<世間では、組織で生き残る力を養うべく、勉強会や資格取得が盛んに行われている。だが、そこで考えないといけないのは力をつけ、権力を持って戦略を実行できるようになることが本当に可能なのか、ということだ。
そもそも「力」とは資本力である。知恵だけが力の源泉なのではない。知恵と力の関係は次のような関数で表される。「総合力=知恵×力の二乗」というものだ。
力が倍の相手と戦うには倍の知恵ではなく、4倍の知恵がいる。大きな資本力を持っている相手には生半可な知恵の力では到底かなわない。トランプ大統領が優れた知恵の持ち主のようにはに見えないかもしれないが、それでも地球温暖化対策の推進を目指した枠組みであるパリ協定から離脱し、それを他国が止められずに、大きな非難もできないのは、それだけの力=資本力をアメリカがまだ持っているからである。
ビジネスの場面でも相手の「力」に知恵だけでは太刀打ちできないことがある。たとえば、海外の有名ブランドとライセンス契約を交わした日本企業が、必死の営業努力と販売網の構築でようやくそのブランドを日本国内で認知度を高め、収益の柱に育てることができたとする。
さあ、ここからこれまでの投資を回収しようというときに海外ブランドからライセンス契約を打ち切られるというケースだ。海外ブランド側としては、これまで何もせずともライセンス収入が入り、しかもブランド認知とブランド価値まであげてもらい、そのうえでこんどは自分たちの都合のいいようにブランド運営ができる。
ひさしを貸して母屋を取られるということわざがあるが、まさに相手のいいとこ取り。そうした不合理が可能になってしまうのも相手に「力」という資本があるからだ。
多くの人は知恵の力を過大評価している。資本力、経済力、腕力が強い相手に知恵や知力で勝つには、相手の持つ力の二乗で考えなければならない。
そこを勘違いするとひどい目に遭う。ホリエモンこと堀江貴文氏が一時期、メディアを買収し自らのロジックで圧倒的な資本力に勝とうとしたが、結果的に彼は私と同じように国策捜査の網にかけられ収監された。
ホリエモンの知恵と、彼が持っていた程度の資本力では経団連クラスの資本力とは戦えなかったのである。有り体にいえば、巨大な力にケンカを売って相手を本気で怒らせたということだ。
どのような世界にも、今あるものを変えたくないという「慣性の法則」が働いている。組織でも抵抗勢力となるのは、これまで成功を積み重ねてきた人たちだ。自分のやり方に自信を持っている。それは否定できるものではない。なぜなら、本質的な失敗をしていたとしたら、そこには存在していないからだ。
そこに存在しているということは、その人たちには何らかの存在価値があるということ。それを全否定して向かっいくと、資本力の差があれば叩き潰されるということをわかっておく必要がある。
□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「知恵の力を過信するな」の「総合力=知恵×力の二乗」を引用
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~」
そもそも「力」とは資本力である。知恵だけが力の源泉なのではない。知恵と力の関係は次のような関数で表される。「総合力=知恵×力の二乗」というものだ。
力が倍の相手と戦うには倍の知恵ではなく、4倍の知恵がいる。大きな資本力を持っている相手には生半可な知恵の力では到底かなわない。トランプ大統領が優れた知恵の持ち主のようにはに見えないかもしれないが、それでも地球温暖化対策の推進を目指した枠組みであるパリ協定から離脱し、それを他国が止められずに、大きな非難もできないのは、それだけの力=資本力をアメリカがまだ持っているからである。
ビジネスの場面でも相手の「力」に知恵だけでは太刀打ちできないことがある。たとえば、海外の有名ブランドとライセンス契約を交わした日本企業が、必死の営業努力と販売網の構築でようやくそのブランドを日本国内で認知度を高め、収益の柱に育てることができたとする。
さあ、ここからこれまでの投資を回収しようというときに海外ブランドからライセンス契約を打ち切られるというケースだ。海外ブランド側としては、これまで何もせずともライセンス収入が入り、しかもブランド認知とブランド価値まであげてもらい、そのうえでこんどは自分たちの都合のいいようにブランド運営ができる。
ひさしを貸して母屋を取られるということわざがあるが、まさに相手のいいとこ取り。そうした不合理が可能になってしまうのも相手に「力」という資本があるからだ。
多くの人は知恵の力を過大評価している。資本力、経済力、腕力が強い相手に知恵や知力で勝つには、相手の持つ力の二乗で考えなければならない。
そこを勘違いするとひどい目に遭う。ホリエモンこと堀江貴文氏が一時期、メディアを買収し自らのロジックで圧倒的な資本力に勝とうとしたが、結果的に彼は私と同じように国策捜査の網にかけられ収監された。
ホリエモンの知恵と、彼が持っていた程度の資本力では経団連クラスの資本力とは戦えなかったのである。有り体にいえば、巨大な力にケンカを売って相手を本気で怒らせたということだ。
どのような世界にも、今あるものを変えたくないという「慣性の法則」が働いている。組織でも抵抗勢力となるのは、これまで成功を積み重ねてきた人たちだ。自分のやり方に自信を持っている。それは否定できるものではない。なぜなら、本質的な失敗をしていたとしたら、そこには存在していないからだ。
そこに存在しているということは、その人たちには何らかの存在価値があるということ。それを全否定して向かっいくと、資本力の差があれば叩き潰されるということをわかっておく必要がある。
□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「知恵の力を過信するな」の「総合力=知恵×力の二乗」を引用
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【参考】
「【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~」