語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~

2017年11月05日 | 批評・思想
★広原盛明、川島龍一、髙田富三、出口俊一『神戸百年の大計と未来』(晃洋書房 2,800円+税)

 復興災害を招いた神戸市行政を批判的に検証する力作は阪神・淡路大震災以後の三大プロジェクト検証から。【注】

(1)川島(医師/兵庫県医師会前会長)・・・・人工島の医療産業都市
 生体肝移植の相次ぐ失敗で破綻した神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)について神戸市官僚の責任を問い、市民病院を移転させてまで海外からの医療ツーリズムの拠点化を進める医療行政を「病院は市民のためのもの」と痛罵する。
 
(2)高田(元三井物産/現マンション管理士)・・・・反対運動の末に開港した神戸港
 市議会では出鱈目な需要予測などへの疑問も市幹部が「御心配していただかなくても結構」と根拠も示さず木で鼻をくくった答弁を繰りかえすだけだった。建設動機も「宮崎市長(辰雄・在任1969~89年)の最大のし残し(悲願)だったから作るレベル」と指摘。市官僚の自己満足だった。

(3)出口(元教員・兵庫県震災復興研究センター事務局長)・・・・長田区の再開発
 商店主らは「市民をだますようなことはしません」との市官僚の約束を信じ、39棟も林立した再開発ビルを買わされたが法外な管理費にあえぐ。長屋住まいの店主らを若い世代と入れ替えたい市が新居者にマンションを安く提供する分を負担させたことが透ける。

(4)広原(京都府立大学元学長)・・・・過剰な都市計画など
 戦後、二人の市長(原口忠次郎と宮崎)が計40年も市政を牛耳り、「世界一の貿易港を」と進めた過剰な都市計画などを分析。
 震災からわずか2ヵ月で再開発計画を発表した市の見込み違いの最たるものは人口予測。いまや福岡市にも抜かれた。市官僚の体に脈々と流れる「開発優先の血」が震災時、長田区についての助役発言「幸か不幸か燃えた」の源とわかる。

 【注】
【神戸】市、「同じ環境で再開」希望する店主らにつけ込む ~誰のための商店街再開発か~
【神戸】行政が「公平性」を盾に高齢者を訴え住居追い出し
【神戸】市営住宅を造らず新庁舎建設 ~被災住民の追い出し強行~
【神戸】希望の星から転落した神戸空港 ~埋立開発行政の破綻③~
【神戸】「医療産業都市」の躓きと暴走 ~埋立開発行政の破綻②~
【神戸】生体肝移植失敗の原因 ~埋立開発行政の破綻~
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(2)
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(1)
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~
【震災】復興のカギはパイプ役(住民の自主組織) ~神戸の過ち、奥尻の教訓~
書評:『神戸発 阪神大震災以後』
書評:『復興の闇・都市の非情 --阪神大震災、五年の軌跡』

□粟野仁雄(ジャーナリスト)「「自己満足」による過剰開発のツケ」(「週刊金曜日」 2017年10月13日号)
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