晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『この道はいつか来た道』

2013-05-19 09:59:15 | Weblog

 『この道はいつか来た道』(別役実作 加藤直樹演出 劇団北芸さようなら公演 2013.5.18 扇谷記念スタジオ・シアターZOO)                                 

 演出と役者を兼ねる、また私的にもお世話になった加藤さんからご案内をいただき観劇。私の故郷釧路で53年間続いていた劇団の最後の公演を観ることができた。

 登場人物が2人、セットは木製電柱とポリのゴミ箱1個、公演時間1時間というシンプルな舞台なのだが、スルメのように噛めば噛むほど味わいが湧いてくる。最後となる公演で人の最期のありようをちょっとユーモラスに、少し悲しく、誰しもの身に迫るように、でもこんな感じの最期もいいなあと思わせる。

 思えば、私たちの日常も朝起きてから、身近な人と出会い、職場の人や友人と会話をしながら毎日が進んでいるように思えるが、この芝居での2人の会話のように、僅かずつズレが生じながら、そういえばそうだったかな、でもそうじゃ無かったよななどと、瞬間、瞬間での思いを超えながら、少しずつお互いが納得をしていく、あらためてそんな関係のような気がした。

 劇中のせりふで「日々新たに出会い、日々新たに愛し合い、日々新たに結婚する」と女が発した。少し認知症気味なのかな、でも忘れがちな、大切な気持ち。好きな人のことを、もっともっと知りたいと思う気持ち、生きようとする実感。

 女「私、痛がって死にたい、なくなっていくみたいに死にたくないんです」男「大丈夫、死ぬときはきっと痛いですよ。それこそが死なんですから」人の死の瞬間こそは、その人が生きていることを実感できる最後の瞬間なのだろう。そうあるべきとは思うが、意気地なしの私などはランナーズハイのようにきっと脳内物質が湧き出て楽に死ねるのだろうなあと思っている、否、楽に死にたいと思っていることを正直に言おう。

 この「老いること、生きること」をテーマにした芝居は、加藤直樹氏、森田啓子氏だからこその今の雰囲気を出せたのだと思うが、お二人がもっと年輪を重ねたあとにこの芝居がどうなるのか、再演を期待したい。

 

 

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