語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~

2018年01月26日 | ●佐藤優
 <ところが、ユダヤ教の時間概念を継承したキリスト教世界の欧米では、新しい年が来て新たにやり直すという感覚はない。時間には始まりがあって終わりがある、という連続的な考え方をする。すなわち、神がこの世界を創造したときに時間が生まれ、最後の審判で時間が終わる。極めて目的論的な時間概念だ。
 ギリシア語では「始まり」や「根源」を表すのがアルケー。「終わり」をテロスという。と同時にテロスには「完成」「目的」の意味もある。終わりというと、日本語では「終末」のようにネガティブなイメージがあるがそうではない。終わりは目的とセットである。受験勉強や資格試験などで上手に勉強できる人は、自分が合格したときの“絵”を思い浮かべている。終わりはいいことだからだ。
 受験に限らず、何かをするときに「終わりの絵」を描くことは目的論的に重要だ。誤解されやすいところだが、単純に(あるいは現実逃避的に)終末を思い浮かべるのではない。終わりから考えて、今現在を思い浮かべることに意味がある。
 目的論的に終わりを考えないと、うまくいかないことが多い。たとえば、日本のビジネスパーソンは異業種交流会が好きだが、終わりの回数を決めずにやっている。何回で解散というのを決めておかないと、いつのまにか“会”を維持することにエネルギーが注がれてしまう。1年間なら1年間と決めて、中間ゴールと最後を決め、何が達成できていればいいのかを具体的に書き出せばいい。

 日本人は得てして「一生懸命頑張っている」ことをよしとしてしまう傾向があり、組織の価値観にも埋め込まれている。終わりの絵も描かずに、いつも一生懸命だけを掲げて正月ごとに「今年こそは」と繰り返していても人生の「目的」や「完成」にはたどり着けない。多くの日本人がその中で消耗しているからこそ、終わりの絵を描き、そこから今現在を見て次につながる意味のある努力をすることで差がつくのだ。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』』 (SB新書、2018)の「第1章 負けない極意」の「「終わり」から発想する」の「「終わりの絵」を描く」を引用
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 【参考】
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~

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