真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態露出狂妻 肉欲さらし」(2006『人妻アナ露出 秘められた欲求』の2009年旧作改題版/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:三上紗恵子/撮影照明:飯岡聖英/編集:鵜飼邦彦/演出助手:金沢勇大・三上紗恵子・江尻大・内山太郎/撮影・照明助手:松澤直徹・成田源/ポスター:本田あきら/車両:小林徹哉/応援:鈴木康夫/セット協力:縄文人/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/タイミング:安斎公一/出演:MIHO・淡島小鞠・華沢レモン・三浦英明・縄文人・竹本泰志/特別出演:西藤尚・内山太郎)。出演者中、主演のMIHOがポスターには若林美保、但し旧版ポスターに於いてはMIHOのまゝ。要は今回新版に際し、若林美保の名前を前面にフィーチャーした格好となる。正確なビリングは、三浦英明と縄文人の間にカメオ部を挿む。
 夫・由明(竹本)と夫婦で営むレストラン「ペジテ」のチラシ撒きに歩く夏江(MIHO)は、突き当たりの林道で奇矯な衣装の不思議少女(淡島)と出会ふ。金髪ウィッグに白塗りした上での着物姿で登場といふか出現するや、生足を露に乳も放り出し踊り狂ふ淡島小鞠ファースト・ショットのやんごとないメソッドの古さには、荒木太郎が大敬愛する渡辺護への、強い憧憬に似た影響が看て取れもするのか。矢張り、煮ようが焼かうが喰へないけれど。風に舞ふチラシに誘はれるかのやうに夏江は、四周どころか直方体の床以外五周がガラス張りといふ風変りな建物に忍び込む。そこで自慰に耽り始める夏江の艶姿を、何時の間にか現れた粗野な正体不明の男(縄文人)が注視する。ディテールは今一つ見えないが、由明が講師的に出入りする平成大学―1994年に設置された福山平成大学とはウルトラ別物―の学生アルバイト・一場(三浦)の自身に向ける只ならぬ視線を意識しつつ、ペジテ定休日の毎木曜ともなると夏江は謎の建物に出向き、そこで縄文人に犯される幻想的な日々を送る。特別出演の西藤尚と内山太郎は、見切れるペジテの客。
 簡単に掻い摘むと、一見何不自由なく幸福に見える人妻が、人智を超えたコンタクトを機に性の迷宮へと囚はれて行く、とでもいつた寸法の物語である。お芝居あるいは表情は少々硬いが、本職はストリッパーだけあり若林美保の舞踏には、どれだけ取つてつけられたものであれ、流石に局面局面を支配し得る決定力が漲る。とはいへ、地の日常の描き込みが非感動的に薄いことと、さうなるととかく地に足の着かない始終だけに、縄文人の何処まで行つても所詮は素人芝居が最終的には大きく響く。いふならば若き間男ポジションの一場を演ずる、三浦英明の力ない棒立ちぶりも顕著で、たかだか六十分そこらの映画の割には、メリハリを欠いた夏江のペジテと謎の建物との往き来に、妙な途方のない長さを感じさせられもした一作ではある。それでゐて、終に縄文人がペジテを急襲する件に披露される、女体盛りの妙な完璧さは若林美保のダンスと同様、ちぐはぐで微笑ましい。ひとつ気になるのが最後まで由明と夏江の、いはゆる夫婦生活が描かれはしない点で、彼岸から此岸へとひとまづ帰還を果たした旨も説明するべく、竹本泰志に映画を畳ませてゐたならば、全体的な据わり心地も大きく変つてゐたのではなからうか、とも思へる。

 機能不全のファンタジーも兎も角相変らず根本的に頂けないのが、華沢レモンの裸への辿り着き方。一場はどうやら大学は休学中らしく、同級生にして彼女・ユリ(華沢)が、呼びもしないのに由明は外出中のペジテを訪れる。すると、にも関らず一場は夏江に対して告白し、しかもその現場を目撃したユリは、ショックを受け退場する。既にこの時点でルーズな無造作さに開いた口も塞がらないが、以降夏江がなほも迫る一場を、出し抜けに踊り始めいなす頓珍漢なラブ・アフェアは、無駄遣ひあるいは藪から棒な若林美保のポテンシャルに免じて通り過ぎるとしても。由明が戻つたところで一連を切り上げると、次の場面はユリは陸上部員とのことで、練習中の平成大学グラウンド。グラウンドとはいつたものの実際のロケーションは、一応金網では仕切られた、用途のよく判らない山の中の空き地でしかなかつたりもするのだが。さて措き、とりあへずグラウンドに自ら捨てた女を訪ねた一場は、夏江にフラれたからヨリを戻さうなどと、ユリと舌もといカットの根も乾かぬ内に青姦をキメる・・・・観客を馬鹿にしてゐるのか?何だこの、怠惰極まりないシークエンスは。執心するのは自身が追及する作品世界のみで、カテゴリーあるいは商業上、当然の前提として要請される要件に関しては全くお留守か。それはとんでもなく、不誠実な態度であると断じざるを得ない。今更ながら改めていふが、三上紗恵子はもう少しといふか少しでは足りないが、兎に角三番手濡れ場要員の消化法といふテーマを、もつともつと真面目に追求するべきだ。斯様な木に竹すら接ぎ損なふやうなザマでは、ピンク映画としててんで話にならぬ。


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