当歳馬が3週間前から跛行し、良くならず、撮りなおしたX線画像で尺骨骨折が確認された、とのこと。
尺骨の骨折線は1cm位上開いている。
来院してもほとんど3肢歩様。
3週間経っているので、骨増勢もしているし、結合織で固まりつつあるのだろうが、骨癒合するには骨折部が開きすぎているので、
体重を支えるために上腕三頭筋が収縮すると、骨折部が開くので痛いのだろう。
このままでは対側肢が曲がってくるかもしれない。
対側肢を体の真下において、その肢だけで体重を支えるので内反してきかねない。
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尺骨骨折の内固定を仰臥位でやるのは少数派だ。
しかし、透視装置を使いやすく、術中x線撮影し易く、プレートを落とす可能性が少なく、スクリューを正しく尾→頭方向へ入れ易く、術後は患肢を上にして麻酔覚醒させ易い。
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骨折部を引き寄せようとするとかえって食い違って行ったりすることがある。
しかし、今日の症例は結合織で埋まりかけていて、骨折部を完全には目視できなかった。
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2-3ヶ月齢の子馬の尺骨骨折は7穴のDCPで手術することが多いのだが、
今日の子馬は7ヶ月齢ですでに体重280kgほどある。
それに、骨折線が複雑で、骨折部にスクリューが2本ほどかかってしまうので、7本のスクリューの両端2本と3本で固定するのでは心配だ。
それで、9穴ナローDCPを使って内固定した。
遠位に捨てネジをうって、テンションデヴァイスを使って牽引して骨折線を寄せた。
まだ開いているけど、かなり寄ったはず。
かなり結合織で埋まっているので、これ以上は牽引できない。
尺骨頭側のスクリューは牽引によりプレートに垂直ではなくなっている。
これがLCPと異なるDCPの弱点だ。
しかし、LCPにLHSを入れるのと違って角度に自由が利く。
それが、薄い尺骨の内固定にDCPを使う理由だ。
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ウペペサンケ山、稜線から標高400m降りた場所にあるケルン。
雪崩に削られず、よく50年以上もったものだ。