馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

腕節の血腫からのガングリオン

2015-08-06 | その他外科

この時期、1歳馬はセリや、あるいは庭先取引される。

すでに売れている馬も引渡しの日が近づいている。

それでこの季節に怪我をしてしまったりすると困ったことになる。

腕節を打撲したらしく腫れてしまった1歳。

徐々に腫れてきたとのこと。

で、1ヶ月経っても治らない。

                     -

超音波画像検査すると、皮下に袋状の組織ができて漿液?血液?が溜まって、その中にフィブリン塊があるのがわかった。

関節や腱鞘とはつながってなさそうだ。

しかし、皮膚がまだ硬いのでもっと放置しておいて、炎症が治まり、肉芽組織が線維化し、治癒機転が終わってから袋状組織の摘出をしたい。

しなければ治らない。

しかし、のんびりしていられない。

                     -

それで、手術台に乗せて腕節の皮膚を切開した。

袋状組織は硬く、皮膚と癒合しているので、先に袋状組織を切開してしまう。

皮膚との間を切開していき、割れた袋の状態で取り出した。

あとは、死腔をのこさないように皮膚を腕節に縫い付ける。

そして、圧迫包帯をしっかり巻く。

あとは安静にして袋がなくなり、炎症が治まるのを待つ。

                   /////////

暑かったので、夕方、川へ夕涼み。

 

 


8 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2015-08-06 21:19:41
 はとぽっけの好物の脊索動物門 尾索動物亜門 ホヤ綱 のホヤみたいですね。
 川の水、すごく少ないですね、オラ君。
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>はとぽっけさん (hig)
2015-08-07 06:04:35
私もホヤ好きです;笑。まるごとさばくことはありませんけど。

足をつかないで泳げるところもあるんですけど、自分からは泳ぎませんでした。PFD着けてなかったから?エライエライ。
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Unknown (piebald)
2015-08-07 09:40:04
生産者さんにとって、最後の緊張時期なんですね。
「安静」ですね。オラ君みたいに、川に浸しておきたいところでしょうか?

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Unknown (pechan)
2015-08-07 17:28:13
いつもこのブログを見て勉強させていただいています。
一つ質問させてください。
Manual of Equine Practice(2版)を見ると、先生のおっしゃる「ガングリオン」と同じと思われる疾患がHygroma(腕節の滑液嚢水腫)と表記されており、「腕節の背側皮下における大きな液体貯留性の腫脹」となっています。これは言い方が違う(変わった?)だけで同じ疾患と考えてもよいのでしょうか?
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>piebaldさん (hig)
2015-08-07 20:38:05
出荷時期ですからね。今、事故があると回復期間がとれません。生き物ですからね、いろいろあるんですけど。
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>pechanさん (hig)
2015-08-07 20:42:08
同じものだと思います。滑液嚢が腫大、肥厚、変性したものなのかもしれませんが、腱鞘とつながっていたり、もとは広範な血腫だったり、明らかに外傷性だったりします。
人のガングリオンの派生も厳密には把握されていないようですが、同じものだと思うのですよね。
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Unknown (pechan)
2015-08-08 13:13:26
ご返答ありがとうございます!
私も実際に見たり聞いたりしたことがあります。
放っておいてしばらくすると腫れが硬く小さくなったもの(残りはしましたが)や、切開や穿刺しても結局元に戻ってしまったものなどです。
今回外科的に摘出することができると知り大変勉強になりました!
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>pechanさん (hig)
2015-08-09 05:23:23
そうなんです。針を刺して液を抜くか、切開して中を搔爬して圧迫包帯するか、でもこんな袋状組織ができていたらすっきりは治りませんよね。そして、摘出という方法もあると知っていただきたくて症例の紹介をしました。
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