『白鳥事件 偽りの冤罪』(渡部冨哉著 同時代社 2013年刊)
4月の終わり頃、各紙で報じていたが、『作家松本清張さんが代表作「日本の黒い霧」で、伊藤律・元共産党幹部を当局のスパイとして描いた記述をめぐり、遺族から抗議を受けた出版元の文芸春秋は27日までに、事実上の修正に当たる注釈文を本の末尾に付けることを決めた。』(2013.4.28京都新聞より引用)
渡部富哉氏は、『偽りの烙印―伊藤律・スパイ説の崩壊』(五月書房 1993年刊)で、伊藤律氏が、戦前の党活動において、当局に旧ソ連スパイ(ゾルゲ)の摘発につながる密告をしたとして、日共が戦後北京に追放、氏が1980年に帰国するまで投獄・監禁されていたが、それは誤った事実をもとに党が伊藤氏へ押した烙印であることを証明した。日共の誤った判断によってひとりの党員の人生が失われたのである。
本書(超推薦図書!)も渡辺氏は、日共が主張してきた白鳥事件冤罪説を徹底的に批判している。この事件に関わった党員たちにも悲劇がつきまとう。事件は、60年前の1952年1月21日に札幌市警白鳥警備課長が日共党員にピストルで射殺されたというものだ。主犯格された佐藤博ら10名は、北京に逃亡、佐藤をはじめ3名は日本に戻ることは無く1988年かの地で客死している。1973年から78年に帰国した7名は、白鳥事件は党が分裂していた時代の誤った一派の指示に基づいたものであり、彼らは「反党盲従分子で党(日共)とは無関係」と切り捨てられた。
国内で逮捕された者たちは、裁判における証言から「党を裏切った」「ユダ」と人格を批判され、苦しい日々を送っていると想像される。党の責任者であり、白鳥殺害を命じた村上国冶日共札幌委員会委員長・軍事委員会委員長も服役後1969年仮釈放、真実を語ることなく酒びたりの日々の中、1994年11月自宅の火災で焼死体となって発見された。
党のために働いた彼らの人生を奪い、切り捨てた側にいるのが、野坂参三(100歳を超えた晩年にスパイとして除名)、宮本顕治、不破哲三ら現在の日共の路線を築いた者たちである。
日本共産党よ、死者の数を数えろ!