真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(2015/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:吉行良介/スチール:小櫃亘弘/編集:有馬潜/録音:シネキャビン/演出助手:植田浩行/撮影助手:大友徳三/照明助手:榎本靖・堀内蔵人/選曲:山田案山子/効果:東京スクリーンサービス/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:きみと歩実・原美織・舞島環・なかみつせいじ・泉正太郎・山本宗介・綾見ひなの・美波あみな・牧村耕次)。
 警視庁開巻、廊下を左に曲がつてきみと歩実(ex.きみの歩美/微妙な改名は事務所移籍の由)がフレーム・インすると、四作連続出演した2012年第二作「若未亡人 うるむ肉壺」(主演:東尾真子)以来久々となる泉正太郎のモノローグ起動。テロ等重大犯罪の捜査のために新設された特務課、話者・前野孝則(泉)の後輩刑事・小嶋彩乃(きみと)の職務は、多忙を極める特務課統括部長・山崎和豊(牧村)のスケジュール管理。・・・・は?何が刑事か、秘書ぢやねえかといふ早速流石のツッコミ処に関しては、後々現に山崎の口から秘書と語られる。ともあれ、周囲には内緒で同棲生活に突入した彩乃と前野の濡れ場初戦。どうにも泉正太郎のメソッドには微妙な仰々しさが鼻につきこそすれ、然様な正しく正真正銘の些末は等閑視の遥か彼方へとさて措き、適度に引き締まつた、きみと歩実のプリップリの肢体が全く以て眼福眼福。十全に完遂した翌日、彩乃と前野が早朝の来訪者に文字通り叩き起こされたかと思ふと、家に来たどころか上がり込んで来たのは通称麻取こと厚生労働省地方厚生局麻薬取締部の捜査官二名(演出部動員か)。わざと不自然なカットで多分吉行良介が彩乃のバッグの中から粉包みを発見、二人ともお縄を頂戴してのタイトル・イン。明けて何処まで足を延ばしたのか、スコーンと山の中、姥見女子刑務所。即日釈放された前野に対し、綾乃は不自然極まりなくも五年の実刑。同房の、オレオレ詐欺の尻尾切り―三度目―で七年喰らつた西山亜実(原)は所長の平田洋介(なかみつ)と関係を持ち、平田が調達した嗜好品その他の劇中用語ママで禁制品を高値で売り捌く、獄中闇市を中締めてゐた。臭い飯を食つた経験がないゆゑよく判らないのだが、菓子一箱に数千円支払ふ、自由になる金を囚人が持てるものなのか?
 配役残りデブギャル―実も蓋もない―の舞島環は、亜実に闇市の実権を奪はれた武藤由紀、この人が仕出かしたのは保険金目当てでの七人毒殺、死刑囚?綾見ひなのと美波あみなはちんたらしたリンチで亜実からシノギを奪ひ返す、由紀の腰巾着・沢田理沙と佐野みゆう。理沙が―あるいは理沙も―太い方でみゆうが長い方に一見見えつつ、恐らく美波あみなは三人以外の人間と並べてみると普通の背丈。特に誰と何する訳でもないものの、二人とも一応脱ぐ有難味は薄い豪華布陣。デウス・エクス・マキナ臭を爆裂させる山本宗介は、結局自力では大したも何も仕事らしい仕事をしちやゐない前野が頼る、学生時代からの付き合ひの特務課ギーク・三橋公平。牧村耕次共々、絡みの恩恵には与れず。
 いきなり藪の中に突入する第一作「性犯罪捜査 暴姦の魔手」(2008)、持ち直した第二作「性犯罪捜査II 淫欲のゑじき」(2009)、改めて爆散する第三作「性犯罪捜査Ⅲ 秘芯を濡らす牙」(2011)からなる「性犯罪捜査」シリーズ(主演は全て倖田李梨)と類似した企画なのかと思ひきや、単なるといふと語弊もあらうが純然たる女囚映画であつた関根和美2015年第四作。公開題に同じ“特務課”を冠するとはいへ、国沢☆実の逆説的にリアルな革命映画「特務課の女豹 からみつく陰謀」(2014/主演:伊藤りな)とも無論掠りもしない。
 お話の中身としては無実の罪でブチ込まれた女刑事が、不屈の闘志で自由と正義を目指す。十分増えた尺を持て余すでなければ、かといつて有効活用するでもなく。とりたてて特筆すべき点も見当たらない展開は、水の如く流れ過ぎて行くに過ぎなくもない。寧ろ、何時か何処かで観たやうな期待は別にしないにせよ観客の予想を一切裏切らぬある意味堅実な類型性を、それはそれとして量産型娯楽映画の然るべき姿とこの際受け止めるべきでさへあるのであらうか。囚人服が揃ひのスエットの上下でしかない安普請に関しては、いつそチャームポイントと微笑ましくスルーする方向で。一方裸映画的には、三番手以降が三人足しても二番手に遠く及ばない藪蛇な頭数ではありながら、逆からいへばきみと歩実と、正調美少女の原美織の2トップの盤石ぶりは一層際立つ。平田に凌辱された彩乃が何だかんだで二連戦を戦ふ、きみと歩実と原美織が咲かせる大輪の百合は今作最大最強の見せ場。ただ娑婆に戻つた彩乃が自宅に帰還したところで尺が満ち、アバンと全く変り映えがしないにしても締めの濡れ場が設けられなかつたのは、七十分も擁しておいて明確なペース配分のミスなのではあるまいかとも思へる。


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