馬では「整形外科」はしっかり確立されている。
世界には馬の整形外科を専門にして研究、教育、普及に活動している権威者、教授、馬外科医もいる。
牛ではそこまでニーズがないとか、進歩してないとか、情報がないとか思われがちだ。
私もそうだった。
しかし・・・
Bovine Orthopedics, An Issue of Veterinary Clinics of North America: Food Animal Practice, 1e (The Clinics: Veterinary Medicine) | |
David E. Anderson DVM MS DACVS | |
Elsevier |
北米の大学では馬外科のチームが牛の内固定手術をやることが多いのではないだろうかと想像していたのだが、どうやらちがうようだ。
書いているのは馬医者には見慣れないFood animalの専門家たちが多い。
私が興味がある内固定の章のいくつかの症例を紹介するなら、
キャスト固定しても騎乗変位しやすい。
それでラグスクリューでとめて、その上をキャスト固定して治療している(中)。
完璧な骨癒合(右)。
馬とちがって牛ではスクリュー固定で治す骨折はほとんどない、と思っていたが、こういうやり方もあるんだな。
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骨幹中位の短斜骨折だ。骨折部には粉砕がある。
成長板のようすと、プレートの長さとの比較から早い月齢の子牛であることがわかる。
LCPで内固定している。
もう1穴長いLCPを使えた、とか、
近位から3番目の皮質骨スクリューは、もっと遠位へ向けてlag screwとして効くようにいれたい、とか、
インネンをつけたくなるが(笑)、ほぼ完璧。
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橈骨骨幹中位の長斜骨折。
ブロードLCP2枚で内固定している。
橈側手根伸筋と総指伸筋の間に1枚目のLCPを入れて、2枚目は外側へ入れたんだな。
1枚目(頭側の)LCPが骨の軸とずれている。
2枚のLCPが垂直になっていない。と、インネンをつけたくなるが(笑)、完璧に整復・固定されている。
使用されているインプラント(プレートとスクリュー)だけで、日本で買うと20万以上かかる。
何kgの牛だったかわからないが、成長板が見えているので若牛だ。
長斜骨折なので、ラグスクリュー3本でしっかりとめて、橈骨頭側にブロードLCP1枚を入れる内固定で治せないか、などと考えるが、大人しい牛とは言え崩壊のリスクがあるかもしれない。
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北米で牛の内固定手術がどれくらい行われているかはわからない。
しかし、正確に確実に治すための内固定技術をお持ちの牛外科医がいることは間違いなさそうだ。
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さて、今日から「牛の内固定」の講義と実習に行って来る。
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牛は好物だから
かたづけはオラにまかせろ