馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

黒毛和種子牛3ヶ月齢の橈骨遠位骨幹骨折のdouble DCP抜去

2016-10-06 | 牛、ウシ、丑

8月末に橈骨骨折を2枚のDCPで内固定した黒毛和種子牛

頭側と内側にプレートを入れた。

成長板をまたぐ内固定をしたので、肢軸が曲がってくるのには注意しなければならないと思っていた。

しかし、4週間を過ぎても肢軸に異常はない。曲がるとしたら、内反するはずだ。

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1枚プレートを抜くのと、もう1枚のプレートスクリューの骨端に入っているスクリューは抜こうと思っていた。

それで、長くプレートを入れておいても骨端板の成長を抑制する作用はなくなるはず。

内側のDCPを抜いて、頭側のDCPの一番遠位のスクリューを抜いて、

X線撮影したら、骨癒合は充分なようだ。

それで、2枚とも抜くことにした。

とても良い状態だ。

この内固定手術はminimally invasive (大きく皮膚切開せず、プレートを骨の上に滑り込ませ、スクリューは穿刺切開で入れる)でやったことも骨癒合が速かった要因だろう。

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こういうプレートを抜く手術は、家畜共済の診療点数上、最初の骨折整復手術に含まれている、ということになっている。

馬鹿な話だ。

プレートを抜かざるを得ない症例と、そうでない症例とで最初の手術の点数は変わらない。

プレートが入った牛が他所の地区へ行ってプレートを抜かなければならなくなったらどうするのだろう。最初の手術をした診療所へ請求するのか?

骨折整復手術に、後日プレートを抜く経費まで含まれているというならその算出根拠を示してもらいたい。そんなものはないはずだ。

「含まれている」では、良い診療をすればするほどその診療所の持ち出しが増えてしまう。

それでは一生懸命治療しようということにつながらない。

技術が向上しない。

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ゆうべは、もう寝ていた時間に起こされた。

4歳休養馬のひどい疝痛。

腹囲膨満がひどく、疝痛もひどく、診察もよくできなかった、とのこと。

開けてみると、小腸全域の捻転だった。

ほどいてガス抜きするが、閉腹のときもまだ腹圧が高かった。

胃拡張はひどいままだった。

きのう4頭目の吸入麻酔をかける手術が終わったのは、日付が変わってから。

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  壁へもぐりこもうとしているアオダイショウを引張ったことがある。

ものすごい力で壁へ入っていって、引き戻せるものでなかった。

いや、プレートをminimally invasiveで引っこ抜くのとは何の関係もない話。            

 



8 コメント

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Unknown (piebald)
2016-10-06 22:30:11
ヘビさんと同居中ですか。骨折したら、治してあげますか?
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点数… (anko)
2016-10-06 23:34:54
抜くときは同様にスクリューだけ部分切開で抜き、端からプレートを抜くという感じでしょうか?

骨折もですが、関節洗浄やリムパーフュージョンなどやればやるほど赤字だなーと感じています。適合する種別があるのでしょうか?
消耗品もですが時間や手間を考えると全く合わないです。
共済獣医だから自分の懐は痛みませんが、獣医としては虚しい限りです。組合も評価するのは稼ぐ診療所です。
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>piebaldさん (hig)
2016-10-07 05:02:31
このあたりはヘビもいます。鼠を食べてくれているのだと思います。
ヘビはきっと骨折しないでしょうね。するとしたら、車に踏み潰されるくらいで・・・
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>ankoさん (hig)
2016-10-07 05:08:27
そうです。けっこうな数穿刺切開するので、切らないで治す、という感じではありませんが、長く切開するよりは縫うのも楽だし、患畜の負担も少ないでしょう。

新しい技術や新しい器材が使えるようになっているのに、点数表がそれに追いついていませんよね。効きもしない薬を投与したり、治療にもならない処置を続けていた時代にできた点数表です。価値がある治療を高く評価するようシフトが必要だと思います。
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Unknown (はとぽっけ)
2016-10-07 07:31:47
 経過もよく、2枚をminimally invasiveで抜く。これがスタンダードになったら、ある意味、点数に合う処置ともいえるかもしれない?と思ってみました。
 治してもらって、子牛ちゃん、よかったですね、もうかなり大きい!
 最近、同じ蛇穴にアオダイショウ→シマヘビ→ヤマカガシと住蛇が変わってくる現象。まだこの先があるのか?うげげー。
 絡まってしまうと強力。それは共通では?アオダイショウを除けてるとき、夫婦と思しきもう1匹のアオダイショウがそこに現れて寄り添ったんですよ。かなりびっくり。助けるつもり?説得?って訊いてみたかった。
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>はとぽっけさん (hig)
2016-10-07 17:04:14
minimally invasiveは通常の手術よりさらに難しいです。それをできるようになるには相当な努力が必要で、点数はそれを評価していません。難易度が高い処置は、やっている時間がもし短かったとしても準備や修練に時間と費用を要しますから、費用として評価すべきだと思います。それを毎日続けて行うこともできないでしょうし。

順調に増体してました。痛みもすぐなくなったそうです。

動物好きでもヘビだけは苦手という人が多いようです。やっぱりあの外貌ですかね。
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点数… (anko)
2016-10-08 11:57:40
ほんとにです。
難産なんかは難易度ではなく時間がかかれば点数が上がります。一般診療でも治せずダラダラと、やればやるほど請求金額は上がります。コンサルティングや繁殖管理主体だと状況は違うでしょうが、なんでも一発で治すと収入が減るという不思議な状況です。
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>ankoさん (hig)
2016-10-08 17:08:26
へたな手術をして、術後治療がこじれ、再手術になり、etc.その方が診療所の収入は多くなります。競争原理がはたらく業界ではありませんし。それが牛の個体診療が向上しにくい要因のひとつだと思います。あとは獣医師の使命感、責任感に期待するしか・・・・
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