馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

激しい1日

2018-04-25 | 急性腹症

朝5時前、疝痛の開腹手術で呼び出される。

行ってみると山のようなおなか。

「急がないと窒息死するぞ」

急いで開腹し、腸管のガスを抜いたら、腹の高さが30cmほど低くなった。

PCVも60%を超えていたそうだが、結腸の色調は回復した。

               -

終わった頃、難産の依頼。

昨夜から産気づいていたが生まれず、今朝は肢は出てきているが生まれそうになく、子馬はもう死んでいる、との連絡。

来院して、ちゃんと前肢から来てるじゃない・・・・と肢に産科チェーンをかけて・・・・と?

これ肛門から肢が出てる!

膣から手を入れても膣には孔は開いていない。

子宮穿孔し、腹腔内へ出た子馬の前肢が、直腸を突き破って肛門から出てきているらしい。

初産ではない。

帝王切開して子馬を取り出して、子宮損傷と直腸穿孔を縫えるかどうかやってみるしかない、が予後は厳しいだろう。

あきらめることにした。

剖検では、子宮は背中側で大きく裂け、直腸も大きく裂けているのが確認された。

               -

午前中は予定の子宮頚管裂の修復手術。

それと併行して、子宮穿孔を疑う繁殖雌馬の来院。

腹水は好中球だらけだが、羊水も大量に入り込んだようだし、細菌もフリーのも、貪食されているのも見える。

途中で馬が立っていられなくなり、全身麻酔して精査することにした。

しかし、子宮の背側が子宮頚管を含めて大きく裂け、とても縫えそうにない。

あきらめるしかなかった。

                -

昼、朝から疝痛を起こしている繁殖雌馬の来院。

超音波で肥厚した結腸壁を確認した。

血液検査でもPCV47%と脱水がある。

結腸捻転だろう。

開腹して、やはり結腸捻転だった。

                -

その前に1歳馬の前腕部の外傷の依頼が来ていた。

立位で縫合した。

                -

その前に、現役競走馬の中手骨外顆の縦骨折の依頼が来ていた。

午後4時から骨折内固定の手術。

スクリュー2本で固定した。

                -

その前に、子馬の大腿骨外顆の骨折の相談をされた。

連れて来てX線を撮りなおし、手術もやってみるしかないが、予後は難しい可能性大。

あきらめることになった。

                ---

結腸捻転2頭に、子宮穿孔2頭に、骨折馬2頭に、外傷馬に、え~っとそれから・・・・・

昨夜から入院していた腸管欠損を疑う新生子馬に・・・・

きのう開腹手術した子宮穿孔馬もドレインを開放したり、腹腔洗浄したり・・・・・

激しい1日だった。

 



6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (piebald)
2018-04-25 21:41:41
激しく、激しくお疲れさまでした。というコメントしか思い浮かびません。
返信する
>piebaldさん (hig)
2018-04-26 03:10:16
密度の濃い1日でした;笑
獣医師5人で手分けして、実習生もひとりいて、入院馬の飼い主さんたちがよその馬の診療も手伝ってくれました。見るに見かねて、だったかも;笑
返信する
Unknown (はとぽっけ)
2018-04-26 07:02:30
 現役競走馬の骨折なんか、もう「スクリュー2本で固定した。」1行だ。
 たくさんのおんまさんのなかで具合悪いおんまさんが凝集される場所って感じ。
 蹄餅の検索結果、画像は以前は2~3不鮮明なのだけだったけど、これは。しかしとても残念なお産になりましたね。
 一段落したら、いつか今年のこの状況、なんらかの形にまとめて今後に活かせないものでしょか。「妊娠中の運動不足はイケナイ」一行のことかもしれませんが。
 BBCではキャサリン妃と映画の試合後のロッキーの画像を並べて、母子とも無事な出産を祝福していました。
 ご自身のメンテナンスも怠らず、今日も元気に!
返信する
フレグモーネからの… (ゆう)
2018-04-26 14:05:46
こんにちは
はじめまして

ゆう といいます
突然なのですが、私は大学の馬術部に所属しております
そこでずっとかわいがってきた馬が 半年前くらいに疝痛とフレグモーネを同時に発症してしまい、未だに足の腫れが治りません
いろいろ試してみて どうやったら足の腫れが少しでも引くのか考えたのですが、全然わかりません
今は肉腫の状態が続いています
治る方法をご存知ではありませんか

かかりつけの獣医さんには見たことないと言われました…
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2018-04-26 20:33:52
牧場もわかっていて、ウォーキングマシーンで運動させたりしていたようですが、天候には勝てません。サラブレッド生産もまた天候に泣かされる農業だということでしょう。牧場は広いようでも、「もう雪を積んでおく場所がない」という話もあちこちで聞きましたから。
返信する
>ゆうさん (hig)
2018-04-26 20:35:59
馬の詳しい状況も病状もわかりませんが、フレグモーネが慢性化すると治りません。感染性肉芽、あるいはSarcoid化した肉芽が皮下にひろがると完治は困難です。
さて・・・
返信する

コメントを投稿