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ノート:イギリス文学史補遺

ノート:イギリス文学史補遺
(特に詩について)

視点:
先行する時代・作家・作品との関連
(他国・他言語のものも含む)
教訓・道徳の変遷(cf. ホラティウス)
感情表現の変遷(cf. ロンギノス)

I. 16世紀

宗教改革にともなう政治的・社会的・宗教的混乱
抑圧的な宮廷文化
抑圧的なキリスト教道徳
ピューリタンの出現(ここから「長いピューリタン革命」)
都市・宮廷と田舎の対立
- セネカ、ウェルギリウスから
- 実際に政治的に

1. ペトラルカのソネット
キリスト教的なものと異なる(・重なる)新しい恋愛描写
婚姻外の恋愛 <--> 恋愛 ≒ 宗教的崇拝
cf. モア『ユートピア』
間接的な個人的感情の表現(恋愛以外)
e.g. ワイアット:理不尽な宮廷のために働く者の苦悩

2. ローマ古典の翻訳・翻案
2.1. オウィディウス、『女神たち』、『変身』、『恋の歌』
個人的感情の表現(書簡体)
キリスト教道徳に対立する新しい恋愛描写(カルペ・ディエム:遊ぼうよ?)

2.2. ウェルギリウス、『アエネイス』
間接的な個人的感情の表現
e.g. サリー伯の2巻、4巻:軽んじられる者、棄てられる者の話
キリスト教的なものと異なる(・重なる)新しい教訓・道徳(カルペ・ディエム:心の平静)

2.3. セネカ(哲学、悲劇)
キリスト教的なものと異なる(・重なる)新しい教訓・道徳(カルペ・ディエム:心の平静)
キリスト教道徳に反する陰惨な物語

2.4. ホラティウス(風刺、書簡)
キリスト教的なものとは異なる(・重なる)新しい教訓・道徳(カルペ・ディエム:心の平静)

2.5. ホラティウスの詩論
文学 = 教訓・道徳

3. ロンサールのソネット、オード
キリスト教道徳に対立する新しい恋愛描写(カルペ・ディエム:薔薇 = 女性)

4. イギリス詩確立への意志
各種詩論

5. ロンドンにおける演劇の隆盛
個人的感情の表現の発達

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II. 17世紀

三十年戦争
内乱までの政治的・社会的・宗教的混乱
ピューリタンに対する抵抗
(熱すぎるキリスト教信仰とギリシャ・ローマ的世界観の対立)
印刷・出版の普及
文学 ≒ 政治
社会的安定への志向
都市・宮廷と田舎の対立
- ホラティウス、マルティアリス、セネカから
- 政治的に
名誉革命体制の確立(ここから「長い18世紀」)

1. ペトラルカ風の恋愛表現に対する飽き
模倣から諷刺・嘲笑の対象に

2. ローマ・ギリシャ古典の翻訳・翻案
2.1. オウィディウス(II.2.1の延長)
キリスト教道徳に対立する新しい恋愛描写(カルペ・ディエム:遊ぼうよ?)
『変身』への継続的関心

2.2. カトゥルス
キリスト教道徳に対立する新しい恋愛描写(カルペ・ディエム:日没 ≒ 死)

2.3. マルティアリスのエピグラム、ユウェナリスの諷刺など
キリスト教的なものとは異なる新しい教訓・道徳

2.4. ホラティウスのオード、エポード
キリスト教的なものとは異なる(・重なる)新しい教訓・道徳(カルペ・ディエム:心の平静)
個人的感情の表現(呼びかけ形式)

2.5. アナクレオン風の詩
キリスト教的なものとは異なる(・重なる)新しい教訓・道徳(カルペ・ディエム:酒と女)

2.6. ピンダロス
高ぶる個人的感情の表現(呼びかけ形式)
自由な詩形

3. 演劇の継続的発展
個人的感情の表現のさらなる発達
喜劇の不道徳な主人公(レイク・ヒーロー)

4. 文学観の拡大
ホラティウス(文学 = 楽しみ + 教育)+ロンギノス(文学 = 高ぶる感情)

5. 散文物語の発展
5.1. 騎士ロマンス
5.2. 異国旅行・冒険記
5.3. 手記、日記(ピューリタンの信仰日記、ニューズレターや新聞の記事)、書簡

6. 聖書の翻訳から自作の宗教詩へ

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III. 18世紀

名誉革命以降の社会の安定
産業革命
印刷・出版のさらなる普及・定着
「感受性」の文化
教育の進展・道徳の定着(?)
文学と政治の乖離(職業文人の増加、作品の政治性の希薄化)

1. 教訓・道徳的な古典の定着
キリスト教的なものと重なる教訓・道徳(「長いピューリタン革命」の終焉)

2. オード(ピンダロス風・ホラティウス風)の発展
高ぶる個人的感情の表現(呼びかけ形式)

3. 近代小説の誕生・発展
登場人物の個人的感情の表現 + 17世紀の散文の発展型
e.g.
デフォー、『ロビンソン』= II.5.2 + II.5.3
スウィフト、『ガリヴァー』= II.5.2 + II.5.3
リチャードソン作品 = II.5.1 + II.5.3
(ベーン、『オルノーコー』= II.5.1 + II.5.2 + II.5.3)

4. バラッドに対する関心
「感受性」の文化 =「自然」なものへの関心 --> ワーズワースらへ
都市・宮廷と田舎の対立の延長

5. ソネットの復活

6. イギリス詩の歴史への関心
各種選集、ジョンソンによる伝記

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IV. ロマン派

フランス革命・英仏戦争
産業革命以降の諸変化
文学と政治のさらなる乖離、抵抗的な詩人の出現

1. 詩人の高ぶる個人的感情の表現(羞恥心の希薄化)--III.2-3から
オードの発展(呼びかけ形式)
「悪い」感情表現への関心

2. 16-17世紀イギリス詩・詩人への関心

3. 「歌」の再興
III.4の延長 + 16-17世紀文学への関心 + III.1-2への抵抗
cf. ワーズワース:「ふつうの人の言葉で詩を書こう」

4. ソネットの再興

5. 古典的教訓・道徳(III.1)からの乖離・古典のメロドラマ化

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V. ヴィクトリア朝

産業革命以降の諸変化
社会改革
ダーウィニズム
オックスフォード運動
医療の発達(?)
アヘンの問題の顕在化

1. 歪んだ個人的感情の表現(IV.1の延長 + 劇的独白)

2. 文学観の変化
「芸術のための芸術」= ホラティウス的な詩論の放棄

3. 中世への関心

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VI. モダニズム以降

第一次世界大戦

1. ロマン派・ヴィクトリア朝的なものの継承
感情表現のさらなる拡大(歪んだ感情の方向へ)

2. ロマン派・ヴィクトリア朝的なものに対する抵抗
感情表現の忌避
e.g. イマジズム、ジャポニズム、フランス象徴派(?)、ハードボイルド(?)

3. 新メディア(映画、写真、ラジオ、TV)との競合・共存


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