閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「スプーン王子のぼうけん」

2015-06-20 13:35:22 | お知らせ(新刊)

新刊、幼年童話です。

『スプーン王子のぼうけん』(すずき出版 2015年6月刊)

 むかしむかし、空のほしが、
 いまより ちょっと たくさんあったころのこと。
 あるくにに、ひとりの王子さまがうまれました。

その王子さまが、成長して、竜退治に出かける…という、
昔話かといえば、まあ、そのようでもあり、そのようでもなし。

むかしむかし、四分の一世紀くらい前のことですが、
わが家に赤ん坊が生まれたとき、Mの知り合いの金属工芸家さんから
お手製の銀のスプーンをいただきました。
西洋で「銀のスプーンをくわえて生まれる」といえば、
(銀食器で食事をするような)裕福な家の跡取り、という意味。
それにあやかって、出産祝いに銀のスプーンを贈り、
赤ちゃんの一生の幸せを願う風習があるのだそうです。

おかげで、子どもは順調に育ち、とびきり裕福ではないにしても、
まずまず一人前に働いて食べていける人になりました。

実際に使うことはなく、大切にしまってあったその「銀のスプーン」が、
長い時を経て、おはなしの「たね」になりました。
こういうことは、よくあります。
あんまり長くおくと「付喪神(つくもがみ)」になったりしますから、
25年くらいが、ちょうど程良いところでしょう。 

このおはなしで、わたしがいちばん書きたかったのは
(なんて、こんなところで自分で言うのはフェアではないと思うけど!)
7歳の王子さまがどうやって竜をやっつけたか、ということではなく、
7歳になる「まで」がいかに大切か、ということです。

待ち望まれてこの世に生まれ、親や周囲の人たちに愛され、
大事にされて育ってきた7年間。
その「れきし」があるからこそ、王子さまは、たったひとりで
「ぼうけん」に出かけていくことができるのだし、
自分で考えて、行動して、ちゃんと帰ってくることもできるのです。

世界中に、家庭の数だけ「おしろ」があり、子どもの数だけ
王子さまや王女さまがいて、それぞれに別の物語がある。
このおはなしの王子さまはスプーンをもらったんだけど、
きみは妖精に何をもらったのかな。
うん、ちゃんともらってるんだよ。
気づいてないかもしれないけどね。

絵は、こばようこさん。
『ポロポロゆうびん』(あかね書房 2009年)に続いて2冊目です。
バケツをかぶってレインコートを着た王子さまを
勇ましく可愛らしく描いてくださいました。
優雅にお茶を飲んでいるお妃さまも美人で素敵なので、
ぜひごらんくださいませ。

すずき出版さんは、わたしが初めて「お仕事」をさせていただいたところです。
月刊保育絵本の4月号、13場面の文章を、当時ハタチ前(だったはず!)の
駆け出しの、いや、まだぜんぜん駆け出してもいなかったのに、
よくまあ書かせてくださったと思います。感謝。

 

スプーン王子のぼうけん (おはなしのくに)
竹下文子・作
こばようこ・絵
鈴木出版(2015年6月)

 

 

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