてしまうときがある。在来線を乗り継いで大宮から佐賀に向かう賑やかな母子4人連れであったり、技術系の仕事とお見受けする穏やかなおじさまであったり。お互いあまり立ち入ったことは話さないが、偶然隣り合わせたことをほんとうに幸運と思える数時間が過ごせるときがあるのである。ドラマではないので後日再会することもなく、あのときあの場所だけのことに留まっているが、それだけに今でも大切な思い出である。
 今回が初見のあひるなんちゃら『フェブリー』は、東京へ向かうフェリーに乗り合わせた人々の様子を描いた70分の舞台である。
 一人客もあればグループもある。行きの人帰りの人、目的もさまざまだ。普通のテレビドラマなら、知らないもの同士が会話を始めるきっかけは、どちらかが多少強引だったり不躾だったりあるにせよ、それなりに納得できるし想像できる範囲なのだが、『フェブリー』の場合、スノハラ(根津茂尚)以外は相当にへんてこりんな人々ばかりである。まったく面識のない人々のやりとりがゆるゆるとりとめもなく続いているようで、気がつけばだんだんとぜんたいがつながっていく。かといって劇作家の台詞術や設定の巧みであることが際立つようにも感じられず、いやそうと感じさせないところが実はすごいのではないだろうか。

 パラドックス定数の小野ゆたか、乞局の墨井鯨子など、所属劇団の公演からは想像もつかない伸び伸びした姿も楽しく、ほっと一息つけるよい一夜となった。あの人物のあの台詞、表情などいろいろな場面を思い出すと今でもおかしくてならない。愛してるよ、究極のカカオ、ディズニーランド。わかるのは『フェブリー』をみた人だけであろう。あの楽しさを家族や友達と共有したいと思いながら、ひとり占めにしていたいような微妙な心持ちなのである。
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