真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「どスケベ坊主の絶倫生活」(2014/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:金沢勇大/編集:有馬潜/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:石井宣之/照明助手:大前明/選曲:山田案山子/効果:東京スクリーンサービス/エンディング曲:『オーライ』歌:ナチョスと石川 作詞・作曲:石川真平/出演:きみの歩美・菅野いちは・山口真里・那波隆史・牧村耕次・なかみつせいじ)。
 タイトル開巻、リストラされて一週間、未だ妻に打ち明けられずにゐる長谷部三郎(なかみつ)が頭を抱へる。ひとまづ妻・京子(山口)との夫婦生活を想起、量産型娯楽映画が確かに量産されてゐた息吹を最後に伝へる、山口真里となかみつせいじ扮する夫婦役のお馴染みぶりが感動的に素晴らしい。思ひ余つて失踪する旨のメールを京子に打ちかけ思ひ留まつた三郎の傍らに、謎の僧侶・焼き肉院珍国斎(牧村)が出現。千里眼とやらで三郎の苦境を見抜いた珍国斎は、三郎を仏門に誘(いざな)ふ適当に煙に巻いた末に笠と風呂敷包みを残し消失する。三郎が包みを解いたところ僧衣一式と、“命名 焼き肉院雲国斎”と記された札が入つてゐた。三郎はとりあへず雲国斎に扮したものの直に改悛、愛妻弁当を食べてゐると思ひ詰めた様子の阿川詩織(菅野)に声をかけられる。夫と同居してゐた妹が悪霊にとり憑かれたといふ詩織は、三郎もとい雲国斎に助けを求める。サクサク阿川家に招かれ、ザクザク据膳を頂戴した雲国斎は、仕方なく一肌脱ぐ羽目に。のつけから破戒かよ、随分と生臭だな。ところが雲国斎が訪ねた詩織の夫・拓也(那波)は、雲国斎が詩織と接触してゐることを知るや気色ばむ。実は悪霊にとり憑かれたのは詩織で、虐待される義妹・加納みゆきを庇ひ拓也は家を出たといふのだ。てな塩梅で今度は二人の仮住まひに転がり込んだ雲国斎は、みゆき(きみの)のキュートな色気に鼻の下を伸ばす。
 その他配役、僧衣を着てみた三郎に、断りもせずにカメラを向けるのは関根組と近しい、「BATTLE BABES HC」主幹のSHIN。外国人観光客でもあるまいし、坊主がそんなに珍しいのか。共にブランコに揺られるみゆき相手の、雲国斎の他愛ない浮遊霊与太の出汁にされるどうしても逆上がりが出来ない巨漢は菊嶌稔章。視線に気付いた菊嶌稔章に、雲国斎がノされるオチかと思つた。
 逆に環俗した際には徒に沈痛であつたなかみつせいじが、一転弾け倒す関根和美2014年第二作。珍国斎の神出鬼没の没の方に、いはゆるノリツッコミに似た要領で三郎ないしは雲国斎が一々度肝を抜かれるネタは、渾身のフルスイングが清々しいなかみつせいじのオーバーアクトが何度繰り返されたとて爆発的に面白い。拓也に下手に姉妹丼を完成させる無頓着は自省し、主演女優の濡れ場らしい濡れ場を全て潔く妄想ないしは夢オチで乗り切つてみせる大技といふか荒業も、敵が関根和美とあつてはある意味通常運行。ピンク映画界の顔面センター・菅野いちはが闇雲な悪霊メイクで大暴れするクライマックスが、効果のかけ過ぎで詩織が何をいつてゐるのか結構判らないのも、御愛嬌の範疇に押し込んでしまへ。尤も、結局何だかんだで悪霊を斥けたのか悪霊にとり憑かれてゐたのは実は三郎なのか、前作に引き続き不用意にゴチャゴチャする一件の畳み処は相変らず考へもの。躓きかけた始終を決定的な安定感で補完する、エンディングに直結する改めての長谷部家夫婦生活を観るにつけ、三番手の働きが何気に一番デカい珍しいといへば珍しい一作。山口真里と残り二人の地力を比較した場合当然の結果であるといふ異論に対しては、無論更に異を唱へるつもりはない。

 ここは護符で一度切つたネタは一同忘れたフリをすることにでもして、次回は尼僧(酒井あずさか佐々木基子か麻由子)を投入、珍×雲×満国斎のジェット・ストリーム・アタックを豪快に展開するシリーズ第二作を極大希望。満国斎の出家設定としては、騙され続けた男運のなさに嫌気が差した泡姫といつた辺りで如何か。御眼とか御芽国斎てのもありだな(*´∀`*)   >底の抜けた丘の上


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