因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

☆ネットで観劇 第18回明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)特別公演『ロメオ、エンド、ジュリエット』

2021-11-17 | 舞台番外編
*ウィリアム・シェイクスピア原作 テキスト/1886年(明治19年)河島敬蔵『春情浮世の夢』、1904年(明治37年)小山内薫脚色 日本橋真砂座上演 西村俊彦演出 井上優構成 配信URLはこちら 11月13日生配信(1,2,3,4,5,6,7) 

 本作は大学創立140周年記念の特別公演として、10月に群馬県と宮城県での上演が企画されていたものである。コロナウイルス感染拡大の影響で中止を余儀なくされたが、MSPの本拠地アカデミーホールで無料生配信としてお披露目された。配役も上演台本も本編とは異なるのが見どころで、今から135年前(明治大学創立してまだ5年!)、日本で最初に上演された『ロミオとジュリエット』をMSPコーディネーターである井上優文学部教授が構成し、MSP出身の俳優・ナレーターの西村俊彦が演出をつとめる。

 2019年5月のMSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン(MSP卒業生によるユニット)による「読上歌舞伎」と銘打った『何櫻彼櫻銭世中』(さくらどきぜにのよのなか)、昨年の第1回MSPラボ公演『ロメオ、エンド、ジュリエット』の実績を以ての上演であり、配信当日は本編の上演が昼夜2回行われ、(おそらく)その熱気冷めやらぬ中でのステージであったことだろう。以下明治+令和融合型の『ロメオ、エンド、ジュリエット』視聴の記録である。

 舞台装置はほぼそのままに、ステージにはデスクと椅子、衣裳掛けなどが置かれている。三々五々やってくる俳優たちは談笑したり発声練習をしたり、床を掃除するスタッフもいる。上演前の劇場の風景の描写がしばし続いて(いささか長い)、出演者が整列して居住まいを正し、中央の俳優が手で合図すると拍子木が鳴って開演となる。

 ごく数人を除いて、俳優たちは二役以上を兼ねて演じながら、上手のデスクあたりで台本のト書きを読む。ト書きというより地の文に近いもので、台本を持たず、演じながら読むところもあり、リーディングと本式の上演の形式が入り混じりながら進行する様相はメリハリがあって面白い。ト書きを読む俳優の声が、しばしば画面外から聞こえるのが残念な場面もあり、これは配信公演ゆえ致し方ない点であろう。

 ロメオは銀色の髪の女子が演じており、宝塚歌劇団の男役というよりStudio Lifeの俳優と見まごうほどの美形である。本編でも性の異なる配役がなされていたが、特別編も俳優のそれぞれの個性が重要視されているのだろう。その証拠に人物の「中の人」が男か女かということが、次第に気にならなくなる。さらにト書きの文語体すら心地よく、いちばん古い言葉による「ロミジュリ」が、もっとも新鮮な響きを以て画面から迫ってくるのだ。井上教授のパンフレット寄稿にあるように、「コンパクトでポータブル」な舞台の可能性があり、今後も何らかの形で、明大から外に飛び出して、新たなる創作に繋がっていくことを願っている。
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