晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『最後の吉本隆明』

2011-04-21 21:43:12 | Weblog

 『最後の吉本隆明』(勢古浩爾著 筑摩選書 2011年刊)

 

 本書は、吉本の思想を論じていない。読みやすいが、思想上の問題など読後何も残らない。正直な著者である。『言語にとって美とは何か』『心的現象論』「共同幻想論」は、読んだが理解できなかったと言う。しかし、本書は、350ページ余りあるが一気に読ませるものがある。

 

 読み手には様々なタイプ、興味の持ち方があるが、本書は吉本の生き様に焦点を当てている。不屈に考え続けた辛酸の20代、三角関係、論争のスタイル、庶民としての原点を失わない姿勢、そして最後の吉本に。スキャンダリズムというより、人間吉本が良く描けていると感じた。

 

 楽しく読み終わって、唯一の収穫。長年の疑問が解けたような気がする。それは、「なぜ、吉本ほどの思想家(思想界の巨人とまで言われている。)が、あの岩波書店から本を出さないのだろうか」というものである。

 

 それは、出版社が吉本を拒否しているのではなく、吉本が岩波から出版することを良しとしないからなのではないか。岩波といえば、東大アカデミズムの権化、戦後民主主義の旗手である。吉本の拠って立つ所とは、真っ向対立するものであるからではないか。吉本の方から断っているのではないか。

コメント (5)
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