真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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拷問水責め/DMM戦
浜野佐知(的場ちせ)
/
2015年02月01日
「
折檻水地獄
」(1992『拷問水責め』の2000年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・佐藤義人・植田中/照明:秋山和夫・神妻敏厚/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:森山茂雄/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:木下みちる・春原悠理・早乙女宏美・芹沢里緒・平賀勘一・ジャンク斎藤・杉本まこと)。シンプルな誤字なのか徒な変名なのかはさて措き、照明部セカンドの神妻敏厚とは上妻敏厚のことかと思はれる。
三代続く名家・佐竹家、庭の池と瓶状の鉢に飼はれた小魚を抜いて、三代目の弓矢(杉本)が昼間から風呂に入る。妻・満ちる(木下)を水責めする回想とイメージを重ねてタイトル・イン。弓矢が在宅であるといふのに、佐竹家の顧問弁護士・佐古田(平賀)が満ちるに言ひ寄る、佐古田曰く「大丈夫、弓矢さんの風呂は長い」。ところが大丈夫ではなく、佐古田に抱かれる満ちるの姿を、佐竹は目撃してゐた。佐竹家に遊びに来た弓矢の妹・珊瑚(春原)は妙齢にも関らず兄の入る風呂に入り、異常に距離の近しい兄妹に、満ちるは当然複雑な心境を覚える。他方、こちらもこちらで台所番として佐竹との付き合ひが三代続く佐古田家。世事に関心を持たない弓矢を難じる平勘は婿養子で、妻(芹沢)は弓矢の幼馴染であつた。
配役残り川原の件で適宜見切れるジャンク斎藤は、卒業後は中央アジアを放浪してゐたとの、佐竹大学時代の友人・ヒドラ。一体漢字でどう書かせるつもりなのか、最初に佐竹がその名を叫ぶカットではヒトラに聞こえた。早乙女宏美はヒドラの連れ、二人が持ち歩くウクレレが、予想外に繊細な旋律を聴かせる。妻を寝取られなければ愛情を実感出来ない厄介極まりない佐竹は、俗物の佐古田の代りに家に招いたヒドラに満ちるを抱かせようとする。その際の方便が大事な客の歓待に最も大事なものを差し出す云々といふのは、2009年第一作「
女豹の檻 いけにへ乱交
」(主演:Clare)に先行するモチーフ。時に量産型娯楽映画は、ファッションの流行のスパンで巡る。
DMMピンク映画chの
山邦紀の頁に紛れ込んでゐる
、浜野佐知1992年第五作。因みにこの年の浜野佐知はピンク映画全十一作と、更に薔薇族一本。更に更にそれでも量的キャリア・ハイですらなく、何れにせよ、女性監督年間最多商業映画発表本数で浜野佐知は間違ひなくギネスに載れるのではなからうか。多分桁違ひの、群を抜いたウルトラ大独走となるにさうゐない通算でも勿論、量も質だ。話を映画の中身に戻すと、自身を水と同化する幻想に囚はれなくもない浮世離れした名家三代目を取り巻く、粒の小さな群像劇。男に虐げられる妻、妻を実は男公認で抱く、顧問弁護士家の野心家の婿養子。婿養子の妻は子供の頃から知る男に、よしんば理解はせぬにせよ強い親近の情を示し、男の妹は男と、純粋な名家の血を残さんと出し抜けな大風呂敷を拡げて来る。そして男の旧友は、相変らず何処からか流れて来て、何処(いづこ)へと流れて行く。一見それなりに役者は揃つてゐるやうに見えて、例によつて山邦紀のロマンティックを浜野佐知が等閑視した結果か、本丸たる佐竹の外堀が干上がつてゐるゆゑ、劇映画的にはまるで覚束ない。満ちるが珊瑚を連れ―たのかどうかも厳密には判らない―佐竹邸こと旧旦々舎を後にするのも、定番展開とはいへことそこに至るまでの満ちるの一貫した防戦一方ぷりを見るに、単なるお約束にしか見えない。要は開巻から連なる、全てを失つた佐竹が風呂に浸かるといふか浸(ひた)るラスト。モノローグが「何時から僕はかうしてるんだらう」、「みんな僕が望んだことなのだ」までは兎も角、「何時までかうしてゐるのか僕にも判らない」と来た日には、兎にも角にも佐竹の感情に移入が難い以上、
観客“おれたち”にも判らねえよ!
とツッコまざるを得ない。対して裸映画的には、看板の水責めはホースで水をブッかけたりホースを鞭代りに幾らか打つ程度で、正味な話“拷問”と称するには程遠い他愛ない代物。但し意外にしつかりした口跡に目ならぬ耳を聞開かされる主演女優の木下みちるは、幼げな表情とは不釣合ひに柔らかさうに膨らんだトランジスタ・グラマーが絶妙にいい塩梅、品性下劣な嗜虐心を実にそゝられる。ガラス戸越しの立位後背位、双球が押し潰された必殺ショットは文句なく撃ち抜く一方、ホースで水をブッかけるだけならブッかけるだけで、水圧に歪むオッパイはもう少し執拗に追つて欲しかつた。大雑把な素人考へを吹くと、中途半端に思はせぶらせて機能不全に終る芹沢里緒の不遇も思ふと、早乙女宏美の児戯じみた自縛や木に竹しか接がぬ熱ロウなんぞいつそ要らなかつたのではあるまいか。
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