真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「濡れ巨乳なぶり」(1998『悩殺占ひ 巨乳摩擦』の2002年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/原作:睦月影郎《魔女の淫ら占ひ》より/脚本:水谷一二三/撮影:中尾正人/照明:内田清/助監督:永井卓爾/音楽:OK企画/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:田宮健彦/照明助手:秋山輝夫/現像:東映化学/スチール:津田一郎/協力:稗田事務所/出演:風間今日子・秋吉かおり・開田あや・杉本まこと・平川ナオヒ・睦月影郎・唐沢俊一・稗田オンまゆら)。脚本の水谷一二三は、小川欽也の変名。出演者中秋吉かほりでなくかおりが、ポスターには秋吉かほりで本篇クレジットはかおり。本篇クレジットが仕出かしたものと思はれる、実にアバウトな世界ではある。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒OP開巻に従つた。
 これ見よがしにおどろおどろしい占ひ部屋、不景気につき高額納税者が減つた旨のニュース音声と、新聞紙上に発表された長者番付をチェックする手元を抜いてタイトル・イン。一回忌を控へた父親から東西商事を継いだ二代目社長・細川和夫(杉本)と、細川の婚約者で、東西商事大株主の令嬢・ユリコ(秋吉)の婚前交渉。ガツガツ前に出て来るユリコと、親同士が決めた縁談に正直乗り気ではない細川の対照を投げた上で、帰宅した細川は、ドンピシャのタイミングで玄関先に行き倒れた女・野上慶子(風間)を助ける。北海道から友人を頼つて上京したものの、当の友人は転居してしまひ行く当てのない慶子を、細川は一晩居間に泊まらせてあげることに。寝床で週刊ポストを読む細川を、キュイーンといふSEとともに着けてゐたネックレスが光るや起動した慶子がいはゆる逆夜這ひ。陶酔の一夜を経て、細川が目を覚ますと慶子の姿は消えてゐた。その日以来慶子を追ひ求める細川は、川原でポップにオッカない街金(睦月)に詰め寄られる慶子と二度目の再会。一度目は、見かけた慶子を尾けるも占ひ師・由良子(稗田)の事務所の表で見失つてゐた。睦月影郎に金を握らせその場を収めた後日、改めて細川が慶子に交際を申し込んだ脇を通りがかつたメフィストのやうな扮装の霊能者(唐沢)は、慶子によからぬ気配を察知する。
 唐沢俊一に続きザクザク投入される残り配役平川ナオヒは、由良子の占ひで友人が三百万損したと長ドスを抜いて怒鳴り込む湯沸かし器。開田あやは由良子の魔力に身動きを封じられた平川ナオヒを、「摩天楼」にて弄(なぶ)る超絶プロポーションの女王様。無茶をいふやうだが、この人が脱がないのが重ね重ね惜しい。
 多分睦月影郎とは別ルートで、唐沢俊一・稗田オンまゆら・開田あや、この頃と学会人脈と付き合ひのあつた小川欽也1998年第四作。当時既にルーチンの象徴たる御大枠に大御大・小林悟の陰で入つてゐた小川欽也と、同じく当時一応サブカルの旗手。何といふか、末端と先端とが円環を成す地点で出会つた風情が興味深い。それも兎も角、睦月影郎公式サイトに見られる、“異色スタア白熱の大共演!”とと学会勢や睦月影郎を風間今日子や杉本まことよりも推したパブの詳細がよく判らない。目新しい面子が浮きもせず、作品世間に何となく馴染んでみせる辺りには、成程年季が伊達ではない熟練の演出術を看て取ればよいのであらうか。あつてないが如き物語の薄さを風間今日子のオッパイで押し潰す重量級の一作ながら、弩迫力と手慣れた量産性とを両立する風間今日子V.S.杉本まことの締めの濡れ場に、稗田オンまゆらV.S.唐沢俊一の振り切れたスピリチュアル・バトルが挿み込まれるクライマックスは、確かに裸映画の一線を超えた異常な迫力。慶子が身に着けてゐるものを全て外せと唐沢先生に念を押されてゐたにも関らず、結局細川が外す手間を端折つたネックレスが、事後何時の間にか外れてゐたりする腰も砕ける無頓着さは何時ものオガキン仕事ことオガワーク―たつた今思ひついた―ともいへ、無闇に拡げてみせた大風呂敷が、珍しく形になつたスペクタクルを堪能出来る。


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