語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】上司と部下の危険な関係 ~交渉術~

2018年01月10日 | ●佐藤優
 (1)一般の官庁や企業では、上司は部下に命令する。
 しかし、インテリジェンス機関では、上司は部下に「お願い」する。違法行為や身辺に危険がおよぶような任務の場合、実際に工作に従事する者が納得したうえで任務に就かないと、必ず失敗するからである。

 (2)インテリジェンス機関には、文民型と軍隊型がある。前者の代表にCIA、SIS(いわゆるMI6)、モサドがあり、後者の代表にSVR(露対外諜報庁)がある。一般的にいって、後者のほうが組織規律が厳しい。
 現在隠退しているが、イスラエル諜報史にのこる活躍をしたサムソン(仮名)がいた。あるとき、サムソンが佐藤に納得できない「お願い」を引き受けた体験を語った。
 イスラエルには、建国以来独特の地政学的戦略がある。周囲を敵意あるアラブ諸国に囲まれているので、その外部のトルコとイランと提携をすすめるという戦略だ。1979年のイラン革命までは、イランはイスラエルにとって、事実上の最重要同盟国だった。イランの秘密警察サバックは、イスラエルの梃子入りで設置された。
 サムソンは、あるとき上司からちょっとメシでも食いにいかないか、と誘われ、いつもランチを食べる店よりはずっと高い店でおごってくれた。支払いも組織につけまわさず、自腹を切った。
 「じつは、ちょっと聞いてほしい話があるのだけれど。少し面倒な話で・・・・」
 トルコの地方に出張し、協力者と接触するべく命令されたのだ。その地方はイスラーム原理主義者の勢力が強いところで、サムソンは気乗りしなかった。理屈では説明できないが、何か無理があるという嫌な感じがした。しかし、最終的には引き受け、夫妻で観光を装い、出かけた。首尾よく任務をはたし、アンカラに戻る国内線に乗った。
 ところが、この飛行機がハイジャックされたのである。
 犯人が共産主義者なら数日でテルアビブに戻れる。しかし、イスラーム原理主義者ならば・・・・サムソンの背筋が冷たくなった。早晩身分はバレる。バレたら拷問を受けるのは必至だ。ことに夫人に対する拷問が予想された。もし、飛行機がイランに向かうことになれば、たった独りでも、ハイジャック犯と闘うしかない。
 「相手が一人ならば、多分、勝つことができる。相手が二人ならば、まず一人目の眼を潰してしまえば、勝つことができる。相手が集団ならば、諦めるしかない。しかし、最後の瞬間まで努力してみる必要があると思った」
 さいわい、飛行機はソ連との国境に近いトルコの小都市に緊急着陸した。ハイジャック犯は一人で、政治目的はなかった。

 (3)上司が自腹で食事をおごるのは、東郷和彦が佐藤優に難しい依頼をしてくるときの手法でもあった。

□佐藤優『交渉術』(文藝春秋、2009/後に文春文庫、2011)
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【佐藤優】地政学とは何か

2018年01月10日 | ●佐藤優
【佐藤優】トルキスタンの分割、変容する民族意識、ユーラシア主義の地政学
【佐藤優】地政学から見る第二次世界大戦前夜
【佐藤優】地政学とファシズムと難民
【佐藤優】最悪情勢分析 ~NPT体制の崩壊~」」

□佐藤優「第一講 地政学とは何か」(『現代の地政学』、晶文社、2016)
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【南雲つぐみ】調身、調息、調心 ~呼吸を整える効果~

2018年01月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 座禅や呼吸法、ヨガに「調身、調息、調心」という基本概念がある。調身とは姿勢を整えるということで、禅を組むときや、ヨガを行うときの基本となる。
 背筋を伸ばして、へそから5センチメートルほど下がった下腹部の奧にある「丹田(たんでん)」に意識を集中する。すると、次第に呼吸が整い、スムーズに深い息をすることが可能になる。
 座禅では、身、呼吸、心の三つのうち、一つが安らぎに満たされれば残りの二つも安らぐといわれる。正しい姿勢を取れば、筋肉や神経組織に余計な力が入らず鎮静する。さらに心と呼吸もその影響を受けて落ち着いてくるというわけだ。
 悩みや困り事があるときは、つい背中を丸めて、ロダンの彫像「考える人」のようなポーズになりがちだ。しかし、あの姿勢では肩や背中が凝るし、肺が圧迫されて深い呼吸ができない。むしろ、背筋を伸ばしたほうが、呼吸が落ち着いて、心の調整もしやすくなるのではないだろうか。

□南雲つぐみ(医学ライター)「調身、調息、調心 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月17日)を引用
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