goo blog サービス終了のお知らせ 
真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「喪服未亡人 いやらしいわき毛」(1999/制作:ワイ・ワン企画/提供:Xces Film/脚本・監督:木村純/企画:稲山悌二/プロデューサー:戸川八郎/撮影:鷹野聖一郎/照明:保坂芳美/音楽:中村半次郎/メイク:田代友美/助監督:関良平/撮影助手:町田慎一/照明助手:林方谷/製作:渡部健/ネガ編集:フィルム・クラフト/録音:シネ・キャビン/スチール:菊田康/スタジオ:カトレヤ/出演:広瀬和菜・瀬戸恵子・青山縁《ゆかり》・からみ一平・千葉誠樹)。青山縁に送り仮名がつくのは、本篇クレジットママ。
 電話の着信音開巻、鏡台、干された女物の下着、軽く微笑んだ男のスナップ写真、斜めに切り取つた階段、階段を裏からと電話機。カットを小刻みに繋いだ上で、往来を歩く喪服未亡人の後ろ姿にクレジット起動、絡みも軽く挿み俳優部だけ片付けて―その分エンドロールではオミット―タイトル・イン。一周忌を終へた亡夫・真一(スナップの主/からみ一平)を墓参する滝川亜矢子(広瀬)と、公衆電話で出ない相手に背中で焦れる千葉誠樹。少し話を戻すと千葉誠樹はただ一人、当人をズバッと抜いたショットにクレジットを打たれる。帰宅した亜矢子は、シャワーを浴びながら自慰。風呂上りにワインを飲んでゐると、どうやら家内も盗聴してゐるらしきエロ電話がかゝつて来る。エロ電話が着弾したところで、唐突に真一生前の親友・松木和夫(千葉)と、新愛人・美佳(青山)の情事。事後、気晴らしに―しかもわざわざ喪装で―真一の墓を参つた帰りの亜矢子と、重病の女房(一切登場せず)の転院で当地に越して来てゐた松木が遭遇。公園での缶ジュース飲み話がてら、不自然なり非常識スレスレの気軽さで亜矢子は松木を自宅に招く。その時は妄想止まりの何だかんだの別れ際、松木の何があるのか知らんが「何かあつたら必ず電話下さいね」といふ一言まで来て、何とワインを手に盗聴エロ電話に慄く亜矢子に戻る。えええええ!確かに盗聴込みのエロ電話は何かあつたらの十分“何か”たり得るにせよ、見返してみると一応暗転を挿んでゐるとはいへ関根和美ばりのノー・モーション、加へて千葉誠樹が対青山縁と対広瀬和菜二戦を連戦する―後者はキッチンの亜矢子を手籠めにする松木の赤いイマジン―のもあり、十五分の長尺を費やす怒涛の大回想には素面で驚いた。
 配役残り瀬戸恵子は、何故亜矢子がタメ口で接するのか間柄が映画を見てゐるだけでは全く判らない玲子、松木の元愛人でもある。もしかすると、亜矢子の劇中設定年齢が、演者の実年齢なり見た目より随分と上なのかな。2005年新版の改題も、「三十路喪服妻 わき毛の匂ひ」となつてゐる。
 二年後に第二作「三十路女の濡れ床屋」(主演:黒沢良美/橘瑠璃のデビュー作)を撮つた後、それきり名前を聞かない木村純のデビュー作。因みに、今作の前にも名前を聞かない、とかく雲を掴むやうな御仁ではある。それは兎も角、木村純と同時に、広瀬和菜名義での若林美保デビュー作でもある点は、当時よりも現在の方がなほ重きを増すトピック。いい機会と最終的に整理すると、二年後今度は小室優奈名義で「淫乱女房 下半身の甘い香り」(2001/監督・脚本:小林悟/主演:藤崎玲央奈)と「性犯罪ファイル 闇で泣く女たち」(2001/監督・脚本:小林悟/主演)、大御大作二本が二度目のデビュー。少し間を空けてMIHO名義の「人妻アナ露出 秘められた欲求」(2006/監督:荒木太郎/脚本:三上紗恵子/主演)を経て、翌年の「変態の恋・蝶 -整形美容師-」(2007/監督:松岡邦彦/脚本:今西守/主演)に於いて3.5度目にして漸く若林美保としてのデビューを果たす。といふのが、改めて纏めてみると思ひのほかやゝこしい沿革。エクセスが完全に忘れてゐたのか、主演はエクセス初出演の女優に限る、いはゆるエクセス・ルールを何気に掻い潜つてゐるのが一興である。ついでといつては何だがエクセス・大蔵と来て残る新東宝初参戦は、友松直之の「尼寺 姦淫姉妹」(2013/百地優子・友松直之/主演:緒川凛)。
 といふ次第で、広瀬和菜こと若き若林美保の直截な印象は、喪服に合はせて下手にアップにした髪型に足を引かれた側面も否めないにしても、二十代の林由美香に劣るとも勝らないベータ版、あちこち端的に出来上がつてゐない。何なら小室優奈がベータ版で、アルファ版かも。二十近く若い筈なのに、不思議なほど有り難くない。寧ろ濡れ床屋同様、二作続けてエクセスライクのババを引いた木村純のバッドラックの方が際立つ。といつて、木村純も木村純で、不運なばかりで無罪といふ訳でもない。繋ぎのカットを細かく連ねてみせるのは、それだけで一見映画的に見えなくもないともいへ、濡れ場に際して別の意味で淫らにカット数を稼ぐのは考へもの。ブッツブツ、あるいはズッタズッタ音が聞こえて来さうな、まるで古の洋ピンのやうな有様で、時折体位にすら混乱を来しかねない惨状は明らかに悪手ではなからうか。全般的な尺の配分も、亜矢子と松木が何時の間にか何が何だか結ばれる締めの濡れ場も締めの濡れ場で、改めて驚くなかれ四十五分前から堂々と十五分を遂に撃ち抜く。となると、先に触れた序盤の超回想と、終盤の大(おほ)濡れ場。それだけで尺の半分がいはば潰れてしまふことのみならず、当然残り半分も、二番手・三番手の裸に削られるのはプログラム・ピクチャーの如何なる無理も通さぬ道理。となると元々好色で亜矢子をロック・オンしてゐた松木はさて措いたとて、亜矢子が松木との距離をゼロにまで縮める過程が、全く以て判然としない。少なくともPCの液晶画面で見る分には如何せん画が遠過ぎやしまいかと思へる、亜矢子が松木と何処かへ旅立つと思しきラスト・ショットに、狐に抓まれるほかない始末。無駄な手数と豪快な構成に、サッパリ埋まらない行間。気負つた風情も垣間見えなくはないものの、仕出かした系とでもしかいひやうのない初陣である。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 妹の匂ひ よ... ヴァージン日... »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。