goo blog サービス終了のお知らせ 

因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『ブラックバード』

2009-07-21 | 舞台
*デビッド・ハロワー作 小田島恒志訳 栗山民也演出 公式サイトはこちら 世田谷パブリックシアター 8月9日まで その後富山、名古屋、北九州、大阪を巡演

 黒を基調とした背景で周りには何もなく、意味ありげに寄り添う男女。『ブラックバード』の公演チラシやポスターは「これはいったいどんな作品か?」「ブラックバードとは何かの象徴か?」と見る者を惹きつける強烈な力を持つ。掲載されているストーリーを読むと尚更だ。初日が開けて間もない劇場は、開演前の賑々しさよりも張りつめたものが漂い、恐れにも似た期待が高まる。
 オフィスの休憩室だろうか、テーブルや椅子、ごみ箱にロッカー、床にはごみが散乱して、蛍光灯の明かりがそれらを皓々と照らしている。自分はまずここで躓いた。想像していたのと随分違う。では何を想像していたのかというと、これが明確に言えないのだが少なくとももっと抽象的か、あるいはほとんど何もない空間を考えていたのである。この具体的なモノのあっけないこと、無機的で観客の思惑を拒否するかのような冷たさは何だろうか?

 この違和感はとうとう最後までなくならず、疑問や戸惑いの多く残る観劇となった。謎は必ずしもすべて解明されなくてもよいし、結論をみる者に委ねることも構わないと思う。しかし今回の舞台は物語じたいより、作り方、舞台美術に対する困惑が強過ぎて正直なところ拍子抜けしてしまったのだ。期待しすぎてすべるのは自分の悪い癖であるが、実際のところ、あの舞台美術にはどんな演出意図があったのだろうか?

 本作の捉え方がわからない。「悲劇喜劇8月号」に戯曲が掲載されている。ひとまずは戯曲に戻ろう。

 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« JACROW#12『明けない夜』 | トップ | 劇団フライングステージ第34... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事