馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

腸間膜根部動脈血栓による腸管壊死

2016-10-05 | 急性腹症

前日の夕方から疝痛を示した当歳馬。

翌朝も疝痛が続いていて、脱肛した、という電話で早朝起こされた。

来院したらPCVは38%、乳酸値は高い。

超音波では小腸が膨満しているが、それより壁の肥厚が目立つ。

そして、大腸壁もひどく肥厚している。

開腹手術したら・・・・

小腸は水腫性に肥厚していて、少なくとも2箇所は紫に変色している。

結腸骨盤曲付近から緑灰色に変色している。もう壊死しているのだ。

盲腸も肥厚している。

腹腔内に手を入れて腸間膜根部を触るが、リンパ節が腫れているせいもあり、根部動脈が瘤状になっているかどうかはわからない。

複数個所の腸管壊死ではどうしようもない。あきらめることにした。

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剖検では、

前腸間膜根部動脈の枝に血栓が見つかった。

血栓で完全に閉塞している。

この動脈の枝も閉塞している。

こちらの血管は血栓で塞がっているのが血管の外から目視できる。

大結腸の内腔側。

結腸動脈の中も数珠状の血栓が閉塞させている。

盲腸も盲腸尖側の壊死がひどい。しかし、盲腸底側も水腫性に肥厚している。

これらの血栓の中には円虫の仔虫は見つけられなかったが、腹大動脈の内膜には円虫仔虫の匍匐の痕と思われる糸状隆起線が多数あった。

どういう機序で血栓ができたか断定はできないが、普通円虫の仔虫が腸間膜根部動脈の内膜を傷つけたことが一つの引き金になったことは間違いないだろう。

この仔馬、「イベルメクチンで2ヶ月前に駆虫した」とのこと。

その前にも「イベルメクチンで駆虫している」とのこと。

今日の糞便で線虫卵が500EPG以上だった・・・・

葉状条虫が少なくとも1匹見つかった。

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午前中、Tieback手術の準備が終わったところへ、調教訓練用乗馬の疝痛の依頼。

後回しにして、Tiebackをやってしまうことにする。

喉頭片麻痺もあり、DDSPも起こす競走馬。症状もヒューヒューもあり、ゼエーゼエーもあるとのこと。

軟口蓋をLaserで焼灼して、Tiebackして、胸骨甲状筋を切断して、Cordectomyした。

疝痛馬はやはりかなり痛い。

超音波で小腸の閉塞を確認。

開腹したら、空腸末端が絞扼されていた。

回腸に健常部が残っていたので、壊死した空腸を切除し、健常部を回腸へ端々吻合する。

・汚さない

・狭窄させない

・血行を確保する

・漏れない

が大切と講釈垂れてきたのだ。

・回腸を吻合に使っていい。

と実習で説明してきたのだ。

治す!

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でも午前中だけで吸入麻酔をかける手術を3頭だ。ツカレルヨ

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収穫の秋。

けっこう甘みがあって相棒は催促して食べる