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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

くちびるの会第4弾 『ケムリ少年、挿し絵の怪人』

2016-06-04 | 舞台

*山本タカ作・演出 公式サイトはこちら 吉祥寺シアター 7日まで 
 大学時代に旗揚げした「声を出すと気持ちいいの会」(1,2,3,4,5,6,7,8,9)を経て、新ユニット・くちびるの会公演(1,2,3)第4弾にして、吉祥寺シアターに進出したことをまずは喜びたい。 
 本作は江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」がベースになっており、公演チラシのデザインからもノスタルジックななかに、禍々しく危うい空気が伝わってくる。

 「はっぴーろーど泥沼」という名の町を舞台に、少年コバヤシ(小林少年、ではないのだ。しかもカタカナ)、親友のしんぺい君をはじめ、町の子どもたち、小林を慕う文房具屋の娘チヨコ。チヨコの両親や豆腐屋のあるじ、警官や明智小五郎、怪人二十面相など、コバヤシとしんぺい君以外の俳優は、大人と子どもを二役で演じ継ぐ。世の中の動きから取り残されたようにさびれた町で、大人たちの様子はどこか生々しく、唐十郎の作品世界を思わせる。吉祥寺シアターのステージを高さ、横幅、奥行きも大胆に思い切り使って、のびのびと作られた舞台である。

 今回とくに目を引いたのは、コバヤシ役のコロと、ケムリ役の傳川光留である。コロが男性の役を演じるのは以前にも見たことがあるが、 傳川のケムリの演技については、このように動きを見た記憶があるかと必死で過去を振り返ってしまうくらいみごとであった。羽のように軽やかに飛び、床を滑る。かなり細かに作りこんである舞台美術だが、まったく意に介さない。障害物をよけるのではなく、劇作家に言わせると、舞台美術や装置と「仲良くなれる」という俳優とのこと。もともとの適性に加え、想像できないほどのトレーニングを積み、からだを鍛えているのだろう。彼の動きをみるだけでも、本作一見の価値ありである。

 物語の筋や起承転結、人物の相関関係は正直なところきちんと理解できず、まさにケムリにまかれたような110分であった。吉祥寺シアターに進出することを知ったとき、「ずいぶん大きな劇場でやるのだな」と思ったが、まったくの杞憂であった。今回の作品であれば、劇場の広さを選ばず、たとえば野外ステージやテントでも上演は可能では?

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